静聴雨読

歴史文化を読み解く

バイロイト詣で 4

2013-04-05 07:10:06 | 音楽の慰め

 

(4)ワーグナーの楽劇

 

ワーグナーは、生涯、楽劇の大作を10作完成した。発表順に、『さまよえるオランダ人』『タンホイザー』『ローエングリン』『ラインの黄金』『ワルキューレ』『トリスタンとイゾルデ』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『ジークフリード』『神々の黄昏』『パルジファル』。いずれも、上演時間3時間、幕間の休憩を入れると、5時間の大作だ。

 

バイロイト音楽祭では、毎年、これらの10作から、『ニーベルングの指輪』を構成する四部作(『ラインの黄金』『ワルキューレ』『ジークフリード』『神々のたそがれ』)を中心に選んで上演作が決められる。

2009年は、『ニーベルングの指輪』を構成する四部作のほか、『トリスタンとイゾルデ』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『パルジファル』を加え、合わせて7作が上演される予定だ。私はこれらすべてに申し込んだのだが、当選したのは、『ニーベルングの指輪』を構成する四部作と『パルジファル』だった。

 

外国の歌劇場の日本での引越し公演で接したことがないのが、ちょうど、今回当選した5作だったので、ある意味でラッキーだった。これで、ワーグナーの10作の楽劇を一通り鑑賞できることになる。

 

ワーグナーの楽劇のテーマは、ほとんどがゲルマン民族の中世期以来の伝説に拠ったもので、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』と『パルシファル』を除く8作はすべて、ゲルマン民族の伝説の読み下しが基となっている。

また、『パルシファル』も中世スペインの伝説に基づいたものというから、これも「伝説物」の一種といえる。

 

『ニュルンベルクのマイスタージンガー』だけは市井の人びとを題材にして、小市民の悲しみを謳い上げている。ドイツの伝統の親方・徒弟制度(マイスター制度)が発想の源だ。19世紀初頭のゲーテが『ウィルヘルム・マイスターの徒弟時代・遍歴時代』を記したように、ドイツではマイスター制度が人格の養成と技能の習得に欠かせない制度だとみなされていた。その伝説を利用して、各分野のマイスターが「歌」で腕を競い合うというのが『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の趣向だ。

 

今回は、『ニーベルングの指輪』を構成する四部作と『パルシファル』に集中して、ワーグナーの伝説の咀嚼ぶりをじっくりと理解してみたいと思う。 (2009/3)

 

 



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