フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

7月31日(月) 晴れ

2006-07-31 23:59:59 | Weblog
  午前10時に家を出る。今日はこれから立正大学心理学部の宮城まり子先生の研究室を訪問するのである。上着にネクタイを着用。しのぎやすい気候で助かった。宮城先生には新学部のブリッジ科目である「生活設計論」の担当をお願いしているので、一度ご挨拶に伺わなくてはと思っていたのである。途中、エキュート品川(品川駅構内のデパート)に立ち寄って「ダロワイヨ」のマカロンの詰め合わせを購入。「女性は洋菓子が好き」というのは偏見には違いないが、めったに外れない経験則である。大崎の駅で降りた(改札を出た)のはたぶん初めてである。立正大学は駅から徒歩7分のわかりやすい場所にあった。30分ほど早く着いてしまったので、すでに夏休みで休業中の校内のカフェのベンチで時間をつぶし、11時5分前に研究室のドアをノックする。名刺の交換をしながら、宮城先生が「初めまして」とおっしゃったので、「いえ、実はお会いするのは初めてではないのです」と私が言うと、先生は「えっ?」という顔をされた。もう20年以上前のことになるが、当時大学院生だった私は、日立製作所がスポンサーになっている小平記念会家庭教育研究所ということころの非常勤の研究員をやっていて、家族の寝方の調査などをやっていたのであるが、そのころ宮城先生も研究所にかかわっておられて、一度、お話をしたことがあるのだ。そのとき印象的だったことが2つあって、1つは、宮城まり子という名前が有名な女優さんと同姓同名であったこと。これは宮城先生から伺ったエピソードなのだが、講演会の依頼があって、当日会場に行ってみると、主催者側が女優の宮城まり子さんに依頼したつもりになっていたことがその場になってわかったなんていうこともあったそうだ。もう1つ、印象に残っているのは、大変に美しい方であったことである。今日、20数年ぶりにお会いしたわけだが、当時の印象と何ら変わるところがなかった。新学部のカリキュラムについて説明し、「生活設計論」の中身や、立正大学での先生ご自身のゼミの運営のやり方についてのお話を伺う。甘いものは大好きですと言っていただけたので、件の経験則は一層強化されることになった。
  蒲田に戻り、くまざわ書店で、鮎川信夫・大岡信・北川透編『戦後代表詩選』(思潮社)、関口篤訳編『シェイクスピア名詩名句100選』(思潮社)を購入し、「やぶ久」で昼食(天丼と冷やしきつねそばの定食)を取り、帰宅して昼寝。夜、「社会と文化」の採点終了。あと1科目。

7月30日(日) 晴れ

2006-07-31 01:12:42 | Weblog
  昨日と今日は大学のオープンキャンパス。文学部キャンパスでも、来年度立ち上がる文化構想学部と文学部の各論系・コースが受験生の個別相談のために出店をする。私は昨日は自宅で試験の採点だったが、今日は、午前中から現代人間論系の教室(32号館272教室)に陣取っていた。安藤先生、長田先生、増山先生も一緒である。それからお手伝いを依頼した大学院生のI君と学部生のAさん。教員1、助手、院生・学生2というスタッフ構成が多い中で、総勢6名のスタッフは大所帯といってよく、現代人間論系のやる気があらわれている。しかし、場所が悪かった。たくさんの論系・コースの出店が集中する31号館の3階・2階を表通りとすれば、32号館の2階は場末の裏通りである(われわれと、ドイツ語ドイツ文学コース、教育学コースの3店しかない)。とくに同じ文化構想学部の他の5つの論系が31号館の3階にまとまって出店しているのに、現代人間論系だけがポツンと離れた場所に置かれてしまったために、文化構想学部のある論系に関心があってやってきた受験生が別の論系の出店もついでに覗いてみるという余波効果を期待できないのは痛手であった。手持ち無沙汰の時間が長かったが、それでも人通りの少ない廊下に立って勧誘に勤めた結果、50名ほどの来客があり、丁寧な対応ができたとは自負している。とくにI君とAさんの前では受験生もリラックスするようで、腰を据えて話をしていた。なお、来場者数は、戸山キャンパス全体で、昨日が7,817名、今日が6,715名、合わせて14,532名。新学部効果で、昨年より約3,000名の増であった。

