presented by hanamura
桜の開花宣言がだされてからも
まだ肌寒い日がつづいていますね。
でも、その寒さのおかげで少しずつ咲いていく桜の花を
ゆっくりと楽しめそうです。
これからの季節は桜だけではなく、
さまざまな花が開花します。
先週の「花邑の帯あそび」でも登場した牡丹の花も、
これからの季節を彩る花のひとつです。
牡丹の花は、その華やかな姿から、
原産国である中国では、「百花の王」と呼ばれています。
そのため、むかしから中国ではこの牡丹をモチーフにした
工芸品が数多くつくられてきました。
もちろん中国の文化に影響された日本でも、
着物や水墨画、陶磁器などに牡丹の花が描かれてきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/05/a8f4655affb414e077a5b768e36dcdfd.jpg)
上の写真は江戸時代の木綿布です。
木綿布には、筒描きと手描きで
「唐獅子牡丹」の図が表現されています。
「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」という
中国のことわざをモチーフとして
高く険しい崖の上から可愛い我が子を突き落とす
親獅子の姿が描かれています。
また、その崖の下の方には
紅い牡丹の花も鮮やかに描かれています。
歳月を経て、色が褪せていますが、
それでも見事に描かれた牡丹の花の美しさは際立っています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/04/31678e1107849a3d24544659bb5b1c5b.jpg)
この布のように、勇猛な獅子に、
華やかな牡丹を組み合わせた「唐獅子牡丹」の図は、
縁起物として昔から用いれてきました。
古代の中国において獅子は邪気を払う霊獣として
崇められてきました。
もちろん中国にはライオンは生息していないので
人々は空想上の動物として獅子を生みだしたのです。
魔除けの生きものですから、もっとも強い動物です。
しかし、その獅子でも体に寄生している虫には勝てずに、
病で滅んでしまうこともあります。
その虫に勝つために食したのが牡丹でした。
牡丹は古代の中国では薬用として栽培されていたようです。
現代のように観賞用のためではなかったんですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/e4/58182878939e0650d46d69063b7e35ce.jpg)
つまり、獅子に牡丹を組み合わせることで、
外と内の敵から身を守ることができるので、
恐ろしいものはなにもないということを意味しているんです。
「鬼に金棒」ということわざに少し近いですが、
身中の敵をも倒すという点でより強い意味を持っていますね。
伝統文様の成り立ちを調べていくと、
「唐獅子牡丹」のように込められた深い意味を知ることができ、
「なるほど」と納得させられることも多くあります。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は4月7日(火)予定です。
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