フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月31日(月) 雨のち晴れ

2008-03-31 23:59:39 | Weblog
  娘の卒業祝いと母の誕生祝を兼ねて、日本橋の「櫻川」(懐石料理)にお昼の食事に出かける。個室を予約していったのだが、床の間のある和室にテーブルと椅子があって、BGMはクラシック音楽。これで地球儀でも置かれていたら、完全に南蛮貿易の商人の家の応接間である。運ばれてくる料理はどれも繊細で、山椒が薬味として多用されていた。ご飯が出るまでは量的に物足りなかったが、このご飯が葱と鮪と半熟卵、小エビのかき揚げ、ふかひれのあんかけの三種類からチョイスで、いずれもボリューム十分だった。その後にデザート(苺のゼリーの上にマンゴーのソースをかけたシャーベットがのっている)、最後に抹茶と桜餅(道明寺)が出て、お腹一杯になった。家を出るときに降っていた雨は、日本橋に着いた頃にあがり、食事を終えて店を出たときには青空が広がっていた。これで暖かければ、上野なり、千鳥が淵なり桜の名所へ足を延ばすところだが、いかんせん寒いので(冬に逆戻りしたみたいだ)、丸善の角を曲がって東京駅までブラブラ歩いて(途中の桜並木がきれいだった)、私がよく自分の買物をするオアゾビル地下の鞄屋「アウトパーツ」で仕事で使うバッグを買ってやった。娘はその足で中学時代の友人たちに会いに西船橋へ向かった。明日から会社勤めが始まるというのに、忙しいことである。交友関係が広いというのが娘の大きな特徴で、息子とは対照的である。

       
                 正面に見えるのは新大丸ビル

  蒲田に戻り、しかし、私はまっすぐ自宅には帰らずに、呑川の桜を見に行った。足の向くままよく歩くのが私の特徴である。青空を背景にして桜を見ておきたかったのだ。桜並木の下の道路にはだいぶ花びらが落ちている。今日明日で見納めだろう。

       

       
                 川面を背景にした桜もいい

3月30日(日) 曇りのち雨

2008-03-31 10:08:16 | Weblog
  9時、起床。朝食は昨夜の残りのポトフとトースト。午前中は大学院の演習の下準備。昼食は明太子と牛肉の大和煮の缶詰でお茶漬け。
  年末に通販で購入してそのままになっていたデスク(横幅120センチ×奥行き45センチ)を息子にアルバイト代を払って組立ててもらい、書斎のテーブル(横幅120センチ×奥行き70センチ)と入れ替える。このテーブルは以前は両親が食卓として使っていたもので、いまの家を建てるときに新しい食卓を購入したので不要になり、しかし、捨てるのはもったいないので、私の書斎に持ち込んでセカンドデスクとして使ってきたものである。私のデスクと向かい合う形に配置され、妻がインターネットをするためのノートパソコンの置場になっていた。しかし、ノートパソコンのためにはそれほどの奥行きは必要ではなく、書斎の空間をゆったりと使いたいので、奥行きの浅いデスクに替えたというわけである。テーブルはとりあえずガレージ(車はないがガレージはあるのだ)に運んだ。大ゴミとして処分するつもりだが、無垢材をつかったしっかりしたものなので、近所でほしい人がいれば(そういう人がいっぱいるはずだと母は言うが、はたしてそうだろうか)さしあげることにしよう。
  夕方、小雨の中、傘を差して散歩に出る。この程度の雨は散歩の妨げにはならない。いつもの蒲田駅方面ではなく、梅屋敷の商店街をめざして歩く。昨日と同じように今日も街の花の写真を撮った。傘を差しながらなので、カメラの操作は片手であるが、手振れ補正機能のおかげでなんとか撮れる。

       

       

       

       

       

       

       

       

  「琵琶湖」という喫茶店に入る。「テラス・ドルチェ」同様、昔ながらの喫茶店である。客は私一人で、注文をとりに来たご主人に「今日は寒いですね」と話しかけると、すぐにプロ野球の話になった。巨人が負けたらしい。開幕三連敗らしい。私はプロ野球にはまったく関心がないので、適当に相槌を打つ。かつて、他人同士が交わす会話のテーマとして、お天気のことと並んで、大相撲やプロ野球の話題が定番であった時代があった。「琵琶湖」ではそのセオリーがまだ健在のようである。ブレンドコーヒーを注文する。メニューに350円と書いてある。安い。シャノアールだって300円なのである。個人営業の喫茶店で350円は安い。酸味の強い、たぶんキリマンジェロ主体の、珈琲である。メニューにはナポリタンも載っている。珈琲とセットで700円台の設定はこれもまた安い。ここのナポリタンはけっこう評判で、一度食べてみたいと思っているのだが、今日は時間が時間だけに次の機会にしよう。私が店を出る頃には客は4組ほどに増えていた。そのうちの一人の客が主人と熱く巨人の敗戦について語っていた。

