花邑の帯あそび
1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…
 




presented by hanamura


11月半ばを過ぎて、ぐっと冷え込んできましたね。
ここ東京では、朝から冷たい雨が降っています。

少し前にはきれいに色付いた枯葉も、
道のそこかしこに落ち溜まっていて、
すっかり晩秋の景色となっています。

今日、紅玉りんごをいただいたのですが、
このりんごの収穫時期もあとわずか。
紅玉りんごのルビー色ともいえる紅い色が、
雨降りの薄暗い天気のなかで、
一際きれいに思えました。

紅い色といえば、着物の染料としてつかわれるもののなかに、
花は黄色なのに、紅い色の染料が抽出できる植物があるのを
ご存じでしょうか。

そうです。「紅花(べにばな)」です。
その種子がサラダ油(サフラワー油)やマーガリンの原料となったりするので、
結構身近な植物ですね。
今日はその紅花の花びらから染料を抽出して染色する、
「紅花染め」についてお話しましょう。

「紅花染め」は、山形県の最上(もがみ)地方の特産品で、
山形県では紅花が県花にもなっています。
紅花染めの透明感のある紅色は、
古代から高貴な色として扱われ、
万葉集にも登場しています。

しかし、その紅花の発祥は、意外なことに古代のエジプトなんです。
古代のエジプトでは、この紅花の染料を
ミイラに巻く布に防腐目的で用いていたのです。

その紅花が日本にもたらされたのは、飛鳥時代のはじめです。
「呉」からもたらされた染料という意味で
「呉の藍(当時「藍」とは、染料の代名詞とされた)」とよばれ、
後に「紅(くれない)」とされました。



上の写真は、紅花染めの糸を使用して織られた紬です。
ごく淡い藍色地に紅色の糸が織り込まれた透明感のある紅花紬です。

紅花染めの原料となる紅花は、キク科の一種で、
その姿は「あざみ」によく似ています。
開花時期は 6 月~ 7 月。
茎の上端から咲くので、
「末摘花(すえつむはな)」ともよばれます。
ちなみに源氏物語に「末摘花(すえつむはな)」という巻がありますが、
そこでは、光源氏に「末摘花」とあだ名された
鼻の先が赤味を帯びた女性が登場します。

紅花の花は開花直後は鮮やかな黄色ですが、
徐々にオレンジがかった赤色に変化していきます。
そして7月中旬に摘み取られます。

摘み取った花びらからは、
黄色と紅色の2種類の染料がとれます。

まず、花びらを水洗いして水に浸けながらよく揉み込み、
それをよく絞ると黄色い色素が溶け込んだ液体が出てきます。
黄色に染める「黄染め」では、
この黄色い液体を染料にします。

一方、「紅染め」に用いる紅色の染料を抽出するには、
紅餅(べにもち)という「餅」をつくります。
黄色の液を抜いた花びらは、
日陰に2~3日置き、発酵させます。
すると、発酵した花びらは酸化し、粘り気を帯びます。
それを臼でつき、団子状にします。
団子状になった紅花は煎餅のように平らに潰して、
日なたで乾燥させます。
これが紅餅です。

水に溶け出てくる水溶性の黄色の色素にくらべ、
紅色の色素は水に全く溶けない非水溶性のため、
紅餅を入れた水に灰汁や梅酢などの媒染剤を加え、よくかき混ぜます。
この液体に染色する織布を何度も浸すことで、きれいな紅色が染まります。

紅花の産地である山形では、
そろそろ本格的な冬が訪れます。
しかし、寒さの厳しいこれからの季節に染める布が
一番きれいに染め上がるそうです。

息も凍るような厳しい寒さのなかで、
染め上がり、干された紅色の反物が、
透き通った空気、白い雪景色にたなびく様は、
その寒さを一瞬忘れるほど、美しいものでしょう。

※写真の紅花紬は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月24日(火)予定です。


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