9時、起床。
昨日「BAKE MAN」で買ったパン、牛乳、紅茶の朝食。
右手首の具合はかなりよくなってきた。昨日の朝はまだ仏壇や神棚の蝋燭に火をつけるのにチャッカマンのボタンを押すのに苦労したし、手のひらを卓球のラケットのバックハンドのように動かして風で蝋燭の火を消すことや、柏手を叩くことは痛くてできなかったが、今朝はそれができるようになった。人間の身体というのはちょっとしたことで、日常的な動作が不自由になるものだというのを痛感したしだい。
仏花に新しいものを加えてので、古くなった(しかしまだ捨てるほどでない)仏花の一部をナツの墓に供える。
12時に卒業生のアマネさん(一文、社会学専修)と娘のジュリちゃんと鹿島田駅で待ち合わせ、「パン日和あをや」へ行く。ニューヨーク在住の彼女は年に一度日本に里帰りする。フランス人の旦那さんは二年に一度同行するが、今年は母と娘二人だけの里帰り。去年までは早稲田で会っていたが、今年はアマネさんの実家のある溝の口から近いこちらで会うことにした。新型コロナウィルス騒ぎの真っ最中、里帰りするかどうかをぎりぎりまで迷ったようだが、「エイヤ!」と決断してやってきたというわけである。
二階の畳席を予約しておいた。二階にはテーブルが二つあるが、客が一組入ると貸し切りになる。
ジュリちゃんは今年で10歳になる。英語、フランス語、日本語のトリリンガルだ。卒業生と子供連れで会うことは珍しくはなくなったとはいえ、乳幼児の場合がほとんどで、ジュリちゃんのような少女は珍しい。去年まではお絵かきノート持参だったが、今年は厚いペーパーバック持参である。
全米でベストセラーになっているクリス・コルファーの冒険ファンタジー小説『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』(全6巻)の一冊。
私とアマネさんはクロワッサンと本日のスープ。
本日のスープはジャガイモとシイタケのポタージュ。
ジュリちゃんはハートのチョコパン。
彼女はチョコが大好き。あとでホットショコラも美味しそうにスプーンで飲んでいた。
次のメニューが運ばれてくるまでの間、ペーパーバッグを読む彼女。買い与えるとたちまち読んでしまうので、2週間に一巻と決めているそうである。なのでいま読んでいる巻は再読が終わって、三読を始めたところらしい。
私とアマネさんはおじいちゃんのハチミツトースト(オリーブオイルを垂らして)。
ジュリちゃんは国産牛肉ハンバーガー。
しかし、誤算があった。彼女は生野菜とマヨネーズが苦手なのであった。なので分解して食べられる部分だけ食べていた。代わりにハートのチョコパンをもう一個注文した。
私とアマネさんはサーモン、アボカド、クリームチーズのサンドウィッチ。
食事を終えて、ジュリちゃんのポートレイトを撮る。2、3年前まではカメラを向けると盛んに「変顔」をしていたものだが、いまはチャーミングな表情を作るようになった。
しっかりモデルさんである。
店を出るとき一階のテーブルで写真を撮っていただく。「あをや」の奥様にではなく、たまたまいらした女性客にである。聞くと、近所にお住まいで、以前、私が別の卒業生と来店したときにも居合わせたそうである。「卒業生とその娘さんも一緒にというのが素敵ですね。なかなかないですよね」と感心されていた。私自身が感心しているくらいだから、きっと彼女は珍しい生き物を写真に撮るような気分だったのではあるまいか。
この後、蒲田に出て、「カフェ・スリック」に行こうということになり、矢向駅まで歩く。
線路沿いの道で、「走りたい!」とジュリちゃんがいったので、私と駆けっこをすることになった。全速力で走ったのは久しぶりである。全速時のスピードはまだ私の方がわずかに早いが、持久力は彼女の方が上回っている。彼女はバンビのように弾んで走るが、私は足がもつれそうになる。上体が前のめりになって足がついていかないのだ。年寄りに転倒は禁物である。私は白旗を挙げた。
「スリック」に着いて、私はロイヤルアイスティー、ジュリちゃんはアイスティー、二人とも走って喉が渇いている。アマネさんはお好みのウバをポットで。
『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』は平凡社から翻訳が出ている。また、映画化も決定したようである。
シフォンケーキは私は紅茶シフォン。
ジュリちゃんはチョコレート。「ふわふわ!」と感激していた。アマネさんは(写真はないが)ブラウンシュガー・アンド・ナッツ。「もう一個食べたい」とジュリちゃんが言った。これが本当のダブルチョコレートだ。「だめ」とアマネさんが言った。母親はそういうものである。
アマネさんがトイレに行っている隙に、ジュリちゃんがいたずらを始めた。アマネさんのコートを着て・・・
二人羽織でもするみたいに顔を埋めた。
首なし人間!(透明人間か) お客さんが入ってきたらびっくりして悲鳴を上げたかもしれない。
子どもの頃から眼鏡を掛けているのはお母さんゆずりである。ピアノのレッスンに励んでいる点も同じ。違うのはバレーのレッスンである。いま週2回だが、週5回でもいいくらい大好きだそうだ。
マダムに写真を撮っていただく。
アマネさんは、最近、6度目になる転職をされたそうだ。今度も金融系だ。面白そうな(もちろん待遇もいい)職場があれば、躊躇することなく転職をするとはいかにもアメリカ的である。一方、旦那さんは自身の転職には慎重で妻よりも日本人的なようである。アマネさんは私が早稲田大学で教え始めたころの教え子で、いまよりもむしろ海外志向(留学だけでなく海外で就職もする)の女学生が多かった印象がある。
「スリック」のマダムからショボン玉をいただいた。
思った以上に上手に吹けて驚くジュリさん。
もう少し時間があるようなので、私の近所の専門学校のキャンパスに行ってみる。
ここでシャボン玉の続き。
広い空間で体を思い切り動かしたくなったようである。
一周100メートルくらいのサークルで彼女とまた駆けっこをした。それも2回も。私の方も走り方のカンを取り戻して、足がもつれることもなく、いい感じのストライドで走れたが、僅差で敗れた。大喜びのジュリちゃん。
二人を蒲田駅の改札で見送り、帰宅。疲れてソファーに体を沈めたら、夕方に薬をもらいに耳鼻科に行くのを忘れてしまった。
「お疲れのようですね」と飼い猫のはるに心配される。「ああ、女の子の相手は大変だよ」
夕食は麻婆豆腐、
チンゲン菜と玉子の炒め、
サラダ、味噌汁、ご飯。
1時半、就寝。