ピッコロ便り

ピッコロシアター、県立ピッコロ劇団、ピッコロ演劇学校・ピッコロ舞台技術学校など、劇場のトピックをご紹介します。

10月のひとこと ピッコロシアター館長より

2014年10月01日 | 館長のひとこと

少しずつ秋めいてきました。いよいよ『かさぶた式部考』の6ステージです。

今年、兵庫県立ピッコロ劇団は創立20周年を迎え、このたび本公演50作目という記念すべき回となりました。

秋元松代氏の『かさぶた式部考』という近代演劇の傑作に、劇団創立時から、いくつかの創作現場を共にし、また常に劇団を見守り支援くださっている藤原新平さん(演出家 文学座)と久々に取り組みます。劇団の今後10年、20年先への新たな礎を築きたいとの想いのもとに劇団員一同臨んでいます。

作者の秋元松代氏は、日本の近代演劇史上、忘れることのできない偉大な劇作家の一人です。

今に至るまで人々の心を打ち続けている秋元作品には、いつの時代にも問題を提起し、その都度、新たな発見をもたらす力があります。それはいつにかわらぬ人間と社会の姿が克明に描かれているからだと思います。

この作品は、炭鉱の問題や魂の救済という社会的、倫理的な題材も扱っていますが、その本質を読み解けば、親子の情、夫婦の情、恋、ねたみ、など誰しもが共感しうる人間の普遍的な問題です。見事な構成力、台詞の力、そこには、不思議で愚かで、美しくて醜い人間の姿が容赦なく描かれています。一人ひとりの登場人物が、ドラマを持ち、関わり合い、世界観を創っていく……演劇の魅力に溢れたこの作品を、観客の皆様と分かち合うことができれば、劇団員一同、心より嬉しく思います。

多くの皆様方のご来場をお待ちしています。