フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

4月29日(水) 晴れ

2009-04-30 12:32:36 | Weblog
  8時、起床。炒飯の朝食。DVDの返却は大学に出る用事のある息子に頼む。
  今日、大学は祝日返上で授業が行われているはずだが(半期15回の授業を完遂するため!)、私は水曜日の授業はないので、今日からGW突入である。しかし、豚インフルエンザ騒動でいつものGWの雰囲気ではない。一夜にして警戒態勢が強化された感じだ。大学からも教職員・学生に「日本国内で感染者が確認された段階で、授業は休講とし必要最小限の人員を残して大学を立ち入り禁止とする予定です」とのメールが届いた。
  午後、散歩に出る。駅ビルのパン屋兼カフェで腹ごしらえ(菓子パンを2つと珈琲)をしてから、池上線に乗り、3つ目の千鳥町で降りる。ここで降りるのは初めてだ。改札口のあたりには付近の地図が掲示されていたので、それをデジカメで撮っておく(歩きつつ参照するため)。千鳥町は1丁目から3丁目まであり、1丁目は久が原と隣接する閑静な住宅街、線路を挟んで2丁目、3丁目は庶民的な住宅街である。妻の生家は3丁目にあった(いまはもうない)。

          

         
                  改札を出て、まずは1丁目方面へ

         
                大きな公園があった(千鳥いこい公園)

         
                   庭の草木も充実している

         
                     空地の上に広がる空

         
              広東ダックは皮だけでなく肉も食べるそうだ

         
         ウルトラマンとの闘いで傷ついた怪獣たちが収容されている

  線路を渡って千鳥2丁目、3丁目方面へ。ここは池上線と多摩川線に挟まれた土地で、少し歩くと、多摩川線の武蔵新田(むさしにった)の駅に出る。街の雰囲気がどんどん変化していくのが面白い。

         
            白いペンキのこじんまりとしたお宅。清楚な佇まい。

         
               環八沿いの肉屋さん。野生的な雰囲気。

         
          同じ肉屋さんを別の角度から。まだ「戦後」は終らない。

         
                   武蔵新田駅前の踏み切り

         
                      武蔵新田駅

         
              古本屋さん(池波正太郎『剣客商売』を購入)

         
               鰻屋さん(値段は庶民的ではありません)

         
                   金魚屋さん(和金は50円)

         
                      路地裏の猫たち

         
                      頭上の鯉のぼり

         
           新田神社(新田義興=新田義貞の次男を祀っている)

         
                  御神木のけやき(樹齢700年!)

         
                    今日の散歩の終点

  蒲田に戻り、「シャノアール」で『剣客商売』を読む。秋山小兵衛、大治郎の剣客親子が主人公。息子の大治郎は堅物だが、父親の小兵衛は女好き(しかしべら棒に腕は立つ)。この対照が面白い。食事の場面も上手。池波正太郎の作品はこれまでエッセーしか読んでこなかったが、時代ものこれからぼちぼち読んでみようかと思う。(駅前で娘の劇団の仲間と遭遇。大田区民センターの部屋を借りて7月の公演の稽古をしていたそうだ。娘は今日は会社の行事があって参加していなかった。K君が「小さな旅ですか?」と私に聞いた。はい、よくわかってらっしゃる。劇団「獣の仕業」のHPはこちら

         
                      不釣合いだろうか?

4月28日(火) 晴れ

2009-04-29 11:59:13 | Weblog
  9時、起床。ウィンナーソーセージ、トースト、紅茶の朝食。昼前に家を出る。
  3限は「現代人間論系総合講座1」。3回シリーズの私の担当の最終回。次回からの担当の安藤先生が前の方の席で聴講されていたのとで、ときどきアドリブで話を振る。安藤先生が答えに窮する質問もあったようで、「無茶振りするなぁ・・・」とぼやかれ、学生がクスクス笑う場面もあった。先日、私が担当している基礎演習のクラスで、オンデマンドの基礎講義で面白かったコンテンツについて尋ねたところ、漱石と「猫」の関係について論じていた安藤先生の講義が一番人気だった。今度、学生たちがインタビューに伺いますので、安藤先生、よろしくお願いしますね。講義の後、熱心な学生が質問に来て、教室の外で(次の先生の授業が始まるので)、しばらく相手をする。学生と話をすることは私にとっては何でもないことだが、学生にとってはそうではない。自分自身が学生の頃もそうだったはずだが、学生から教員へだらだらと移行する過程で、そういう感覚を忘れてしまった。緊張気味に、あふれ出る言葉を整理するのに四苦八苦しながら話す学生を目の前にすると、その忘れていた感覚が蘇る。
  遅い昼食を「メーヤウ」でとる。ここで注文するのはタイ風レッドカリーかインド風ポークカリーと決まっているが、今日は前者。ほどよい辛さと深い味わい。大根と牛蒡の食感もいい。