       

3月29日(土) 晴れたり曇ったり

2008-03-30 00:14:02 | Weblog
  午後、散歩に出る。春の散歩の楽しみは街のそこここに咲いている花々である。いまは桜が見頃を迎えているが、春に咲く花は桜だけではない。自宅を出て呑川沿いに本門寺まで歩く。街の花。花の街。

       

       

       

       

       

       

  桜以外の花の写真を並べたが、もちろん桜は美しい。それは富士山が美しいのと同じだ。誰もがそのことを知っている。けれど、桜の花は今日のような薄曇りの空が背景だと引き立たない。人出があるので、花見らしい雰囲気はあるが、気温はちょっと低めである。それでも、やはり桜は美しい。本日一番の桜は、池上会館前の一本桜だった。群から離れた場所で、形のいい枝を大きく張って、行き交う人たちを立ち止まらせていた。親子で、夫婦で、あるいは一人で、その桜の木の下にしばしたたずんで、「きれいだね」と言葉を交わし、あるい黙って見惚れる。「あらい」で磯部巻とさくらあんみつ(桜の花のエキスの入ったアイスクリームと寒天を使用)をいただく。池上線に乗って帰ってくる。

       
                      呑川の桜

       
                     本門寺の桜

       
                   池上会館前の一本桜

3月28日(金) 曇り、夕方に雹が降る

2008-03-29 10:18:11 | Weblog
  午後、外出するとき、玄関脇の桜の花を写真に撮る。母は熱海桜と言っていたが、それはローカルな名称であろう。赤味の強い桜だから、緋寒桜(彼岸桜と音が紛らわしいから寒緋桜ということもある)だろうか。

       

  「テラス・ドルチェ」で昼食。カレースパゲティと珈琲。カレースパゲティはこの店のオリジナルメニューらしく、カレーの粘度(やや強め)、小さくサイの目に切った牛肉、あらかじめトッピングされている福神漬など、スパゲティにからめて食べるカレーはどうあるべきかという探求の跡が感じられる。この店は禁煙とか分煙とかはない。どの席でも喫煙OKである。だからか、客には喫煙者が多いように見える。だんだん居場所のなくなってきた彼らにはオアシスのような場所かもしれない。私は煙草は吸わないが、そばで吸われていてもそれほど気にはならない。子供の頃、父親が家で煙草を吸っていたせいだろう。
  そのままジムへ。ウォーキング&ランニングを50分。いつもはフラットなコース設定にしているのだが、今日初めて「燃焼コース」という設定でやってみた。アップダウンのあるコースだと思っていたら、ダウンはなくて、傾斜の強弱があるだけで、ずっとアップなのであった。これはきつかった。見た目には傾斜があるようには見えないのだが、走っているとじわじわと足に来る。50分ずっと上り坂というのはちょっとした拷問である。正直、途中で止めたくなったが、いろいろな人の顔を思い浮かべて最後まで頑張った。まるで「走れメロス」みたいだ。
  ジムを出ようとするときに雹が降ってきた。目の前で大量の雹がアスファルトに衝突してパチパチと音を立てている様子は、ちょっと見物だった。ルノアールで1時間ほど文献のコピーに目を通す。

  ところで、春のTVドラマはいまのところ以下の4本を観るつもりでいる。

  「パンドラ」WOWOW 日曜10時(6日スタート)
  (脚本:井上由美子、主演:三上博)
  *WOWOW初の連ドラ。医療もの。

  「Around 40」TBS 金曜10時(11日スタート)
  (脚本:橋部敦子、主演:天海祐希)
  *40歳という節目の年齢(の直前)にいる女性が主人公。

  「猟奇的な彼女」TBS 日曜9時(20日スタート)
  (脚本:坂本裕二、主演:草剛・田中麗奈)
  *映画とは設定が全然違うように思えるが・・・。

  「CHANGE」 フジテレビ 月曜9時
  (主演:木村拓哉・深津絵里)
  *まだスタート日もわからない。大丈夫なのか?「薔薇のない花屋」が丁寧に作られていただけに不安が残る。

  これ以外には、上戸彩主演の「ホカベン」(日テレ 水曜10時)を観てみたいような気がする。コテコテの新人弁護士ものであることは予想できるが、ショートカットの上戸彩が、最近入社のタイミングに合わせて髪を切った娘とよく似ているので。

       

