花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「猫文様」について

2013-12-04 | 文様について

presented by hanamura ginza


はやいもので、今年も残すところわずかになりました。

年の瀬に向けて、少しずつ寒さが増してきていますが、
その寒さを吹き飛ばすように、
街のあちこちではクリスマスのイルミネーションがきらきらと輝き、
道行く人々の目を楽しませています。

さて、ただいま花邑 銀座店では、
お出かけの多い年末年始に向けて、
かわいらしい生きものたちが
意匠のモチーフとなった帯を数多く集めた
「動物の帯展」を開催しています。
街のディスプレイの煌きにも負けないような、
魅力的な動物たちがあらわされた帯を多数取り揃えております。

今回は、その「動物の帯展」でご紹介している帯の意匠のなかから、
「猫」の文様についてお話ししましょう。

猫は、昔から人間の近くに住み、親しまれてきた動物です。
ペットとして家で飼われている方も多く、
猫好きが集うと「うちの猫が世界一」とばかりに、
話題がつきないものですね。

放し飼いされた猫や、野良猫を外でみる機会も多いですね。
見知らぬ土地を歩いているときに、
そこに住んでいる猫に会うと、
侵入者である自分の様子をうかがわれているような気持ちにもなります。

また、小春日和に日なたで猫がまるまって寝ている姿をみると、
とてものどかで牧歌的な光景に思えます。
眠っている猫といえば、
日光東照宮にある「眠り猫」の彫刻も有名ですね。
ちなみに、猫という言葉そのものは「寝子」からきたともいわれています。

猫と人間の関わりは遥か昔からあったようで、
人間の身近に住みはじめたのは、9500 年も前の頃のようです。

当初は、穀物を食べてしまう鼠を退治してくれる動物として
飼われていたようですが、
人間の遺体の近くに猫の遺体が埋められた遺跡も発掘されていて、
その当時から愛情をもって飼われていたことがうかがえます。

また、古代エジプトでは、
ライオンの変わりとして神様のように崇められ、
飼い猫が亡くなるとミイラにして神殿に葬られました。

日本において、猫が飼われはじめたのは、
奈良時代の頃とされています。
貴重な経典などの書物を鼠が食べないように、飼われるようになったそうです。

やがて、平安時代になると、貴族たちの間で
猫をペットとして飼うようになりました。

当時書かれた宇多天皇の日記には、
父親から譲られた黒猫を可愛がる様子が記され、
「枕草子」や「源氏物語」にも猫が端役として登場します。
その当時、猫はひもに繋がれて飼われていたようで、
源氏物語では、その様子があらわされています。



上の写真は
後ろ姿の猫が配された型染めの縮緬からお仕立て替えした名古屋帯です。
猫の特徴のひとつであるさまざまな毛紋様があらわされた意匠からは、
作り手の遊び心が伝わってきます。
一匹だけこちらを向いて微笑んでいる猫の表情もかわいらしいですね。


猫がこのような意匠のモチーフとなったのは、
江戸時代の頃です。

庶民にも猫を飼う習慣が広まり、
現代のように放し飼いされる猫が増えていきました。

当時人気を博した浮世絵師、歌川国芳は、
猫を擬人化してあらわしたものや、
猫で言葉をあらわしたものなど、
猫が登場する作品を多く残しました。

歌川国芳は、大の猫好きだったことでも有名ですが、
庶民の間でもこうした猫好きが増え、
小袖の意匠や、器の意匠などのモチーフとしても用いられました。

また、養蚕農家では蚕を食べてしまう鼠を退治してくれるとされ、
猫の絵がお守りとして飾られたようです。
このお守りがのちに「招き猫」となり、
商売繁盛の縁起物ともされました。

その一方で、猫には霊的な力があるとも考えられ、
当時つくられた怪談などには「化け猫」が多く登場しました。

また、どこかずる賢いようなイメージがあったようで、
「猫を被る」や「猫撫で声」などの悪いたとえに使われ、
遊興で働く女性のことを「猫」とも言ったようです。
そのためか、身近な動物だったわりには、
猫を意匠に取り入れたものは数が少なく、
比較的めずらしいともいえます。

それでも、そういったずる賢いような部分に人間味も感じられるようで、
夏目漱石の「我が輩は猫である」をはじめ、
俳句や文学には猫を擬人化して書いたものが多くあり、
頭が回るわりにはおっちょこちょいともいえる
愛すべき猫の様子があらわされています。

鼻先に飯粒つけて猫の恋  -小林一茶-


上の写真の「猫文様 型染め 名古屋帯 」は花邑 銀座店でご紹介中の商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 12 月 12 日(木)予定です。
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