花邑の帯あそび
1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…
 




presented by hanamura


明日から12月です。
今年もあとわずかですね。
年末年始の用意にむけて、
忙しくされている方も多いのではないでしょうか。
道行く人々も心なしか足早になっているようです。

風邪が流行しているようですが、
身体には十分気を付けて年末年始を迎えたいですね。

花邑 銀座店では、
12月4日(土)から12月12日(日)まで、
「動物の帯展」を開催します。

作り手の愛情が伝わってくるような
動物をモチーフにした
帯を数多く揃えて皆さまをお待ちしております。

慌ただしい師走の中、
心温まるお時間となっていただければ幸いです。

本日は、その「動物の帯展」でご紹介する商品の中から、
「雀文様」のお話しをしましょう。

「ちゅんちゅん」とさえずり、
小さくて、ぷっくりとした雀は、
そのかわいらしい姿から、
古来より人々に愛されてきた動物です。

小さな雀は、天敵から身を守るために
群れをなして人が集まる場所で巣をつくります。
そのため、人家の近くでもよく見られます。
人々の営みの中で棲息をしている鳥ともいえるでしょう。

大切な食料である稲との関わりも深く、
春先には稲につく害虫を食べてくれるありがたい鳥でもあり、
秋口には稲を食べてしまう困った鳥でもあります。
そうしたことから雀は古来より親しまれ、
「舌切雀」や「雀の学校」の雀のように、
民話や民謡などに数多く登場しています。

雀は、文様としても人気の高いモチーフのひとつです。
その歴史は古く、平安時代後期まで遡ります。
そして、その人気をあらわすように、
様々に文様化されてきました。



雀の文様は、単体であらわされることは少なく、
自然の情景の中に、可愛らしい姿を配することが多いようです。
その中でも、雀がよく集う竹藪の竹とともに意匠化した「竹に雀」、
稲穂とともに意匠化した「稲穂に雀」の組み合わせは
とくに人気がある意匠です。

ちなみに「竹に雀」のモチーフは、
下の写真のように、
仙台藩伊達家の家紋としても有名です。



また、本来の雀の姿をアレンジしたような
「ふくら雀」とよばれる文様があります。
「ふくら雀」は、寒さをしのぐために、
全身の羽根を膨らませて、温かな空気が漏れないようにと、
じっとしている雀の姿を意匠化したものです。

もともとふっくらとした身体が、
さらにふくらんだ雀の姿は、
雀本人の苦労とは裏腹に、
とても愛らしく、おかしみが感じられます。

下の写真は、竹とふくら雀の人気の高い組み合わせの意匠で
明治時代につくられた和更紗です。
細かく連続的にあらわされた竹とふくら雀の意匠は、
竹薮に集まる雀のさえずりまでも聞こえてきそうです。



「ふくら雀」の「ふくら」は「福良」とも当て字され、
縁起の良い文様とされています。
伝統文様には縁起を担いだ、
吉祥文様がたいへん多くあります。

飢饉や天災などが多かった昔は、
安全な生活、幸せな暮らしへの願いを文様に込め、
それを身にまとうことで災厄から身を守っていたのです。

モノがあふれる豊かな時代にはなりましたが、
暗い話題も多い現代です。
昔の人々のように、
新年に向けて、明るく、福を運んできてくれるような
お気に入りの逸品を探してみてはいかがでしょうか。

※上の1枚目と3枚目の写真は「動物の帯展」でご紹介する名古屋帯の文様です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は12月7日(火)予定です。


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11月半ばを過ぎ、
早いもので今年もあと残りわずかとなりました。
街のあちらこちらでは
クリスマスのイルミネーションが輝き、
街行く人の目を楽しませています。

そろそろ、クリスマスのプレゼントを
探していらっしゃる方も多いことでしょう。

プレゼントというと、
昨今では子供用の玩具も凝ったつくりのものが多いですね。
玩具売り場には、子供だけではなく、
大人までもが驚いてしまうようなさまざまな仕掛けの玩具が
多く並べられています。

ちなみに今年は、
子供向けの小さなプラズマカーが人気のようで、
玩具でもやはり「エコ」のものが話題なんですね。

しかし、昔の玩具にこそ「エコ」なものが多いのです。

解れてしまった毛糸を使った「あやとり」や
道端の小石を使った「おはじき」、
古布の中に小豆をいれて作った「お手玉」、
そして「独楽(こま)」の材料には、
建築材にはならないマテバシイの木を用いていたようです。