3月27日(木) 晴れ

2008-03-28 10:52:40 | Weblog
  7時半、起床。私にしては早起き。ベーコン&エッグ、トースト、オレンジジュースの朝食。論系の新主任ということで事務所から(あるいは前主任経由で)いろいろな問い合わせのメールが届く。3月31日までとか、4月4日までとか、回答の締め切りまでの時間が短いものばかりで、あわただしい。一つ悩ましいのは、受験生向けの大学体験ウェブサイトに論系紹介のコンテンツを作成しますか、どうしますか、という問い合わせ。6つの論系中、それをやっているのは文芸・ジャーナリズム論系だけである。これはちょっとかっこがつかないのではないだろうか。やるなら6論系全部をそろえるべきだろう。論系紹介ということであれば、基礎講義の第一回目のコンテンツ(私が論系の紹介をしている)をそのまま使うのが一番いいのだが、事務所に問い合わせたらそれはダメなのだそうだ。第一に、大学体験ウェブサイトの論系紹介は15分程度を期待されているが、基礎講義の一回目は40分ほどである。第二に、基礎講義はやはり新入生のためのものなので外部向けには使いたくないとのこと。要するに、15分版を新たに作成せよということである。う~ん、どうしようかな。作成するとなると、私がやることになるのだろうなあ・・・。回答期限は3月31日。
  午後、外出。東京都写真美術館で開催中の「シュルレアリスムと写真」展を観に行く。美術館に着いて、まずは1Fの「シャンブル・クレール」で昼食をとる。いつもの生ハムのオープンサンドとミルクティー(アールグレイ)。生ハムの塩味とミルクティーの甘味の相性がとてもよい。

       

  シュルレアリスムというと「難しい」「わけわかんない」という反応が多いと思う。しかし、シュルレアリスムの作品そのものは、本当は、そんなに難しいものではない。難しいのは、シュルレアリスムを論じる人たちの文章なのではないかと思う。それが作品を必要以上に難しいものに見せてしまっているのではないかと思う。今回の展覧会を見て改めてその思いを強くした。
  たとえばアジャの一連のパリの写真は、もしこれがシュルレアリスムの展覧会でなければ、誰もシュルレアリスムの作品として観ることはないだろう。それらは1900年前後の何の変哲もないパリの通りや建物の写真である。なぜ、それがシュルレアリスムの端緒として位置づけられているのかといえば、誰も気をとめて見ることのない風景=現実にカメラを向けたものであったからだ。何気ない日常。それは当時の感覚では写真に撮るようなものではなかった。デジタルカメラが普及した現在では、われわれは忘れてしまっているが、ちょっと前まで、やたらにパチパチ写真を撮ることは「フィルムがもったいない」「現像代がばかにならない」ということで抑制されていた。カメラを向ける対象、シャッターを押す瞬間というのは、かなり限定(自己統制)されていた。しかし何の変哲もない風景も写真に撮られることで、凝視の対象となる。そうするとそこに何かしらの発見がある。なんとなく見ていた風景、見過ごしていた風景の存在感が増大する。われわれが見ている現実は、深度の浅い現実であったことに気づかされる。シュルレアリスムというのは、現実を見ないで仮想の世界に遊ぶことではなく、浅い現実からより深い現実へ向かうことである。カメラというのはそのための道具として役に立つ。人間が自分の目で現実を見ているとき、そこには欲望や関心による遠近法が生じているが(関心のないものは目に入らない)、写真はそうした主観的遠近法をフラットに修正する作用がある。
  ふだんわれわれがあまり意識して見ていなものを凝視する(より深い現実へ)というシュルレアリスムの精神は、ありふれた物のありえない組み合わせという方法論につながっている。たとえばマン・レイは、解剖台の上にミシンと蝙蝠傘を置いてそれを写真に撮った。ミシンも蝙蝠傘もそれ単体では日常よく目にするありふれた物体だが、それが解剖台の上に並べて置かれることで、意表をつかれるというか、哲学的思惟を促されるというか、恐怖に震えるというか、あるいはクスリと笑ってしまうというか、とにかくわれわれの現実の深度のレベルがそこで突破されることは間違いない。このとき浅い現実を構成していた物たちは芸術作品を構成するオブジェに変身する。ありふれた物同士のありえない組み合わせのほかに、物をオブジェにする方法には、物の一部を切り取ったり、拡大したり、歪ませたりするという方法がある(カメラを使えばそれがやりやすい)。こうした方法を駆使した作品は、われわれがイメージしている「シュルレアリスム」の作品っぽくなっていくわけだが、肝心なことは、それらは浅い現実から深い現実へと向かおうとする精神の冒険だということである。「難しい」「わけわかんない」という感想は、浅い現実の水準(日常的水準)にとどまろうする怠惰な精神(ある意味、健康な精神ともいえるわけだけど)の抵抗の声である。
  3時半頃に美術館を出て、恵比寿→代々木→飯田橋とJRを乗り継いで、飯田橋ギンレイホールで『タロットカード殺人事件』を観る。ウィッディ・アレン風味のスパイスをたっぷり降りかけた「火曜サスペンス劇場」という感じの映画だった。

       
                 お財布ケータイ(盗作です)