          

  5限は研究室で卒論指導。一文生2人、二文生2人の計4名。隔週で2人ずつ報告をしてもらう。今回は二文生のNさんとFさん。前期は各自のテーマに関連した文献のレビューが中心になるが、まずはレビューのやり方について指導する。全体の目次を示し、各章の要旨を紹介し、とくに興味深かった(自分のテーマとの関連性の強い)章については詳しく紹介し、ポイントとなる箇所、不明や疑問の箇所、文献に刺激されて自分で考えてみたことや調べてみたことについて話し、最後に、次に取り組む文献について予告する・・・という手順を踏むとよい。取り上げた文献が卒論を書き進めていくための養分としてしっかり消化・吸収されなくてはいけない。30分延長して6時半まで行う。帰りがけに教員ロビーに寄ったら西洋古典学の宮城先生がいらしたので、しばし雑談。
  夜、『トウキョウソナタ』と『イエスタデイズ』のDVDを観る(明日の午前10時までに返却しないとならないのだ)。『トウキョウソナタ』は評判どおり見応えのある作品だった。家族崩壊の瀬戸際までいった(いや、瀬戸際を半歩ほど越えていたかもしれない)一家が、最後の最後に踏みとどまって、新しい(やり直しの)歩みを始めるまでの物語。ラスト、音大付属の中学を受験する次男が試験会場で弾くピアノ曲「月の光」(ドビッシー)が実に印象的。「胸にしみる」というはこういうときに使う言葉だろう。『イエスタデイズ』は本多孝好の小説が原作。映像作品としては凡庸だが(TVの2時間ドラマでもいけそう)、ストーリーは楽しめた。癌で余命いくばくもない父親と不仲だった次男の和解の物語。父親の依頼を受けた次男が、父親が若いころに別れた恋人の行方を追いかけるうちに、若い頃の父親と彼の恋人に出会うというSFじみた展開なのだが、本多孝好の小説の読者にとっては驚くほどのことではない。音大のピアノ科の学生だった恋人を演じるのは原田夏希。美しい女優である。32年後、つまり現在の彼女を演じる女優が誰なのか、ハラハラしながら観ていたが、高橋恵子だった。納得。いいキャスティングである。クリームソーダが過去と現在をつなぐ重要なアイテムになっている点も、クリームソーダ好きとしてはたまらない(原作にはないエピソード)。「好きな人が好きなものを好きになったの」と原田夏希はクリームソードを飲みながら言った。「いい歳をした大人がクリームソーダなんておかしいでしょ。でも、好きなの」と高橋恵子は言った。そうか、そうか、と私はうなづいた。

4月27日(月) 晴れのち曇り

2009-04-28 10:25:53 | Weblog
  9時、起床。焼きハム、トースト、紅茶の朝食。天気はいいが、空気はひんやりしている。飼い猫のはるベランダに出たそうな顔をしているので、サッシを開けてやると、ひょいと出て、ベランダの日陰になっているところに落ち着いた。日向ぼっこをすればいいのにと思ったが、日向のタイルは表面がかなり熱くなっていた。これでは日向ぼっこは無理だ。ホットキャットになってしまう。

         

         
             この雲はキスをしているようには見えないだろうか

  授業の準備が一段落したらジムに行くつもりでいたが、なかなか一段落しない。結局、ジムはあきらめて、ずっと授業の準備。あんなにいいお天気だったのに、いつの間にか曇天になっている。気温も下がってきた。
  夜も授業の準備。月9ドラマ『婚カツ』の2回目は観なかった。録画もしなかったので、見切ることになる。
  それにしても豚インフルエンザ問題は不気味である。WHOの示す「警戒水準」は短期間で連続して引き上げられ、各国で報告されている感染者数や死亡者数は、爆発的ではないものの、増加の一途をたどっている。その一方で、成田空港での感染者のチェック体制はひどく頼りない感じがする。「熱っぽい人いませんか?」なんだか小学校のホームルームみたいだ。豚インフルエンザそのものの危険性がどの程度のものなのかもよくわからない。感染率が高いことと致死率が高いことは別のはずだが、いまの時点では、両者を区別する情報が伝わってこない。鳥インフルエンザ問題はこれまでしばしば話題になっていたが、豚インフルエンザ問題は突如浮上した。少なくともわれわれの感覚ではそうだ。しかし、一般人の感覚だけでなく、政府や専門家たちももしかしたらそうなんじゃないかという頼りなさがある。その頼りなさが不安に拍車をかけている。金融危機と豚インフルエンザ、グローバリゼーションの負の教材をわれわれは立て続けに学習している。       

