presented by hanamura
12月半ばを過ぎて、
お正月まで残すところわずかになりました。
デパートの食品売り場や、
近所のスーパーでは、
黒豆や数の子、紅白のかまぼこ、伊達巻き、
栗金団、昆布巻き、海老、鯛などの
おせち用の食品がずらりと並び、見るのも華やかです。
このおせち料理の一品一品には、
子孫繁栄や出世祈願、長寿などの
意味合いが込められています。
美味しく食べて、福をももたらすという
なんとも幸せいっぱいの料理ですね。
お正月にはおせち料理をはじめ、
「今年も良い年でありますように。」という
願いを込めて縁起をかつぐことが多いですね。
吉祥文様のお着物を
お召になられる方も多いのではないでしょうか。
昔から人々は福がもたらされるようにと願い、
吉祥文様をさまざまな場面で身にまとい、
身近に置いてきました。
そのため、吉祥文様は日本の伝統文様に
多く残され、馴染み深いものも多くあります。
今日は、その吉祥文様を寄せ集めて意匠化した
「宝尽くし文様」についてお話します。
「宝尽くし文様」は、縁起が良いとされる品を
集めて意匠化したものです。
宝尽くし文様も由来は古代の中国にあります。
古代の中国では、珊瑚や銭など、
当時から珍重されていた物を集めて意匠化したものを
「雑宝(ざっぽう)」とよび、
富や権力を得ることができる文様とされていました。
また、仏教の中で用いられていた法具などを
意匠化したものを「八宝」とよび、
前回お話した神仙思想に登場する
八人の仙人の持ち物を意匠化し、
不老長寿を表したものを
「暗八仙(あんはっせん)」とよんでいました。
こうした吉祥文様が日本にもたらされたのは室町時代です。
そして、中国では「雑宝」「八宝」「暗八仙」
のように分別されていたものが、
日本では一緒になり、一つの文様となりました。
それが宝尽くし文様とよばれているものです。
その宝尽くし文様に用いられる宝の中で、
よく知られているものは、
欲しいものが手に入る「打出の小槌」、
天狗が持っていった「隠れ蓑(かくれみの)」、
お経の巻物である「宝巻(ほうかん)」、
お守りやお金を入れる「巾着」、
長寿をねがう「熨斗(のし)」
希少価値のあった香料のグローブを意匠化した「丁子(ちょうじ)」などですが、
ときには鶴や亀も加わることもあり、
つくる人や地域によってさまざまな吉祥文様が組み合わされ、
またその組み合わせ方も時と場所によって変化しました。
まるでおせち料理のように、
吉祥をあらわすものが盛りだくさんに集められ、
まとめられた宝尽くし文様は、
「おめでたいものならばすべて良し」という
良い意味でのゆるやかさが感じられます。
八百万の神さまが居らっしゃる日本ならではの文様でもあるのでしょう。
さて、今年の「花邑の帯あそび」は、今日で最後になりました。
今年1年、拙い文章にお付き合いただいて、ありがとうございました。
来年も「帯のアトリエ 花邑」ともども
どうぞよろしくお願い申し上げます。
※写真の和更紗の宝尽くし段文様名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2010年1月12日(火)予定です。
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