陸海軍けんか列伝

日本帝国陸海軍軍人のけんか人物伝。

643.山本権兵衛海軍大将(23)海軍の将来を考えた場合、淘汰する必要があると認めた者は断じて整理した

2018年07月20日 | 山本権兵衛海軍大将
 丁度そんな時に、行政整理が始まった。海軍としても、山本大佐の成案に基づいて、思い切った改革を断行することにした。

 海軍における改革案件は、明治二十六年五月から十二月にかけて逐次公布実施されたが、その中でも特記すべきは、海軍軍令部条例の制定であった。

 当時、参謀事項は、陸軍ではすでに陸軍参謀本部という独立機関になっていたが、海軍では海軍参謀部の名で、海軍大臣の下にあった。

 つまり、海軍大臣は、各省官制に掲げる所管事項のほかに、いわゆる参謀官の職務をも担当していた。

 それが、今回、海軍軍令部条例の制定によって改められ、海軍参謀機関は本省と離れて、海軍軍令部という名のもとに、陸軍参謀本部と同様、独立部門となった。

 また、予算の削減で、どうしても人員を大幅に減らさねばならなかったが、現役を退かされたものは、将官八名、佐官・尉官八十九名という、これまでにない多数となった。

 海軍省主事(明治二十六年に官房主事は廃され海軍省主事となった)である山本大佐は、海軍諸制度の改革にともない、人事行政も刷新することを考慮していたので、その淘汰すべき人員を調査して、名簿を作製、西郷海軍大臣に提出した。

 この調査は、山本大佐は公平無私の態度で終始した。たとえ、同郷出身の先輩で維新当時から勲功を積み将官に地位に在る者でも、あるいは、自分と親しく交わっていた者でも、海軍の将来を考えた場合、淘汰する必要があると認めた者は断じて整理した。

 自分に反対して悪口を放つ者であっても、将来国家有用の材であると認めた時は、かえってこれを推薦した。

 例えば、この機会に用いられ、後に宰相、将軍となった次の人々は、山本大佐とはまったく他郷の人々だった。

 斎藤実(さいとう・まこと)大将(岩手・海軍兵学寮六期・三番・少佐・侍従武官・中佐・大佐・防護巡洋艦「秋津洲」艦長・海軍次官・少将・臨時海軍建築部長・中将・艦政本部長・海軍大臣・大将・予備役・朝鮮総督・ジュネーヴ海軍軍縮会議全権・枢密顧問官・朝鮮総督・内閣総理大臣・文部大臣・日本ボーイスカウト連盟総長・内大臣・二二六事件で暗殺される・子爵・従一位・大勲位菊花大綬章・ロシア帝国白鷲勲章・イギリス帝国バス勲章グランドクロスなど多数)。

 出羽重遠(でわ・しげとお)大将(福島・戊辰戦争で白虎隊・海軍兵学寮五期・六番・少佐・巡洋艦「高雄」副長・海軍省第一局第一課長・海軍省大臣官房人事課長・砲艦「赤城」艦長・通報艦「龍田」艦長・英国出張・警備艦隊参謀長心得・大佐・西海艦隊参謀長・海軍省軍務局第一課長・海軍省軍務局軍事課長・装甲巡洋艦「常磐」艦長・少将・常備艦隊司令官・横須賀鎮守府艦政部長・海軍省軍務局長・軍令部次長・常備艦隊司令官・第一艦隊司令官・中将・第四艦隊司令長官・第二艦隊司令長官・海軍教育本部長・第二艦隊司令長官・佐世保鎮守府司令長官・第一艦隊司令長官・大将・シーメンス事件査問委員長・男爵・正二位・旭日桐花大綬章・ロシア帝国神聖スタニスラス第一等勲章等)。

 岡田啓介(おかだ・けいすけ)大将(福井・海兵一五・七番・海大二・中佐・海軍水雷学校教官・大佐・海軍水雷学校校長・装甲巡洋艦「春日」艦長・戦艦「鹿島」艦長・少将・海軍省人事局長・中将・艦政本部長・海軍次官・大将・連合艦隊司令長官・横須賀鎮守府司令長官・海軍大臣・後備役・内閣総理大臣・従三位・旭日菊花大綬章・功三級・フランス共和国レジオンドヌール勲章グラントフィシェ等)。

 名和又八郎(なわ・またはちろう)大将(福井・海兵一〇・一七番・少佐・コルベット「金剛」分隊長・中佐・コルベット「金剛」副長・海軍省副官・海軍大臣秘書官・舞鶴鎮守府参謀・大佐・海軍省人事局第二課長・海軍省人事局第一課長・装甲巡洋艦「出雲」艦長・防護巡洋艦「厳島」艦長・軍令部第四班長・少将・呉鎮守府参謀長・第三艦隊司令官・中将・海軍教育本部長・第二艦隊司令長官・舞鶴鎮守府司令長官・横須賀鎮守府司令長官・大将・従二位・勲一等旭日大綬章・功四級)。

 佐藤鉄太郎(さとう・てつたろう)中将(山形・海兵一四・五番・少佐・在英国日本公使館附駐在武官・在米国日本公使館附駐在武官・海軍大学校教官・通報艦「宮古」副長・中佐・防護巡洋艦「厳島」副長・装甲巡洋艦「出雲」副長・常備艦隊参謀・第二艦隊参謀・戦艦「朝日」副長・通報艦「龍田」艦長・海軍大学校選科学生・海軍大学校教官・大佐・防護巡洋艦「宗谷」艦長・装甲巡洋艦「阿蘇」艦長・海軍大学校教官・海軍大学校教頭・少将・海軍省軍令部第一班長兼海軍大学校教官・海軍省軍令部次長・中将・舞鶴鎮守府司令長官・予備役・学習院教授・勅選貴族院議員・正三位・勲一等瑞宝章・功三級)。

 上泉徳弥(かみいずみ・とくや)中将(山形・海兵一二・一三番・海大将校科一・少佐・装甲艦「鎮遠」水雷長・巡洋艦「八重山」副長・戦艦「敷島」水雷長・防護巡洋艦「秋津洲」副長・中佐・装甲巡洋艦「千代田」副長・佐世保海兵団副長・竹要第二水雷敷設隊司令・防護巡洋艦「高砂」副長・軍令部副官・軍令部参謀・大佐・防護巡洋艦「浪速」艦長・装甲巡洋艦「吾妻」艦長・巡洋戦艦「生駒」艦長・戦艦「薩摩」艦長・少将・大湊要港部司令官・鎮海防備隊司令官・横須賀水雷団長・横須賀水雷隊司令官・第一艦隊司令官・佐世保水雷隊司令官・中将・予備役・国風会会長・従四位・勲四等旭日小綬章・功四級・シャム国王冠三等勲章)。