4月26日(日) 晴れ

2009-04-27 03:01:15 | Weblog
  10時、起床。昨夜の残りのヒレカツとご飯の朝食。今日は昨日とはうってかわって暖かい。
  昼食はテイクアウトの鮨。一服してから散歩に出る。池上線に乗って、本を読みながら、どの駅で下車しようかと考えて、一度も降りた記憶のない石川台で降りる。同じ東急線でも目蒲線(現在は多摩川線+目黒線)は、沿線の高校に通っていた関係もあって、一度も降りたことのない駅というのはないはずだが、池上線についてはそういう駅がいくつかある。石川台駅は、名前の通り、起伏のある土地にある駅である。駅舎を出て、線路沿いの坂道を登り、線路の上の橋を渡る。

         
                 自転車に乗ったままでは登れない

         
              自転車に乗って下るときは気持ちがよかろう

         
         この坂道はTVドラマやCMのロケでときどき使われるらしい

         
                JRの大井町駅の付近もこんな感じだ

  比較的身近な、しかし、降りたことのない駅で降りてみるというのは、ささやかだが心躍るものがある。片道150円の小さな旅である。蒲田という街に生まれたのは偶然である。池上線で一つ隣の蓮沼に生まれていたら、二つ隣の池上に生まれていたら、三つ隣の千鳥町に生まれていたら・・・、私は蓮沼的人生、池上的人生、千鳥町的人生をそれぞれ生きることになったはずである。ちなみに妻は私よりも5年遅れて千鳥町に生まれた。蒲田的人生と千鳥町的人生が初めて遭遇するのは、それから16年後、目蒲線(当時)の武蔵小山にある都立小山台高校の体育館においてであるが、そのときはまさかこんなことになるとは思ってもいなかった。本当に人生とは東急線である(はぁ?)。二人が最初に住んだアパートも東横線の綱島にあった。
  知らない街を歩くときは、商店街を基軸としてその周辺を歩くというのが初歩的なセオリーである。商店街は外来者にも開かれているし、道に迷う心配もない。石川台には「石川台駅前商店街」と「希望が丘商店街」の2つの商店街があるが、前者はシャッターの下りている店舗が多く、後者の方が賑わいがある。

         

         

  駅前商店街には古本屋があったが、残念ながら今日は休業だった。初めての街で古本屋を見つけると挨拶代わりに何か購入することにしているのだが、休業ではしかたがない。

         

  希望が丘商店街を歩いていた足元から木が生えている店があった。まるでトナカイの角のように見える。

         

         

  それにしても今日は暖かい。というか、暑い。初夏の気候である。昨日との寒暖の差は一体どのくらいあるのだろう。喫茶店に入ってコーラフロートを注文した。けっこうお客が入っている店だったが、びっくりするくらい不味かった。コカコーラでもペプシコーラでもない、飲んだことのないメーカーのコーラで、ひどい味だった。そしてアイス(ハード)は脱脂粉乳で作ったような味もそっけもない代物だった(もしかしてどちらもノンカロリーで、ここはそういうのをコンセプトにしている店なのか?)。これなら自動販売機のコーラを公園で飲んだほうがよかったが、椅子とテーブルをレンタルしたと思って、そこで30分ほど読書。蒲田に戻ってから、口直しに「イタリアントマト」のカフェでイタリアンドッグと珈琲を注文して、1時間ほど読書してから、ツタヤで以下のDVDをレンタルして、帰宅。

