ピッコロ便り

ピッコロシアター、県立ピッコロ劇団、ピッコロ演劇学校・ピッコロ舞台技術学校など、劇場のトピックをご紹介します。

高校教師佐藤です。 卒業公演を終えて・・・

2009年03月19日 | 演劇学校・舞台技術学校

ピッコロシアターで1年間の長期社会体験研修中の高校教諭佐藤です。
劇場事務所での研修の傍ら、ピッコロ演劇学校〈本科〉26期生として学んでまいりましたが、その集大成『平成20年度ピッコロ演劇学校・舞台技術学校合同卒業公演』からはや2週間が過ぎようとしています。

これを書いている今(18日)、劇場の窓口には、演劇学校・舞台技術学校平成21年度生の前期募集に出願される方が書類を持って一人、また一人とやって来られています。学校担当職員の方が願書の受付をしているのを眺めながら「ああ、去年の今頃、自分も仕事帰りに出願しに来たっけ」と懐かしく思い出していました。

自分の名前を名乗るところからして先生に叱られ、心と身体をほぐし、鍛えてきた演劇学校での1年。

思い切り恥をかくつもりで、構え・気取りを取り去り、相手(同期の仲間であったり、観客の皆様であったり)に届けと発信する。
全身の感覚・心を相手に開いて受信する・リアクションする。“コドモゴコロにかえって“感じることの大切さを学びました。

自信がなくておどおどしたり・まごついたり、逆に演技してるふり・自己満足の格好付けをやってしまって叱られて――がむしゃらにやっていた自分たちが、大ホールの舞台で歌い・踊り・演じたとは、題名(『夏の夜の夢の夢』)同様、終わった今となっては一夜の夢のようですが、夢を舞台の上に立ち上げるために、現実の苦労を乗り越えてきました。

連日の稽古、でもメンバーが揃わない・芝居の稽古もしたいがダンスや歌が全然できてない・インフルエンザの大流行・溜まる疲労・・・・・・

みんな仕事や学業があって、その上に演劇学校に来ているのはわかっている。
でも思わず言ってしまう「いい加減覚えて来てください」「自分でもやって来てください」。

稽古場ではみんなで合わすんだから、時間がないんだから、と。


真剣だから言ってしまうきつい一言・思わずこぼれる涙・ピリピリする稽古場。
「なんであいつは」一人一人違うからぶつかり合う――でも――そんな中でも、自分のできることなら何でもするから皆でいい舞台を作ろうと、夜なべして全員分のパイを焼いて来てくれた仲間がいた。

稽古不足ならいつでも台詞合わせに付き合うよ、衣裳を作るのが大変なら手伝うよ、自分は全体稽古の開始前に来られるから、と申し出てくれた仲間がいた。
できないことを取り上げるのではなく、こうすれば良くなる、とダンスの姿勢を直してくれた仲間がいた。
いっぱいになっていた自分と違った目線から、思いやりある言葉をかけてくれる仲間がありがたかった。一人一人違うから助け合える。

2月の末からは劇場に詰めての準備。
全体のダンス・歌唱練習が終われば、中ホールで稽古するチーム、・楽屋で衣裳を縫うメンバー・練習室で台詞合わせするメンバー・・・とそれぞれ違うところにいても、仲間の存在、支えてくれる学校OBやスタッフの方々の存在を感じながら朝から夜まで稽古・作業に打ち込み、一日の終わりには通し稽古で汗まみれ、くたくたになって帰る日が続きました。

そして迎えた上演当日。
毎回の上演前には楽屋に講師の秋津シズ子先生を中心に集まり、気合入れ。
作中の妖怪・妖精たちよろしく、守り神・大桂さまに公演の成功をお願いしました。
私たちに先立って上演した研究科25期生の舞台の熱気の残る大ホール舞台に上がり、開幕を待ちます。

緊張のひと時――開幕――お客様でいっぱいの客席が見え、胸がいっぱいになりました。と同時にプレッシャーも感じてしまいます。が、そんな時にも私の前後左右、おそらく同じ思いで懸命に舞台に立っている仲間の姿に励まされ、最初の曲を歌い、踊ることができました。

後はこれまでに稽古で積み上げてきたものを誠実に舞台に上げていこうと必死に勤めるうち、終演を迎えていました。

フィナーレで花束もいただきましたが、自然と沸き起こった暖かい拍手が、何よりの“花束”でした。そして舞台の上にも“笑顔の花”が咲いていました。

4月から始まる演劇学校・舞台技術学校の1年で、新たにどんな仲間たちが生まれ、どんなドラマを紡いで行くのでしょうか。事務所のこちら側でそんなことを考えながら・・・

佐藤貴幸