日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

基本は同じ

2009-09-14 | その他あれこれ
仕事の関係で、26年続く地域サークルの幹事さんたちのお話をうかがう機会を得ました。

お目にかかったのは、会の創設以来その運営を盛り立ててきた会長さんはじめ3名の幹事(会長、副会長、会計幹事)の皆さん。この御三方70代後半から80代前半の高齢の女性の方々です。会は昔は婦人会的つながりで勉強会やら学習会やらがメインで運営されていたものが、今は会員の高齢化に伴い老人会的集まりになっているとのこと。それでも会員は200名を超えるという大所帯で、月3回の集まりを会員の皆さんが楽しみにしているというのが驚きです。現在その月3回のメイン行事は公共施設を借りてのカラオケ例会とか(もちろん、年に2回程度旅行会や「振り込め詐欺」や「介護問題」などをテーマにした勉強会も実施しているそうです)。それにしてもすごいことです。毎回200人を超す会員のうち20~30人が代わる代わる出席をしているそうで、仮に世の中にカラオケ好きなお年寄りがものすごく多いとしても、ただカラオケで歌が歌えるからだけで、この手の会がそうそう長く続くものではないと思います。

これは何か秘訣があるに違いない、組織運営のヒントがあるかも、と根掘り葉掘り話を聞いてみました。すると、やはりしっかり、その運営には秘訣らしきモノがありました。まず月3回のカラオケ例会ですが、この集まり基本は歌に覚えのある先生役の幹事の方(副会長)が参加者の歌いっぷりを指導しているそうです。この指導が振るってまして、「ダメなところを指摘しても気分はよくないでしょう。なるべくその人の良い点を伸ばしてあげられる指導を心がけています」とその“指導方針”を披露してくれました。なるほど、ホスピタリティあふれる対応じゃないですか。それで参加者の皆さん明るく楽しく前向きに参加をされているんですね。素晴らしい。参加者の皆さんはとにかく「楽しい」と口々に言っているそうです。脱会する人もほとんどないといいますから、皆さん気分良く心底楽しんでいる証拠ですね。

次に運営に関する物事の決定方法です。この手の集まりはややもすると知らず知らず会長がワンマンになりがちなのですが、当会では例えば旅行の案を決めるにも基本はアンケートで意見を収集し、会長の独断に陥らぬよう皆の意見を取り入れながら幹事を中心とした合議制で決めているといいます。さらに、会長だけが突出してしまい目立ったり権威的になって反感を買うことのないように、何事においても基本は幹事3人で分担運営をしている様を明確に知らしめているとか。特に不透明さが即分裂にもなりかねない金銭面の管理は、会長は手を触れずに元銀行勤めの会計幹事が責任をもって管理し牽制を働かせているそうです。これらのことは、40代、50代の人間がやっているのなら「普通」の範疇ですが、80歳前後の高齢の皆さんの気配りなのですから本当に驚かされます。このような誰も組織を私物化することなく透明性の高い運営を心がけることで、皆が気持ちよく会に参加することができるのでしょう。「この集まりに顔を出すと、不思議と普段話せないことも話せて、とても気持ちが安らぐ」という声も多いそうです。

人が集まってできる組織では、営利であろうとなかろうと基本は同じですね。明確なマネジメントの「見える化」をはかって、可能な限りトップの独断に陥らない運営を心掛けること。そして相互けん制をはたらかせることで、トップに座る権力者の組織私物化を防ぎクリーンな運営を心がけること。そして、上に立つものは下の者の良い点をほめてやる気を与えその才を伸ばすこと。実に活力ある組織の作り方の基本を地でいくやり方ではないですか。たとえいかなる組織でも、20年を超える長きにわたって多くの構成員をまとめて引っ張っていくことは容易ではありません。組織運営のお手本とも言えるポイントの大切さを、人生の大先輩方から改めてご指導いただいた気分でありました。