日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

北島康介選手、「己に勝利」の素晴らしき金メダルに大拍手!

2008-08-11 | ニュース雑感
水泳平泳ぎの北島康介選手が、100メートル平泳ぎで前回アテネオリンピックに続く2大会連続の金メダルを獲得しました。

本当に素晴らしい金メダルです。彼は、前回のアテネでの金メダル以降、周囲や全国民からのプレッシャーからか、一時期極度の不振に陥りました。06年頃には国内の選手にも勝てないほどの大スランプに(200メートルでは国内大会で4位などという屈辱的なレースも)。「引退」が誠にしやかに語られたのもこの頃のことでした。

しかし彼は不屈の精神で見事に蘇りました。今日の素晴らしい勝利があるのは、誰に勝ったからではなく、己に勝った結果なのだと思います。一時期の大不振からの「復活」のカギを握ったものは、自身が目指すものへの「執着心」と、己の力に対する「自信」を持ち続けること。それが、彼を支え突き動かしてきたのだと思います。それに加え血のにじむような「努力」があってはじめて、今日の栄光にたどり着いたのです。

「執着心」「自信」そして「努力」。この3つこそが、邪心を払い己に勝つための必要条件であると、彼は教えてくれています。

今から36年前、1972年のミュンヘン・オリンピックで、同じ100メートル平泳ぎで田口信教という金メダリストが誕生したことをご記憶でしょうか。その頃私は中学生で、小学生時代に熱心に通っていたスイミングスクールの競技会で、自分も同じ平泳ぎで活躍できた過去の栄光になぞられて彼を熱狂的に応援していました。決勝当日、日本時間早朝(確か5時頃でした)のレースをテレビで応援し、前半7位でのターンから後半一気のごぼう抜きをきめ、ゴールでライバル、ヘンケン選手に競り勝った瞬間、我が事にように嬉しく鳥肌もので喜んだことをよく覚えています。

そして、4年後のモントリオール大会で田口選手は再び同種目でヘンケン選手と対戦します。国民はみな「田口2連覇」に大きな期待を寄せ、レースに注目しました。しかし結果は、準決勝敗退。理由は、極度のプレッシャーから2度のフライイングを犯し、萎縮した結果平凡な記録に終わってしまったのでした。彼はヘンケンと戦う前に己に負け、プレッシャーに押しつぶされてしまったのです。その影響はかなり大きく、前大会銅メダル獲得の200メートル平泳ぎも惨敗に終わりました。

当時高校生の私は、ライバルに勝つ前に己に勝つことの難しさを、生まれて初めて教えられた思いでした。そんな悪い記憶もあって、今回の北島選手にも、その二の舞が襲い掛かりはしないかと、昨日の準決勝を見たときに、少し不安な気持ちになりました。昔の競泳経験から、水泳、特に平泳ぎにうるさい私から見て、昨日の泳ぎはどこか堅い感じがしていたからです。恐らく連覇へのプレッシャーから、ライバルを必要以上に意識した結果のことではないかと思われました。

昨日の時点で彼の頭の中にいたライバルは、予選1位通過のオーエンであり、世界記録保持者ハンセンだったのもしれません。それが今日は明らかに、個々のライバルに関係なく己に勝つことだけに集中した実に見事な、伸び伸びとした泳ぎを見せてくれたのでした。特に後半の素晴らしい泳ぎは、他を全く寄せ付けない印象で、結果、世界新記録での優勝でした。「執着心」「自信」そして「努力」、この3つが見事に調和して結実した瞬間に立ち会えたことを、本当にうれしく思いました。

北島選手、おめでとうございます。そして、ありがとう。実は今少しスランプの私です。己に負けないよう、「執着心」「自信」「努力」を忘れずがんばりたいと思います。