日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

<音楽夜話>元ビートルズ 2 ~ リンゴの“人のふんどし作戦”

2007-11-03 | 洋楽
今回から、週末の音楽ネタを<音楽夜話>と題することにしました。

今回は元ビートルズ2人目です。2人目はリンゴ・スターにしました。ビートルズの4人をソロで取り上げる場合、この人、たいてい最後4番目にオマケのように扱われるのが常ですから、今回は2番目という異例の“厚遇”で取り上げてみたいと思います。

彼の最高傑作アルバムを73年リリースの「リンゴ」とすることに、異論のある音楽ファンはまずいないと思います。「想い出のフォトグラフ」「ユア・シックスティーン」「オー・マイマイ」という3枚のメガヒットシングルをはじめとした、収録楽曲の質の高さは特筆ものです。しかしながら、このアルバム注目点は、楽曲の良し悪し以上にその制作コンセプトにあります。そこには、常に4番目のビートルとして扱われる彼の“開き直りから”から生まれ彼のビジネス・スタイルを決定づけた、実にしたたかな戦略があったのです。

※リンゴ・スター「ユア・シックスティーン」動画
http://jp.youtube.com/watch?v=76O6tuJPe3w

彼は特に突出した音楽的才能があった訳でもなかったのに、「元ビートルズ」と言うだけで天才扱いされて、解散後の周囲の注目たるや半端ではありませんでした。
そんな中リリースした初のソロアルバムは、ボーカリストに徹したスタンダード集。これを見事にハズして、次に出したのが、自分の大好きなフィールドで勝負したカントリー集。これまた見事なハズしっぷりでした。

「元ビートルズ」であっても、真の天才のジョン・レノンやポール・マッカートニーはおろか、第三のビートルのジョージ・ハリスンと比べても音楽的才能の違いは歴然。どんなに背伸びをしてもかなう訳がありません。ただ彼が他の3人に負けないものは、その人なつっこい性格故の交友関係の広さ、特に音楽仲間の多さでした。
そこで彼は考えました。自分の音楽活動は自身の才能頼りで勝負するのは止めて、自分の人脈を総動員して他人の才能を借りた一大豪華競演アルバムを作ったらどうか、それが一番自分らしいのではないか・・・。それは、自分の音楽的才能を前面から引っ込め、人間的特性を120%音楽ビジネスに活かすという、当時の音楽界ではまだ誰も気がつかなかった全く新しい手法でした。

作曲、演奏、バックボーカル…、曲ごとに違う豪華メンバーがサポートし、作りあげられたこのアルバム「リンゴ」は、ジャケットのイラスト通りの一大エンターテイメント・ショーさながらの、本当に楽しく素晴らしいものになりました。このジャケットのイラストも実によく考えられています。よく見ると、ステージの幕の内側は実は観客席の方で、リンゴが「客」なんじゃないかという設定に思えます。
ジャケットのイラストに描かれた多くの「観客」たちは、アルバムに関わった友人たちの似顔絵になっている訳で、なるほどこちらが主役扱いと言うのはうなずける話です。この似顔絵がまたよくできてます。ジョンとヨーコ、ポール&リンダ、ジョージ、ビリー・プレストン、マーク・ボラン、ザ・バンドの面々・・・・、ホント蒼々たるメンバーですね。

さらにこのアルバム発売当時の話題として、元ビートルズの3人が彼のサポートで顔を揃えたことで、「ビートルズ再結成の布石か?」という芸能誌的盛り上がりもオマケとして付いて来て、アルバム「リンゴ」は一大ヒット作品になったのです。

ある種の“開き直り”ともとれるこの戦略、他のビジネスの分野にも共通の、大切なことを示唆していると思います。それは、「全く歯が立たない状況」、「力不足な状況」、などの問題に気づいた時に背伸びは禁物。素直に自分の役不足を認め、他の人たちの力を借りて勝負をするという方向への切り替えこそが大切、ということです。
いつまでもプライド意識から身の丈に合わない背伸びをしてたのでは、いずれ本当の実力はバレてしまうでしょうし、そこを認める素直さや謙虚さがあれば、得られる周囲の協力も格段に大きくなるのです。

彼はその後もこの考えを基本に音楽活動を続け、80年代後半からは、ツアーステージにおいても同じコンセプトを導入。友人の有名アーティスト達とのジョイント・コンサートを「リンゴ・スター&ヒズ・オールスター・バンド・コンサート」として展開し、参加メンバーが交互にソロを披露する、彼ひとりを主役にしない画期的な企画で人気を博しました。彼一人のコンサートだったら、下手くそな歌を延々聞かされ単調でつまらなかったであろうものが、格段に楽しめるものになった訳です。私も89年の初来日公演を横浜アリーナで見ましたが、多くの大物ゲストが次々と持ち歌を披露する、実に楽しく盛り上がるコンサートでした。

元ビートルズである名声を上手に利用し、かつプライドにこだわらない謙虚な姿勢で周囲の協力を最大限に活用する。ビートルズ4人の中で、誰が見ても音楽的には一番才能がないと位置づけられる彼ですが、商才に関しては実は彼が卓越したものを持っていたのかもしれません。


最後に競馬一言コメント。
アルゼンチン共和国杯は、目黒記念と同じ東京2500メートル荒れるハンデ戦です。
両レース共通の穴の「経験則」は人気薄軽量の逃げ、先行馬です。
逃げの⑫にノリが52キロで乗ってきたのは気になりますが・・・。





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3 コメント

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質問です (soujiji)
2007-11-05 21:52:32
初めまして。実はスティーリーダンのアルバムでお薦めを教えていただきたいのです。もっと前にコメントすべきでしたが、気づいてもらえないかも、と思い、最新の音楽の所に書きました。リンゴの内容でなくてすみません。
以前ファンだったキリンジが、大好きだといっていたので、いつか聴いてみたいと思っていました。よろしくお願いします。
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定番は後期3枚 (OZEKI)
2007-11-06 00:05:17
soujijiさん、メッセージ&ご質問ありがとうございます。

スティーリー・ダンの一般的人気作と私のオススメが珍しく一致していますから、ご安心ください。

イチオシは、ファンなら誰もがきっと「aja(エイジャ)」であると言うでしょう。私も異論ありません。ジャズとロックの融合点と言う意味で、最高の名盤であることは間違いないです。

ジャズっぽさより、少しロック寄りがよろしいという趣きには、「幻想の摩天楼(ROYAL SCAM)」でしょうか。私が大好きな1枚です。
以下のURLでの動画がお気に召すようなら、このアルバムがオススメです。
http://jp.youtube.com/watch?v=ylr2D4Pwn58

もう一枚は「ガウチョ(Gaucho)」。ジャズ、フュージョン系の大傑作です。盗作だなんだの問題はあったものの、タイトルナンバーは名曲です。

以上はどれも彼ら後期の3枚です。
ちなみにリリース順は、「幻想の摩天楼(ROYAL SCAM)」→「aja(エイジャ)」→「ガウチョ(Gaucho)」です。
ベスト盤も何種類か出ていますが、彼らの場合には、アルバムごとの作りざまにこそ、その芸術性があるので、できればベスト盤以外から入られたほうがよろしいかと思います。

この程度でよろしいでしょうか?

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Unknown (soujiji)
2007-11-06 07:16:01
すぐにお返事いただけてうれしいです。
今日早速レコード屋さん…ではなく、
CD屋さんに行ってきます。
ベスト版はなるべく買わないと決めているので、
ajaから聴いてみたいと思います。
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