ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

ペイルライダー

2010年05月11日 | 映画


BSのイーストウッド特集で「ペイルライダー」をやっていた。すでに何度も見ているのだがついつい引きつけら、結局今回も見てしまった。これも亡霊ガンマンの威力であろうか。

この「ペイルライダー」、「シェーン」に対するオマージュのようなことを言われているが、確かにそういう風に見える部分は多い。しかし西武劇というのは、基本的な物語の構造はどれも同じようなもので、当然のこと何かしら似てる部分は出てくるものである。そこは大衆演劇と大して変わらないかも知れない。そして、そんな単純な物語に厚みを増すため主人公を影のある人間に描いたりするが、詰まるところイイモンがワルモンをやっつけるだけの話である。過去に何かがあっても、最終的にはイイモンであるのが殆だ。例外的な異色の西部劇としては「殺しが静かにやってくる」くらいしか思いつかない(これはなかなか面白い)。ついでに「シェーン」だが、一般的には所謂名画となってると思うが、個人的には大して良いとは思わない。

「ペイルライダー」も物語としては、そんな単純な物の一つである。しかし他の西部劇とははっきり違う点がある。それは、最後の最後まで主人公が何者か分からないというところである。その現実感のなさが、この映画を何か神話的なものにさせているのだ。背中には聖痕のようなものまであるし。アクションもリアルと言うよりは何か儀式的なもののように見えるしあ(ハリウッド的ものの対極)、兎に角不思議な空気が最後まで充溢している。この詩情さえ感じさせる世界はイーストウッド特有のものだ。兎に角、「荒野のストレンジャー」の続編のような「ペイルラダー」、「荒野のストレンジャー」とともにイーストウッドの中では絶対押さえておきたい作品である。

追記:ギャオで「戦場のピアニスト」を配信していたので初めて見る。ポランスキーの映画で結構話題になったものだ。既に何度も映画のモチーフとして取り上げられている、第二次世界大戦下のユダヤ人の過酷な運命を描いた作品だが、予想通りの展開で、実話が元になっているという事実がないと説得力を持たないのか、という疑問もさることながら、ハリウッドでは定期的にユダヤ人の迫害を描いた映画をほっしているのか、と作品以外の状況の方についつい関心が行ってしまった。ポランスキーで面白かったのは「ポランスキーの吸血鬼」ぐらいだったのも思い出した。
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