日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

暫定税率問題の本来あるべき論点は?

2008-05-12 | ニュース雑感
4月一か月間だけの“ガソリン値引き”が終了し、道路特定財源の一般財源化とそれに伴うガソリン税の暫定税率の存続をめぐって与野党の綱引きが続いています。

毎度毎度思うことですが、国民生活にとってどんなに重要な問題でも、与野党の綱引きに入り込んでしまうと、その問題だけがクローズアップされて結局「政争の具」にされてしまうのです。今回の問題がまさにそう。暫定税率がなぜ必要とされてきたのかを今一度考え、政治の主導権争いに関係なく、本来あるべき国民的議論をすべきであると思っています。

暫定税率が必要な訳は、すなわち遅れている地方の道路整備の財源不足を補わんがための苦肉の策であります。確かに「暫定」が既に20数年間も延長、延長で来ていることはおかしな事実であることは間違いありません。ではなぜ、「暫定」が20数年間も延ばされ続けてきたのか。本来、抜本的な財政改革を行い必要な投資に対する真っ当な財源の確保をしていくことを怠ったがための苦肉の策に他ならないのです。

ここで大切なことは、民間で言うならば国の財政問題は全省庁一体でひとつの企業会計を形成するものであるという、ごくごく当たり前の考えを忘れるなかれということです。道路特定税源の一般財源化とそれに伴うガソリン税の暫定税率廃止の有無ばかりが焦点になる昨今ですが、そのことを議論する前にすべきことは、各省庁の予算の使い道の「見える化」です。中でも不透明極まりない「特別会計」の「見える化」こそが、一番求められてしかるべきだと思うのです。

予算は本来、一般会計で一体的に管理することが望ましいものの、国が保険など特定の事業を行う場合、事業ごとの収支を明確にするため、財政法で例外的に一般会計と区分した特会の設置が認められています。特会は、国民の「受益と負担」との関係を分かりやすくし、弾力的かつ効率的に予算執行するのが本来の趣旨ですが、実際には、例外のはずの特会が、一般会計の5倍近い規模に膨らんでいるのです。

ここまで肥大化したにもかかわらず、特会の監視はあまりにもザルでした。というのも、特会の資金は一般会計からの繰り入れや独自財源、民間からの借り入れなどが入り組んで出入りが分かりにくく、国会などでも追及しにくかったのがその理由です。社会保険料やガソリン税など特定の財源を持つ特会では、財務省も支出だけを減らせとは言いにくい訳で、結果として各特会を所管する官庁が自分の財布のように自由に予算を使い、特会は各省庁や族議員の既得権益の温床になってしまったのです。

政治もマスコミも今しなくてはいけないことは、道路特定財源の問題や社会保険庁の問題を単発で指摘し議論することではなく、国の財政全体の問題として一日も早く特会の「見える化」をさせることです。その結果として、無駄遣いや不透明な資金を、本当に必要な国民の福利厚生や地方の道路整備に充当するなど、各省庁の既得権的予算防衛を許さない抜本的財政改革が求められるべきなのです。

その上ではじめて、ガソリン税の暫定税率の維持が必要であるのか否か、後期高齢者医療制度導入が妥当であるのか否かが、正しく議論できるのではないでしょうか。

自民党も民主党も、やれガソリン税だ、高齢者保障だと目先の総選挙対策の小手先の人気取り戦術に走るのではなく、本当に今国家財政の将来を考えたときに、国は何をすべきなのかを明確にし表明すべきであると思います。政府は2006年に2011年までに財政のプライマリー・バランスを均衡させる(企業で言うところの期間損益の黒字化)と宣言しています。これにしても、今の状況では到底達成できるものではなく、全特会の「見える化」→すべての「無駄」の排除を大前提として、もっと真剣に考えるべき時にきているのではないでしょうか。

このまま、与党も野党も財政問題で目先の問題のみの議論を続けていくならば、プライマリー・バランスの均衡はおろか、消費税を20%超にしないと国の財政が破綻をきたすとような事態ももう目前に迫ってくるのではないでしょうか。今回の一連の議論の裏にある一向に「見える化」しない財政問題のリスクは、とてつもなく大きいと国民レベルで意識をすべき時にきていると思います。

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