近所にあり、前々から気になっていたのがこの「原爆タイプ」。何故気になっていたかと言うと、佇まいがあまりに控えめだったから。一見すると、果たしてこれは「原爆タイプ」なのか直ぐに分からない。が、よく見ると確かにうっすらと今はなき隣の屋根の形状が、ちょうどあぶり出しを途中で止めたかのようなうっすら具合で残されている。しかし、不思議なのはそれが全てに徹底していないところだ。屋根の儚い形状とは対照的に、突端部分だけはきっちり丁寧な仕事を施されているのだ。この存在が、この原爆タイプの個性を際立たせているのだ。しかもこれがあることによって、生成過程の不思議を考えざるを得ない。
つまり、突端部分を作ったときには隣の家は無くなっていると考えられる。今までのは大体そういうパターンだ。昔の壁はモルタルなどだから、隣が無くなると壁を共有した部分が剥がされその部分は結構抉られているので同じような素材で埋めるか(これが原爆タイプのスタンダード)、或いは新建材で全体を覆う。その場合は、原爆タイプは存在しない。隣の家があった頃壁を修復した場合、むき出しの部分を隣の屋根に沿って新建材を貼る。そして隣がなくなった時、新たにむき出しになった共有部分を修復するが、多くが同じ建材がないので、その部分だけ新しい建材で貼る。すると同じように原爆タイプが出現する。以上のような生成過程が、今回の物件には当てはまらないのだ。控え目なわりには、なかなかしぶとい物件であると言える。