現代ではゴミとして捨てられてしまうものを材料にしながらも、
アイデア次第で楽しく遊べる玩具として生まれ変わらせていた
昔の人々の知恵には感嘆させられます。

今回は、そういった昔ながらの玩具のひとつである
鞠(まり)をモチーフにした「鞠文様」について
お話しましょう。

鞠には、足で蹴って遊ぶ「蹴鞠(けまり/しゅうきく)」と
手でついて遊ぶ「手鞠(てまり)」があります。

蹴鞠の歴史は手鞠よりも古く、平安時代のはじめ頃です。
蹴鞠は、手鞠よりも大きく、鹿革からつくられています。

一方、手鞠は平安時代後期ごろからつくられるようになりました。
ぜんまいやおがくずなどの不要な材料を芯にして、
綿糸をぐるぐると何重にも巻いてつくられます。
まだ幼いうちにお嫁に出されるお姫さまを思いやった御殿女中たちが
お姫さまが嫁ぎ先で一人でも遊べるようにと着物をほどき、
その美しい糸を巻いてつくったのがはじまりです。



着物の意匠に用いられるのは、この手鞠のほうです。

安土桃山時代には、
当時の絢爛豪華な桃山文化の影響のためか、
幾何学的な文様があらわされた美しい毬が登場します。

江戸時代には、
五彩の絹糸を巻いて幾何学的な文様や梅や菊、麻などが
あらわされた贅沢で華麗な御殿毬(ごてんまり)がつくられました。

しかし、明治時代になると、「ゴムまり」と呼ばれる
ゴムで作られたボールが海外からもたらされ、
その弾力性の良さから昔ながらの鞠が玩具として用いられることは
少なくなっていきました。

それまでの美しい手鞠は、
玩具としてではなく、装飾用になり、
現代では工芸品としてつくられ、扱われています。

着物の意匠には、
その手鞠の美しさをそのまま写すように
あらわしたものが多いようです。

上の写真の名古屋帯は、
大正から昭和初期につくられた
子供用の襦袢をお仕立て替えしたものです。

不規則に配された鞠の意匠からは、
鞠が実際に跳ねているような躍動感が感じられます。
青海波の文様と鞠の文様があいまって
可愛らしいだけではなく、古典的な趣きも感じられます。

現代では、美しい手鞠は、
大人向けのプレゼントとしても
人気があるようですね。
でも、本物の手鞠もよいですが、
手鞠麩でも十分和の情緒は楽しめますね。
むしろ、くいしんぼうの私はこちらかもしれません。



※写真は花邑銀座店でご紹介している名古屋帯の文様です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月30日(火)予定です。


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立冬を迎え、
北国からは少しずつ雪の便りが
届くようになりました。
空気が乾燥しているので、
風邪はもちろんですが、
火の元にも注意が必要ですね。

火の元への注意といえば、
「火の用心 マッチ 1 本 火事の元」
というかけ声が想い起こされますね。
拍子木をカチカチと打ち鳴らして町内を見回る
町内会や青年団などの人々の姿。
少し前までは日本の冬の風物詩として
なくてはならないものでした。

最近では防犯やご近所さん同士のふれあい
といった目的も兼ねて
復活気味ではあるものの、
昔にくらべれば、見かける機会も
だいぶ少なくなっています。

この「火の用心」のフレーズにある「マッチ」も
最近ではとんと見かけなくなった道具のひとつです。
一昔前には、炊事や風呂炊き、
たばこや仏壇に上げるお線香など、
マッチは各家庭で重宝されていました。
いまは電子ライターがそのかわりとなり、
マッチがあるお家はめずらしいのではないでしょうか。

今回は、そのマッチをモチーフにした
マッチ文様についてお話ししましょう。

ただいま花邑銀座店では、
そのマッチ文様の名古屋帯をご紹介しています。
下の写真をご覧ください。
こちらの帯は、
大正から昭和初期につくられた襦袢地を
お仕立て替えしたものです。



マッチをモチーフにした文様は
とてもめずらしいのですが、
アールデコの影響を受けた、
当時の大正ロマンや昭和モダンな趣きが
色濃く反映された意匠には、
現在でも色褪せない斬新さがあり、
とても新鮮に感じられますね。

散らされたマッチが
伝統文様である松葉文様のようにもみえます。
この文様から感じられるおもしろみというのは、
そうした伝統的な文様が
下敷きになっているように感じられる、
意匠の完成度の高さにあります。