          
            有閑階級の理論について語るひととき

  オープンキャンパスは午後4時で終了。後片づけをして、帰り道、I君とAさんと3人で「ブラジリエ」でお茶とケーキを食べながらおしゃべり。Aさんは来春からキャビン・アテンダントとして働くことが決まっている。季節は夏だけれど(今日、東京は梅雨明けをした)、「行く秋の大和の国の薬師寺の塔の上なるひとひらの雲」を見上げているような、澄んだ笑顔が印象的だった。
  おっと、もう一つ忘れてはならないことがあった。今日、安藤先生から『院単』を頂戴した。今度、ナツメ社から出される本で、「大学院入試のための必須英単語1800」というサブタイトルが付いている。大学入試のための単語帳はたくさんあるが、大学院入試のための単語帳というものは本邦初ではないか。う~ん、もしかして画期的かも。

          
          「院単」は「インターン」の中国語訳にあらず

7月29日(土) 薄曇り

2006-07-30 02:45:36 | Weblog
  居間の食卓で昼食のドライカレーを食べながら、昨日、大学からの帰りに東京駅のホームのキオスクで購入した本多孝好『FINE DAYS』(祥伝社文庫)を読んでいたら、娘がそれを見て、「その本、買おうかどうしようか迷って、買わなかったやつだ」と言ったので、「単行本ならずっと前から書斎の本棚にあるよ」と答えると、息子が「本を買うときは先ずお父さんがもっていないかどうかを確認しないとね」と言った。それを聞いていた妻が、「本の置き場所に困っている人が、同じ本を単行本と文庫本で買うなんて」と呆れたような口調で言った。これについては私にも言い分があり、単行本の方は「日本の古本屋」のサイトで購入した著者サイン入りの初版本で、保存用。今度、ようやく文庫化されたので携帯用に購入したというわけだ。私がそう説明しても妻は依然として理解しかねるという顔をしていたが、子供たちは理解を示してくれたようだった。それと、これは口には出さなかったが、本多の作品は文庫版で読んだ方が作品の世界にスッと入っていけるような気がするのだ。『FINE DAYS』を読んでから、試験の採点作業に取りかかる(そんなもん読んでないでさっさと採点しろって声が都の西北方面から聞こえてきそうですが…)。夜、社会学基礎講義の試験の採点終わる。あと2科目。

7月28日(金) 薄曇り

2006-07-29 01:26:44 | Weblog
  午後3時から研究室で二文の卒論指導。T君、Tさん、Kさん、そして私がアドバイザーをしている3年生のKさんも特別参加。前期最後の報告にしては3人とも見通しがいまひとつ(人によっては「いまふたつ」)である。少々厳しくだめ出しをして、終わったのが午後7時半頃。それからみんなで焼き肉屋「ホドリ」に繰り出す。女子3人がタンやカルビを口に入れるたびに「おいし~」と合唱するので、なんだか、「ギブ・ミー・チョコレート」の時代の進駐軍兵士にでもなった気分だった。「さあ、どんどんお食べ」。
  午後10時、帰宅。メールをチェクすると、文学部の事務所から採点簿の提出の督促メールが届いていた。今日が提出の〆切だったのだ。忘れていたわけではなくて、試験の採点(450枚ほど)を合宿や会議や卒論指導の合間を縫って今日までに終わらせるというのは少々無理な注文なのだ。たぶんそれは事務所の方もわかっていて(ですよね?)、「8月2日(水)までに提出いたたけると幸いです」と文面も穏やかである。しかし、う~ん、8月2日なら大丈夫と思うが、「絶対か?」と言われると自信がない。これまでの経験では、8月2日に間に合わないと、今度はメールではなく、担当の方から直接電話がかかってくる。そして「はい! いま、やっているところです!」と臨場感溢れる返事をして、一日だけ猶予をいただいて、翌日になんとか提出と相成るのである。どうも今回もそういう展開になりそうな予感がする…。

