日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

“反面教師”星野監督から学ぶこと

2008-08-25 | その他あれこれ
引き続きオリンピック・ネタを総集編的に…。

今回の北京オリンピックは、日本のお盆時にぶつけてくれたこと、時差が1時間と言う地の利があったことなどから、今までになく多くの競技を生で(生中継という意)観戦することができました。その結果、スポーツのイベント、特にオリンピックという短期決戦で世界的頂点を争う戦いからは、緊張感溢れる真剣勝負として多くのビジネスヒントを学ぶことができると、改めて強く実感させられたのでした。

特に考えさせられたのは、「あるべき指導者の姿とは?」という問題。この問題に関しては、ブログで大会中に「コーチ」というテーマで一度取り上げていますが、再度“反面教師”と言う意味で、野球チーム日本代表監督星野仙一氏に触れておきます。

ソフト・ボールの話を書いたときにも星野監督のことは少し触れましたが、選手と監督の主客転倒があまりにも強く出すぎたことが、今回の最大の敗因であったように思われました。「俺の会社だ、みんな言うこと聞け!」的なワンマン社長は、商店レベルの零細時代には理想的なほど機能するのですが、少々規模が大きくなって組織化してくると、それは逆効果となり「委縮」「イエスマンの集合体による活力の低下」「無意見・消極化」など組織の収縮を招きます。すなわち「ある程度プレイヤーに任せてポイントで指揮を執る」のが肝要になるのです。星野監督は、よくある中小企業経営者の悪い例と同じ過ちに陥った、と言えるように思います。

もう一点、星野監督に決定的な“過ち”がありました。準決勝韓国戦前に韓国メディアを挑発する発言があったことと、韓国戦に敗れ3位以下が決まった後にもさらに、記者会見で韓国記者の質問に挑発の上塗り的受け答えをしたことが一部で報道されていました。一選手の言動ならばまだしも、指揮官が感情的になって他国を個人的感情むき出しで批判するような行為は、マイナス以外の何物でもありません。

感情的に走るリーダーの下では、企業経営がおぼつかないのと同じことです。国際舞台の今回は、日本人として「恥」と思える発言であり、キャプテンの宮本選手が監督に代わってやんわりお詫びをしていました。これを見るに、選手間に余計な気を遣わせるなどの精神的動揺や、チームワークへの影響はかなりあったと思われます。残念ながら星野監督は、国際舞台での指揮官にはふさわしくない人物であったと言わざるを得ないでしょう。

ソフトボールの上野投手が優勝後のインタビューで、「最後は気持ちの強い方が勝つと実感した」と言っていました。「気持」を誰よりも強く持ち続けることは、「運」を呼び込むことも含めて必ず結果につながるものであると、今回多くの競技が教えてくれた真実でした。ただ、「指導者」「リーダー」たる人が、勘違いして誤った役割を勝手に演じてしまった場合には、せっかくの強い「気持」も消え「運」も逃げて行ってしまうのです。北京の星野監督は、経営者にとって格好の反面教師であったと言えると思います。