日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

NHK問題は公共放送の必要性議論に展開すべきと思う件

2014-02-07 | ニュース雑感
NHKの話を書いておきます。
会長である籾井氏の慰安婦に関する発言に続いて、経営委員である長谷川三千子氏、百田尚樹氏の発言が問題視されています。長谷川氏、百田氏は経営委員にふさわしくない、と。

なぜそんなことを言われるのか、NHKが公共放送だからです。公共放送とは何か。NHKのホームページにはこのような記載があります。
「公共放送とは営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送といえるでしょう」

というわけでNHKの経営委員については、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる、広い経験と知識を持つ」人との規定がなされており、この規定に照らして、籾井会長も長谷川氏も百田氏もふさわしくないのではないか、との意見が続々出されている訳なのでしょう。

ではNHKが公共放送でなければ問題になることもない。ならばいっそ公共放送としてのNHKをやめて民間放送に移行したらいいんじゃないのか、と考えたりもするのは私だけではないはずです。そのあたりの疑問にも、NHKは一応答えてくれてはいます。

<以下引用>
公共放送は必要であると考えています。
① 公共放送の使命や役割は、視聴者のみなさまからの受信料をもとに、放送の自主自律を貫き、質の高い多様な番組や正確で迅速なニュースを全国で受信できるよう放送することで、民主主義社会の健全な発展と公共の福祉に寄与することです。 NHKは、市場原理だけでは律することのできない公共性を強く意識し、特定の利益や視聴率に左右されずに放送事業を行っています。
② NHKの番組には「大河ドラマ」や「紅白歌合戦」のように視聴者のみなさまの関心の高い番組だけでなく、教育番組や福祉番組、古典芸能番組など、 市場性や視聴率だけでは計ることの出来ない、重要な役割を担うものが多くあります。また、緊急災害時に大幅に編成を変更し、ニュース・報道番組を放送する ことなどは、スポンサーの意向に左右されずに行うことのできる公共放送ならではの役割です。
③こうしたことは、税金で運営される国営ではなく、広告収入による商業放送でもなく、視聴者のみなさまに負担していただく受信料で成り立つ公共放送だからこそ実現できるものと考えています。
④東日本大震災からの復興、長引く経済の停滞、急速に進む少子高齢化など、日本が数多くの課題を抱える中、国民の生命・財産を守り、視聴者の判断のよりどころとなる信頼できる情報や番組をお届けする公共放送の役割は、ますます重要になっていると考えます。
⑤また、放送と通信の融合が一段と進み、さまざまな端末を通して多種多様なコンテンツを誰もが自由に利用できるようになる中で、最新の技術を活用して利便性を高め、信頼されるコンテンツをお届けすることも、新しい時代の公共放送に求められる責務と考えます。
平成24年度からの3か年経営計画「豊かで安心、たしかな未来へ」の中でも、こうした考えを明記しています。


さて、どうでしよう。これを読んでみて「なるほど確かに公共放送は必要だ」と思いますでしょうか。
まず①。
「NHKは、市場原理だけでは律することのできない公共性を強く意識し、特定の利益や視聴率に左右されずに放送事業を行っています。」
現実にはそれができていないということが、会長、経営委員人事ひとつをとっても明確に分かってしまうから今回問題になっているわけですよね。

②については、
「教育番組や福祉番組、古典芸能番組など、 市場性や視聴率だけでは計ることの出来ない、重要な役割を担うものが多くあります。」
これだって誰の判断。NHKの主観が必ずや入るものでもあって、逆に民営化して政府が必要と考える教育番組や福祉番組、古典芸能番組を、番組枠を買って放送したほうが税金を使う分だけ余程国民の監視の目が行き届くのではないでしょうか。政府スポンサーの放送を民間放送局のコンペで争う方が、より安価にいい番組制作ができるようにも思います。
さらに、
「緊急災害時に大幅に編成を変更し、ニュース・報道番組を放送する ことなどは、スポンサーの意向に左右されずに行うことのできる公共放送ならではの役割です。」
東日本大震災の時を振り返ってみれば、民放各社の対応にスポンサーの意向が邪魔をしたという印象はほとんどないと思っていますが、どうでしょう。

③は、以上のような考え方で見てみるなら、全然そうは思いませんが…。
④は言っていることの根拠がなんら示されておらず、勝手な論理で自己の必要性を述べているだけではないかと思いますが…。
⑤は民営化したらできないのでしょうか。この部分にしても、必要があれば政府が予算化して本当に必要なものを国民の審判の下で実行したほうがよほど透明性が高いように思うのですがいかがでしょうか。

さらに、今回の人事問題は籾井会長の「政府が右なら左と言うわけにはいかない」発言に端を発して、長谷川氏百田氏を含めて「首相よりの人事だ」との批判もありますし、メディアの政治利用リスクを回避する意味からも、今の公共放送としての運営には問題があるのではないかと思うのです。

今回の籾井会長、長谷川、百田両委員の問題発言に端を発したNHK問題は、単なる人事の適正不適正を問うことにとどめるべきではなく、公共放送の必要性と存続リスクという観点からしっかりと議論すべきなのではないかと思います。事業仕分けの際にもしっかりとした議論がなされなかったNHKの民営化議論を、今こそ膝を詰めてするべき時であると、声を大にして申し上げたいと思います。

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