7月27日(木) 晴れ

2006-07-28 11:12:34 | Weblog
  朝起きてメールのチェックをしていたら、「はじめまして」という件名のメールがあったので、てっきり風俗系のジャンクメール(毎日たくさん来るのだ)と思って削除しようとしたら、差出人の名前が男性名であることに気づき、削除ボタンを押すのを中止して開いてみたところ、フィールドノートの愛読者だという共同通信社のニューヨーク支局長のO氏からのメールだった。見知らぬ読者の方からメールを頂戴することはたまにあるのだが、半年ほど前に、やはり共同通信社のワシントン支局長のS氏からもメールを頂戴していたので、これは偶然なのか、それとも支局から支局へ回覧板でも回っているのか、いずれにしろ、東京の片隅で慎ましく暮らしている男の日常が地球規模のメディア・ネットワークの中でウォッチされていることに、これがインターネットというものかと改めて感嘆した。
  そんな感慨に耽っていると、机上に置かれた携帯電話のメール着信音が鳴って、卒論ゼミの学生の一人から「本日のゼミに遅刻します」という連絡が入った。「本日のゼミ?」と私は首をかしげた。ゼミは明日のはずである。そう思いつつ、念のために手帳を見て飛び上がった。今日なのである。一日勘違いしていたのだ。現在の時刻午前11時15分。ゼミは午後1時からなので、いまから支度をして自宅を出ればこれには十分間に合うのだが、ゼミの前に2つの用事、11時から学生の面談を一件、12時から後期の総合講座「現代人の精神構造」の打合せを入れていて、前者は完全にアウト、後者も大幅な遅刻が免れない。まいったな~、と思いつつ、いま研究室のドアの前で私を待っているであろう学生にとりあえず連絡して(携帯電話で連絡が取れることが不幸中の幸いであった)、事情を説明し、申し訳ないと謝ってから、大急ぎで身支度をして自宅を飛び出す。東京駅に着いたのが会合の約束の12時ちょうどだった。ホームから携帯電話で教員ロビーに連絡を入れ、そこで私を待っておられるはずのM先生を呼び出して貰う。30分ほど遅れますので、F先生とお話を進めていて下さいとお願いする。JR東京駅と地下鉄大手町駅の間はいささかの距離がある。遅刻の時間を少しでも短縮するにはここで頑張るしかない。道行く人々が「刑事ドラマのロケ?」と振り向くくらいの勢いで私は走った。気分は『太陽に吠えろ』のゴリさんであったが、端から見るとチョーさんだったかもしれない。
  会合を無事すませ、午後1時からの卒論ゼミに臨む。今日の報告者は5名。長丁場である。午後6時半からコンパの予約を入れているので、1人あたり1時間として、6時までに終わらさねばならない。Tさん、Dさん、H君、Wさん…と予定通りに進んだが、最後の報告者であるF君が来ない。欠席のメールも入っていない。ドタキャンか、あるいは私のようにゼミは明日だと勘違いしているのか。コンパの幹事のTさんに連絡を取ってもらったところ、案の定ドタキャンで、しかし、コンパには出ますとのこと。一体、何を考えているのか、このスラムダンク野郎は!(注:F君の卒論のテーマは漫画「スラムダンク」である)。コンパの会場は高田馬場の「井戸坊」というイタリアンのお店。コンパというとがさつな料理が出てくるところが多いが、ここは違った。前菜からデザートまでまっとうなイタリアン料理できちんと統一されていた。幹事のTさんは、身長1メートル70センチを越える長身で、剣道の達人、デートはサファリパークという一見体育会系の女性だが、味覚を含めて、繊細な神経の持ち主のようである。で、問題のF君はといえば、臆することなく私の隣に座り、正座を崩さず、「先生、料理をお取りします」とか言っていた。変な奴だが、憎めない男である。