日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ12 ~ 日ハム完敗の原因はフロントにあり!

2007-11-02 | 経営
スポーツのチームワークと企業組織のチームワークは、共に同じ組織運営の問題であり、スポーツのチーム運営から企業経営が学ぶべきことはたくさんあります。そのひとつが、組織運営と構成員のメンタリティの問題。組織は常に人が動かし人が動いて結果を出すものです。構成員のメンタルな部分を抜きに組織運営は語れません。

あんなに強かった日本ハムファイターズが、日本シリーズではあっけないくらい簡単に負けてしまいました。1勝4敗。最終戦はパーフェクトに抑えられてしまうという不名誉なおまけまつき。唯一勝った初戦も、わずか2安打。ダルビッシュの好投に救われての勝利であり、まさにいいとこなしの完敗でした。

なぜ急にこんなにも弱くなってしまったのか?ベンチを見ていて分かったのは、明らかな選手の元気のなさ、もっと言えば勝利への執念のなさ。勝利への執念でロッテを破って勝ち上がってきたチームがなぜ?

問題はフロントのまずい対応に尽きます。
ロッテとのCSシリーズ中突然の「梨田監督就任発表」。なぜ、あのタイミングでやる必要があったのか?この心ないフロントの対応が、選手の勝利にかける集中力に水を差し、53年ぶりの日本一をめざす落合中日との間に、明らかな「執念の差」が生まれてしまったのです。

フロントの説明は「梨田氏がワールドシリーズ取材に出るため、発表のタイミングを調整した結果CSシリーズ中になった」とのこと。論外です。「監督、選手会長には了解をとった」云々は関係ありません。なぜ、日本シリーズ終了まで待てなかったのか。急ぐ必要性を私にはまったく見出せません。
就任発表をその日程で受けた梨田氏も梨田氏です。日本一に向けて一丸となって戦っている選手の気持になれば、そんな雑念を吹き込むような行動になぜ同意したのか。組織をまとめ引っ張る管理者として失格と言っていいでしょう。

先日書いた白井ヘッドコーチがもっとも重視し、育んできた「メンタル・コーチング」の精神を根底からくつがえすような暴挙であったとも言えます。もっと言えば、フロント自身がなぜヒルマン-白井体制の下“強い日ハム”作りができたのかを、全く理解していなかったとしか言いようのない“事件”でした。

シリーズ前のヒルマン監督の米大リーグロイヤルズ監督就任発表と契約渡米は、まさに、心無い日ハムフロントの行為に対する米国人流の“あてつけ”だったのかもしれません。それが証拠にヒルマン監督は米国での会見で、選手の気持を代弁するかのように「日本はとても繊細だ」と発言しています。彼は、日本の球団フロントの犯したもっとも大きな過ちに対して、身をもって伝えるために渡米したのではないだろうかとさえ思えました。

監督の考えはどうあれ、結局一番迷惑を被ったのは選手たちでした。梨田氏の就任発表でヒルマン監督はもとより、チームの精神的支柱であった白井ヘッドの退任も確実になり、選手間に見えない動揺が広がったことは想像に難くありません。
選手たちが既に気持が前に向いて走り出していたCSシリーズは、なんとか乗り切れました。しかし、間隔が開きいろいろと考える時間を与えられた後の日本シリーズが始まる頃には、すでに「勝利への気迫と執念」は消え去っていました。唯一ダルビッシュだけは、「監督を最後にもう一度日本一の胴上げをしたい」とがんばっていましたが・・・。

はじめにも書きましたが、組織は生き物であり、その組織を形作る人たちのメンタルな部分は、組織の活力や行動エネルギーにものすごく大きな影響を及ぼします。どんなに業績が上がっていた組織でも、不祥事が起きたり、第三者の介入で精神的動揺があったりすれば、確実にそれまでの雰囲気は維持できなくなるでしょう。どんなに大きな組織でも、どんなに小さな組織でも、組織とは人がつくる集合体であるがゆえ変わりなくデリケートなものなのです。

組織を引っ張る立場にある者は、常にそのことを頭に置き、自分の言動のひとつひとつに十分な注意を払わなくてはいけません。
どうしても組織内に動揺や波紋を起こすであろう言動を起こさなくてはいけなくなったときには、十分かつ納得性のある説明を全構成員に対して事前もしくは事後すみやかに行い、責任者自身の言葉で構成員の気持に訴えかけをしなくてはいけないでしょう。

組織のメンタリティはトップの考えや行動いかんによって、大きく変わってくるものです。組織管理の立場にある者が、いたずらに業績進展の旗振りに執着したり専制的な管理をしたりすることで、組織の業績を伸ばしたり組織を固めたりしようとすることもあるでしょう。どんな強引なやり方であっても、必ずしも間違いとは言い切れませんが、どんな施策を打つにしても、それが及ぼす構成員のマインド面への影響ということだけは忘れて欲しくないです。

組織の構成員のメンタリティに意を解さない、日本ハムフロントと梨田新監督は、今回の日本シリーズ敗戦で自分たちの犯した大きな過ちに気づかなければ、来シーズンの優勝はおろかCSシリーズ出場条件のAクラス確保さえも難しいであろうと、現段階であえて断言させてもらいます。

組織運営における重要なポイントのひとつを、はからずも見せつけられ再認識させられた今年の日本シリーズでした。


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