presented by hanamura
「花邑日記」
先週の土曜日には春一番が吹いて、いよいよ春の訪れも近くなりました。
しかし、冬将軍も健在で、冷たい北風の吹く日もまだまだ多いですね。
とくに、暖かな日でも朝晩は冷え込むので、
紬の着物はまだしばらく活躍しそうです。
紬と言えば、現在一番人気のあるものは、
やはり「結城紬」でしょう。
実はこの「結城紬」には、いくつかの産地、種類があります。
狭義の「結城紬」は、茨城県結城市において
真綿手紡糸(まわたてぼうし)を使い、地機(じばた)で織られた紬を指します。
国の重要無形文化財に指定された、たいへん困難な作業をともなうために、
生産量も少なく、非常に高価になります。
この「結城紬」は、その他の「結城紬」と区別するために
「本場結城紬」とか「本結城」などと呼ばれています。
と言うのも現在では結城市の「結城紬」の織り手や技術が周辺地域などに拡散し、
そこでも「本場結城紬」に勝るとも劣らない「結城紬」が織られているからです。
今回は、その中から「本場結城紬」の姉妹品とも言える
「いしげ結城紬」についてご紹介しましょう。
「いしげ結城紬」とは、
茨城県常総市(じょうそうし)石下町(いしげまち)で織られている結城紬です。
石下町は、鬼怒川沿いの結城市近くに位置していて、
市町村合併が行われ、改名される2006年までは「茨城県結城郡」に属し、
古くから織物が盛んでした。
「いしげ結城紬」の特徴は
手引き真綿糸、生糸、玉糸の3集類を組み合わせて、
機(はた)で織られる(機織り)ことです。
そのやわらかく、しなやかな風合いには定評がありますが、
残念ながら質よりもブランド性が先行しがちなメディアの影響で
「本場結城紬」に比べてしまうと、スポットがあたる頻度は多くありません。
しかし、こちらも茨城県の無形文化財として指定されています。
「本場結城紬」のゆえんとされる地機織りは、
とても困難な作業であることは確かですが、
織り上がりが織り手の錬度によって大きく左右されてしまいます。
そのため、ものによっては、地機織りの「本場結城紬」より、
機織りを用いる「いしげ結城紬」のほうが、
「風合いも着心地も良い」ということもまれではありません。
しかし、どちらも織り手の技術が出来上がりに影響するという点では、
差はあるものの変わりはないので、
あくまでも紬としての質は、そのもので判断したほうがよいですね。
実際、結城市で織られている結城紬にも
「地機で織られていない」「本場結城紬の組合を通していない
(組合を通すことで検査料がかかる=価格が跳ね上がってしまう)」
などの諸事情によって「本場結城紬」ではない結城紬も多くあります。
また、「いしげ結城紬」は「本場結城紬」に比べ、
価格も若干お手ごろになっています。
色柄も多く揃っており、選択の幅がぐんと広がるでしょう。
「いしげ結城紬」は、普段のおしゃれ着として活用するのには最適な紬ですね。
現在、花邑でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2月24日(火)予定です。
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