日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

これでいいのか? ~ 追悼、赤塚不二夫さん

2008-08-05 | その他あれこれ
天才漫画家の赤塚不二夫さんが亡くなりました。

赤塚不二夫さんと言えば、「おそ松くん」「天才バカボン」などで一世を風靡した天才ギャグ漫画家でありました。私はまさに赤塚世代。「おそ松くん」でギャグ漫画のとりこになり、コミック単行本は全巻持っていましたし、「天才バカボン」連載中の少年マガジンは毎週本屋から宅配をお願いしていたほどの赤塚ファンでした。

「おそ松くん」は、まず主人公が六つ子という設定の斬新さがピカイチでした。さらには、六つ子を喰ってしまうほどの存在感ある“脇役”たちも冴えまくってました。自称おフランス帰りの「イヤミ」、おでん片手の「チビ太」、頭に日の丸を立てた「ハタ坊」、パンツの中に猫を飼う「デカパン」、なんでも食べちゃう「だよーんのおじさん」などなど、子供心に素晴らしく個性的な数々のキャラクターたちは、子供時代の私にギャグや笑いの基本を教えてくれた先生たちでもあったのです。

「天才バカボン」では本人や本人の父をモデルにしたという「バカボンのオヤジ」をはじめ、「ホンカンさん」「レレレのおじさん」「うなぎイヌ」、「もーれつア太郎」でも「デコッぱち」「ケムンパス」「ニャロメ」「ココロのボス」など、氏の作品はどれもみなキャラクター・ギャグ満載の大傑作ばかりでした。「赤塚塾」はまさにこどもたちの“ギャグ道場”だったのです。

大人になってからも私は、銀行の宣伝広告担当時代に、商品ごとにこの素晴らしく個性的なキャラクターたちを使った、より消費者寄りの“脱銀行イメージ”の実現を秘かに計画したりもしていたので、彼らへの思い入れは人一倍なのです。「これでいいのだ!○○銀行」「イヤミの外貨預金おフランスザンス」「ココロのマイカーローンのココロ」「ハジメちゃんの教育ローン」などなど、“下町的”身近かさとキャラクターの“音(=セリフ)”のミクスチュアーが、実に楽しいと思いませんか?残念ながら、実現はしませんでしたが…。

キャラクター・ギャグだけでなく、その絵の素晴らしさも特筆モノでした。10年ほど前に全国を回った「赤塚不二夫展」で初めて見た原画の色使いの美しさは、安藤広重の版画にも通じる日本人的美的感覚にあふれていました。それまで粗雑な色刷りの雑誌でしか見たことのなかった私は、単なる漫画家としては収まりきらない、画家としても賞賛されてしかるべき傑出した才能に驚かされたことをよく覚えています。

98年、ウイスキーグラスを片手にガンを公表して、破天荒な闘病生活が話題になったりもしましたが、02年に脳内出血で倒れてからは反応がほとんどないこん睡状態が続きました。06年に献身的に看病していた妻真知子さんが、くも膜下出血のため急死した時には、この一大事にも目を覚まさない“マヌケさ”に「これでいいのか?バカボンおやじ!寝ている場合じゃないぞ!」と本当に切なく思ったものでした。

手塚治虫とはまた別の意味で、日本を代表する漫画家だった赤塚さん。なんとか意識を戻して、また訳の分からないギャグやキャラクターを創って欲しかった。生きてもっとももっと描いて欲しかった。これでいいのか?バカボンおやじ!私の気分は、「賛成の反対なのだ!」
心よりご冥福をお祈り申し上げます。