和洋折衷の極みともいえる、
この長襦袢を着られていた方は
さぞ粋な方だったことでしょう。

ちなみに、当時の呉服屋さんには
さまざまな意匠の生地見本をみて、
お客さんが色柄を選ぶことができる
「染め見本」が置かれていました。

その染め見本帳では、
襦袢地と帯地が共通になっていました。
つまり襦袢と帯は、
同じ意匠のものがつくられることも
多くあったということです。

このマッチ文様の襦袢が作られた
大正から昭和初期の日本において、
マッチは重要な輸出品でした。
その生産量は、アメリカ、スウェーデンと並び、
3大マッチ生産国のひとつとされるほどでした。

マッチはもともと、1827年にイギリスで発明され、
世界各地に広まりました。
日本ではようやく明治時代に入って
生産されるようになったようです。

この当時つくられたマッチ箱には、
縁起の良い文様や大津絵(※1)風の風刺画、
さらには輸出向けの異国情緒のあるものや
企業名の入った宣伝用のものなど、
さまざまな意匠のものがつくられ、
現在眺めてもとても興味深く感じられるものが
とても多くあります。

当時、活躍した竹久夢二も、
マッチをモチーフにした作品を製作していて、
その人気の高さが窺えます。
写真の帯のマッチ文様も
おそらくその竹久夢二の作品から
ヒントを得たもののようです。

マッチは、大正、昭和と
長らくロマンの香りが漂う時代を
明るく照らす灯火でした。
こちらの帯も、お召しになれば、
心の中にロマンの明かりが
ぽっと灯りそうな気がします。

※写真は花邑銀座店でご紹介している名古屋帯の文様です。

※1
花邑日記「大津絵について」をご参照ください。


花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月23日(火)予定です。(来週11月16日は遠方へ仕入れに行くためお休みとなりますので、ご了承ください。)


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明日は文化の日。
ここ東京では、穏やかな秋晴れとなるようです。
文化の日を過ぎると、暦の上ではまもなく立冬となり、
いよいよ本格的な冬を迎えます。

1年の中でもっとも夜が長いこの時期は、
月や星を長く眺めることができます。

とくに冬は夏と比べて、
空気中の水蒸気が少ないので、
夜空に浮かぶ月や星がくっきりと澄んで見え、
星座観察には最適のようです。

ふと見上げると、
寒い初冬の闇夜に浮かんだ満月は、
ひときわ美しく光を放っているようです。

さて今日は、満月と同じく
丸い形をした「鈴」の文様についてお話ししましょう。

球状の鈴は、日常生活の中でもよく見かける、
馴染み深い「楽器」です。

鈴と聞くと、首輪に鈴をつけた
飼い猫の姿を想像する方も
多いのではないでしょうか。

「リンリン」と小さな音をたてて歩く猫の姿は、
とても愛らしいですね。

球状の鈴は、歴史がとても古く、
古墳時代に大陸から日本にもたらされました。

そして、神さまをよぶための儀式に用いる
神聖な楽器として、
用いられるようになりました。

現在でも、お祭りの際には神社で
たくさんの鈴をつけた「神楽鈴(かぐらすず)」を鳴らして、
巫女(みこ)さんが奉納の舞いを踊りますね。

また、神社には賽銭箱の上に
大きな鈴が取り付けられていますね。
その大きな鈴を「ガラーン」と鳴らせば、
神さまが訪れるとされています。

昔は、神さまが訪れるの「訪れる」は、
「音連れる」とあらわされたようで、
音楽と神事は縁の深いものなのです。

その中で、音の鳴る鈴は大事な役割を果たす器物でした。

また、邪気や悪いものから
身をまもるという意味合いもあったようです。

そういえば、最近では
熊が市街地に出没したというニュースを
よく目にするようになりました。
山歩きなどをしているときには、
その熊対策として
ベテランの方などは杖の先に鈴を付け、
リンリンと鳴らしながら歩かれています。
熊は大きな音を警戒するようです。

鈴が着物や帯などの文様として用いられるように時代は
いつごろなのか定かではありませんが、
神楽鈴をモチーフにした江戸時代の肩衣(かりぎぬ)が
残されています。

江戸時代には鈴の丸い形のかわいらしさと、
邪気除けのお守りとしての意味から
子供の着物の意匠にも多く用いられました。



上の写真は、鈴文様をすくい織りであらわしたものです。
寄り添うように並んだ鈴の中には
菊や七宝などの伝統文様が配されています。
伝統文様の古典的な趣きが強いなかにも
明るいお色目がかわいらしさを感じさせます。

さて、11月を過ぎれば間もなく年末年始です。
1年の中でも神社や教会などで
鈴を鳴らす機会がもっとも多い時期になります。
身心を浄め、あらたな幸福を呼び込めるような
良い音を鳴らしたいものですね。


※写真は花邑銀座店でご紹介している洒落袋帯の文様です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月9日(火)予定です。


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