光産業技術動向ブログ OITT

OITTとは、Optoelectronic Industry and Technology Trendの略称です。

世界最高速、800GHzを超えるスイッチング性能を有するトランジスタを開発 ~IOWN・Beyond 5Gの世界の実現に向けたテラヘルツ帯集積回路の開発に道筋~

2020年03月31日 | 新技術開発

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下 NTT)は、インジウムリン(InP)※1系化合物半導体結晶成長技術と、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)※2製造技術の高度化により、世界で最も高速な800GHz(ギガヘルツ)を超える電流利得遮断周波数※3を有するトランジスタの開発に成功しました。本トランジスタを活用することで、集積回路の劇的な高速化・高性能化が可能になり、マルチTbps級の光伝送やテラヘルツ(THz)帯を利用した大容量無線通信、センシング・イメージングなど、将来のスマート社会を支える高度な情報通信システムやサービスの実現が見込まれます。これにより、IOWN※4やBeyond 5Gの世界を実現してまいります。
 本技術の詳細は、IEEE Electron Device Lettersに掲載されています。(https://ieeexplore.ieee.org/document/9044299 )

用語解説
※1 InP (Indium Phosphide):インジウム(In)とリン(P)で構成されるIII-V族化合物半導体の一種。様々な集積回路に一般的に用いられるシリコンと比較すると、高い電子移動度や広いバンドギャップを有している。そのため、高速・高出力なトランジスタ用の半導体材料として用いられる。InPを材料に用いたトランジスタにおいては特性を向上させるために、Inに加えてアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)、Pに加えてヒ素(As)やアンチモン(Sb)等を組み合わせることがある。
※2 HBT(Heterojunction Bipolar Transistor):ヘテロ接合バイポーラトランジスタと呼ばれるトランジスタ構造の一つ。エミッタ・ベース・コレクタの三層構造からなり、トランジスタの垂直方向に電流が流れることから高い電流駆動力を有し、高速性能に優れる。また、エミッタとベース間、ベースとコレクタ間がそれぞれ異種材料で構成されている場合は、ダブルヘテロ接合バイポーラトランジスタ(DHBT)と呼ばれ、ベース材料よりバンドギャップが大きい材料をコレクタに用いることで高い耐圧を得ることができ、高出力化にも適している。
※3 電流利得遮断周波数(fT):トランジスタの高周波性能指標の一つ。電流利得(出力電流/入力電流の比)が1(トランジスタの電流増幅能が消失する)となる周波数。HBTにおいては、ベース・コレクタ間の電子走行時間、コレクタ容量の充電時間、エミッタ容量の充電時間の和の逆数が電流利得遮断周波数となる。
※4 IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network):スマートな世界を実現する最先端の光関連技術および情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤。
※5 有機金属化学気相堆積法(MOCVD):半導体の結晶成長方法の一つ。原料ガスを加熱された基板上に供給し、熱分解された原料から半導体を形成(成長)させる。


さらに概要を知りたい方は次の記事を見てください。
NTTのニュース
光技術や光産業の情報交流フォーラム
エイトラムダフォーラムhttp://www.e-lambdanet.com/8wdm/

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