船内には、清国陸軍兵と大砲、その他、多数の兵器を載せていた。清兵は、人見大尉の一行を見ると、いかにも憎々しげに、ある者は危害を加えようとさえしたが、「浪速」の巨眼が光っているので、人見大尉の取り調べに対して抵抗はしなかった。
人見大尉は、最初に、商船船長のガルス・ウオルスェーに面会した。人見大尉は流暢な英語で次のような尋問を行なった。
人見大尉「自分は日本帝国の軍艦「浪速」乗組みの大尉、人見善五郎というものであるが、艦長の命令により、本船を検察のために来た。自分の質問には明瞭に答えてもらいたい」。
ウオルスェー船長「何故に日本の軍艦が、本船の進航を止め、このような検察の手続きを執るのか」。
人見大尉「船長は、今、日本と支那の間に、戦闘が開始されたことを、御承知であろう」。
ウオルスェー船長「知っています。しかし、両国のいずれからも、宣戦の布告が、出たことを知りません」。
人見大尉「しかし、現に戦闘が開始されたという事実は、見たでしょう」。
ウオルスェー船長「それは見ました」。
人見大尉「然らば、宣戦の布告を見た、と、同一である」。
ウオルスェー船長「判りました」。
人見大尉は、船長に命令して、まず、船籍書を検閲した。それにより、本船はロンドンの印度支那汽船会社の代理店・ジャーディン・マディソン商会の所有船「高陞号(こうしょうごう)」と分かった。
調べてみると、その船は英国の商船旗こそ掲げているが、明らかに清国軍の輸送船として活動していることが判明した。
さらに、人見大尉は、詳細な尋問を、ウオルスェー船長に行った。
人見大尉「どこから清国兵を載せて、どこに行こうとしているのですか」。
ウオルスェー船長「大沽(たいこ)からです。牙山(がざん)へ行く船です」。
人見大尉「清国政府とはどのような関係があるのですか」。
ウオルスェー船長「雇われたものです」。
人見大尉「乗船している清兵は何名いますか」。
ウオルスェー船長「将校と兵卒と全部で一千百名です」。
人見大尉「大砲などの兵器の数量を言いなさい。正確に言いなさい」。
ウオルスェー船長「大砲十四門。小銃二千挺です。この通り決して間違いありません」(船長は帳簿を示した。数字は一致していた)。
人見大尉「当然、弾薬もあるでしょう」。
ウオルスェー船長「あります」。
人見大尉「然る以上は、戦時禁制品を積載しているので、この船を、差し押さえます」(厳然たる態度で言った)。
ウオルスェー船長「えッ、差し押さえるのですか。本船はイギリスの商船ですよ」。
人見大尉「それは、よく判っています」。
ウオルスェー船長「私は、どうすればよろしいのか」。
人見大尉「わが日本帝国の軍艦『浪速』に随行することを命じます」。
それを聞くと、まわりの清兵たちが、騒ぎ出した。人見大尉は、そんなことに無頓着に、船長に答えを促した。
ウオルスェー船長「それでは、私は、乗っている人に相談しますから、少しの間、待ってください」。
人見大尉「それは、相成りません」。
人見大尉は、最初に、商船船長のガルス・ウオルスェーに面会した。人見大尉は流暢な英語で次のような尋問を行なった。
人見大尉「自分は日本帝国の軍艦「浪速」乗組みの大尉、人見善五郎というものであるが、艦長の命令により、本船を検察のために来た。自分の質問には明瞭に答えてもらいたい」。
ウオルスェー船長「何故に日本の軍艦が、本船の進航を止め、このような検察の手続きを執るのか」。
人見大尉「船長は、今、日本と支那の間に、戦闘が開始されたことを、御承知であろう」。
ウオルスェー船長「知っています。しかし、両国のいずれからも、宣戦の布告が、出たことを知りません」。
人見大尉「しかし、現に戦闘が開始されたという事実は、見たでしょう」。
ウオルスェー船長「それは見ました」。
人見大尉「然らば、宣戦の布告を見た、と、同一である」。
ウオルスェー船長「判りました」。
人見大尉は、船長に命令して、まず、船籍書を検閲した。それにより、本船はロンドンの印度支那汽船会社の代理店・ジャーディン・マディソン商会の所有船「高陞号(こうしょうごう)」と分かった。
調べてみると、その船は英国の商船旗こそ掲げているが、明らかに清国軍の輸送船として活動していることが判明した。
さらに、人見大尉は、詳細な尋問を、ウオルスェー船長に行った。
人見大尉「どこから清国兵を載せて、どこに行こうとしているのですか」。
ウオルスェー船長「大沽(たいこ)からです。牙山(がざん)へ行く船です」。
人見大尉「清国政府とはどのような関係があるのですか」。
ウオルスェー船長「雇われたものです」。
人見大尉「乗船している清兵は何名いますか」。
ウオルスェー船長「将校と兵卒と全部で一千百名です」。
人見大尉「大砲などの兵器の数量を言いなさい。正確に言いなさい」。
ウオルスェー船長「大砲十四門。小銃二千挺です。この通り決して間違いありません」(船長は帳簿を示した。数字は一致していた)。
人見大尉「当然、弾薬もあるでしょう」。
ウオルスェー船長「あります」。
人見大尉「然る以上は、戦時禁制品を積載しているので、この船を、差し押さえます」(厳然たる態度で言った)。
ウオルスェー船長「えッ、差し押さえるのですか。本船はイギリスの商船ですよ」。
人見大尉「それは、よく判っています」。
ウオルスェー船長「私は、どうすればよろしいのか」。
人見大尉「わが日本帝国の軍艦『浪速』に随行することを命じます」。
それを聞くと、まわりの清兵たちが、騒ぎ出した。人見大尉は、そんなことに無頓着に、船長に答えを促した。
ウオルスェー船長「それでは、私は、乗っている人に相談しますから、少しの間、待ってください」。
人見大尉「それは、相成りません」。