  『トウキョウソナタ』
  『パコと魔法の絵本』
  『イエスタデイズ』
  『社長太平記』
  『若者の旗』

4月25日(土) 雨

2009-04-26 10:47:27 | Weblog
  お昼近くまで寝ている。就寝時刻が遅かったわけではない。12時をちょっと回った頃だったから、むしろ普段より早かったくらいだ。1週間の疲れが溜まっていたのだと思う。新学期がスタートしたばかりということで、どの授業も、方向性というか学生との間合いが定まる前の、手探りでやっているところがある時期で、普段よりもエネルギーを消耗する。たぶん学生の目にはそんなに苦労しているようには見えないと思うが、教員ロビーで他の先生と顔を合わせては、挨拶代わりのように「いや~、疲れますね」と言っていたのである。
  今日は雨。雨は写真に撮り難い。空を撮っても曇り日のようにしか見えない。傘を差す人とか、水溜りとかで、雨の日であることを表現するしかない。玄関先にたたずんで雨の音を聴く。雨の音も写真には撮れない。朝食兼昼食はインスタントラーメン。雨が降っているだけなら傘を差して外に食べに出たかもしれないが、なにしろ寒い。2月中旬の寒さだという。寒いはずだ。久しぶりで床暖房を入れて、自宅に篭っていた。
  録画しておいた『BOSS』と『スマイル』の2回目を観る。『BOSS』は初回は面白いと思ったが、2回目にして早くも面白くなくなった。「特別犯罪捜査室」のメンバーたちのキャラが立ちすぎていて、キャラ頼みの展開になってしまっていて、人間ドラマとしての面白みが感じられないのだ(初回は武田鉄也演じる犯人に人間味があった)。一方、『スマイル』は新垣結衣の頑張り(失語症の女の子の役なので表情と仕草だけで演技している)と、『風のガーデン』に続く中井貴一の好演で、いいドラマに仕上がっている。それから、これは誰も話題にしないけれど、『ゴッドハンド輝(てる)』は土曜8時台に居間のソファーでリラックスした気分で観るにはちょうどいいエンターテーメントである。患者が死なない(主人公の神がかり的な手術テクニックで必ず助かる)というのがいい。
  夜、来週前半(後半は休講)の授業の下準備。併せて授業のBBSへの書き込みのチェック。「現代人間論系総合講座1」と「日常生活の社会学」は、今年度は、教室配布の出席カードではなくBBSへの書き込み(授業の感想)によって出欠チェックをすることにしている。出席カードのときも裏面に感想を書いてくる学生はいたが、せいぜい全体の1、2割程度であったから、BBSにすることで全体の反応がわかって参考になる。学生が他の学生の感想を読むことができるというのも意味があるだろう。ただし私の仕事は増える。「質問」があった場合には「回答」を返さないとならないからだ。どうも回を追うごとに「質問」が増えているような気がする。いや、気のせいではなく、間違いなく増えている。これは質問をすると回答が返って来るということに学生たちが気づいてしまった(笑)からであろう。質問には2種類のタイプがあり、1つは本当の質問というか、講義を聴いていて不明なところ疑問のところを聞いてくるというもの。もう1つは、質問-回答という相互作用、コミュニケーション自体を目的としている(と思える)もの。たといえば、昨日の「日常生活の社会学」(第3回)ではジェンダーの話をしたのだが、その中で、トイレの入り口のパネルの色と形を話題にして、もし「赤いズボンの人形」と「青いスカートの人形」が表示されていたら皆さんはどちらの入り口から入りますかという質問をした。これは青=男、赤=女という色彩コードと、ズボン=男、スカート=服装コードが混線した事態を想定して、そのことから生じる戸惑い(どっちが男性トイレでどっちが女性トイレなんだ?)に焦点を当てて、われわれの日常の些細な行動がいかに暗黙の規則に支配されているかを説明したわけである。で、ある学生がBBSにこんな質問を書き込んできた。

  「大久保教授は、(1)赤いズボンの入り口から入る、(2)青いスカートの入り口から入る、(3)その場でしてしまう(決断ができずに)のどれを選びますか?」

  これは私が学生にした質問と同じものである。この「大久保教授は」=「先生の場合は」というフレーズは、コミュニケーションを目的とした質問に典型的なフレーズである。ちなみに学生の回答は服装コードを優先したものが圧倒的に多かったが、おそらく実際の場面(そういう場面はめったにないであろうが)では色彩コードに従う人もけっこう多いのではないかと思う。学生にした質問が自分に返って来るというのはしばしばあることで、こういう場合は、素直に答えるか、ひねって答えるか、二通りあるわけだが、コミュニケーションを目的としている(と思える)質問にはひねって答えた方が、相手の目的にかなっている。なので、こう回答した。

  「もちろんその場ですませます。「早稲田大学教授、女子トイレに侵入」と「早稲田大学教授、トイレ目前で失禁」では、社会的な致命傷となる可能性は前者の方が高いからです」

  今後、BBSでの質問は増えていくであろうと予想されるが、その中に占めるコミュニケーション的質問の割合も増えていくであろう。授業にはこうした遊びも必要であるが、問題は、「日常生活の社会学」の受講生は300名ほどいるということである。キャッチボールは面白いが、仮に300名から一斉にボールを投げられたらキャッチすることはできない。お手上げである。できるだけ頑張りますけどね、キャッチャー・イン・ザ・BBS。