presented by hanamura
ただいま、花邑では「南国の花薫る紅型の帯展」を開催しています。
その企画展にちなんで、
前回にひきつづき、今回も紅型についてのお話をします。
「紅型」というのはよく誤解されがちなのですが、
文様やかたちではなく、技法の1つです。
「紅型」という名前は、
その技法によっていったいどのようなものがつくられるか
ということ自体を表しています。
かつて紅型の発祥地である沖縄では、
「紅」とは「(すべての)色」を示していました。
そして、型染めのことを「型」と呼んでいました。
つまり、「彩色を施した型染め」という意味で、
紅型は「彩色を施した型染め」のための技法になります。
紅型の「色」の原料には顔料を用います。
顔料とは、岩石などの鉱物からなる染料です。
この染料は他の染料とは違って、微粉末のもので、水に溶けません。
そのため、布に色が染み込まず、
色がそのまま布の上に定着するため、
鮮やかな色をそのまま表現することができるのです。
下の写真は布の表地と裏地を写したものです。
表地は鮮やかに染まっていますが、
裏地をみると、その色が全く染み込んでいないのが
わかりますよね。
表地
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/0b/144a710c45509b744e83f92701333793.jpg)
裏地
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/0f/4f7b104aeaa1106148b0b694e939a5e5.jpg)
この顔料を用いて、色差し(※1)を2度行い、「隈取り」をします。
「隈取り」とは文様の中央や縁に濃い色を入れて、
その色をぼかしながら、染めることです。
こうすることで、色彩に陰影が生まれ、文様が引き立ちます。
また、文様をつくる「型」にも、
他の染織品にはない特長があります。
紅型の型紙を彫ることを「突き彫り」と呼びます。
「突き彫り」とは、小刀を用いて、突くように彫っていくことです。
つまり、小さな点の集まりで文様を彫っていくのです。
独自の技法でつくられる「紅型」は、
人々を魅了してきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/68/e394769620f153aa34f9375aa007067d.jpg)
芹沢けいすけ氏は、その紅型に魅了され、
「型絵染」という技法を生み人間国宝に指定されました。
さらに紅型は本州に渡り、京都や東京の文化と融合して
俗に言う「京紅型」や「東京紅型」が生まれました。
よく、「琉球紅型と京紅型や東京紅型の違いはなんですか?」
と聞かれることが多いのですが、
「現在では区別できなくなっているんですよ」
と花邑ではお答えしています。
確かに以前では京紅型には京都の風情が反映された、
やや“はんなり”とした色合いのものが多く見られたりして
色彩や柄行きなどから区別したこともあったのですが、
実際、紅型というのはあくまで「技法」を指すため、
その違いに線引きすることにはあまり意味がありません。
沖縄で紅型の技法を習得した職人さんは、
現在では各地に拡散しています。
たとえば、沖縄仕込みの紅型によって
静岡で製作をされている作家さんもいらっしゃいますが、
これを「静岡紅型」と呼ぶことはありません。
あくまで紅型は紅型なのです。
人々を魅了しつづける紅型は、
これからも各地で新しい文化を吸収しながら、
さまざまなものがつくられていくことでしょう。
花邑もいろいろな紅型との出会いを
いつも楽しみにしています。
(※1)文様を染めること。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は3月17日(火)予定です。
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