presented by hanamura
「兵児帯」について
これまで「花邑の帯あそび」では、
帯の種類についてのお話しをしてきました。
同じ帯でも、そのかたちや仕立て方の違うさまざまものがありましたね。
そして、今回で帯の種類についてのお話しは最後になります。
さて、最後にお話しするのは「兵児帯(へこおび)」と呼ばれる帯です。
「兵児帯」とは、ふだん着に締める男性用の帯です。
男性用の帯にはこの「兵児帯」と「角帯」(※1)とがあります。
「角帯」は、礼装用にも用いられるため、
その仕立て上がりはしっかりとしています。
一方「兵児帯」は、ふだん着用として考えだされた帯です。
その生地には縮緬、羽二重、木綿、メリンスなどが用いられていて、帯芯も入れません。
軽くてやわらかで締め心地が良いので、
着物だけではなく、浴衣にも用いられています。
「兵児帯」の寸法は長さ5尺5寸~9尺5寸(200cm~360cm)、
巾3寸~8寸(50cm~74cm)です。
「兵児帯」を結ぶときには、
この巾を3寸(10cm)ほどに折って2重巻きにします。
「兵児帯」は、もともと薩摩地方(鹿児島)のみで使われていた帯でした。
「兵児帯」の「兵児」という呼び名も、
若者のことを指す薩摩地方の方言なんです。
その「兵児帯」が日本全国に広がったのは幕末から明治時代のようです。
この時代は、西郷隆盛を中心とする薩摩藩士が
関東地方でも活躍していた時期でもあります。
この薩摩藩士の多くは洋装だったようですが、
日本刀を腰に差すために、服の上から「兵児帯」を腰に巻いていたようです。
この薩摩藩士の姿は当時の東京の若者に、
新しい時代の息吹を感じさせたのではないでしょうか。
とくに東京の書生たちの間では、
この「兵児帯」が大流行したようです。
そのため「兵児帯」は「書生帯」と呼ばれることがあるぐらいです。
この時代の書生たちも、新しい時代の息吹を感じさせる存在ですよね。
現在では「兵児帯」は男性だけではなく、
女性にも用いられています。
むかしは「兵児帯」といえば疋田絞りによる絞り模様がほとんどでした。
しかし、現在の「兵児帯」は、
柄がまったくない無地のものから可愛い柄をプリントしたもの、
先がレースになっているものなどさまざまに揃っています。
この「兵児帯」のように
帯は長い着物の歴史の中で、
その時代に合ったものが考案され、用いられてきたのです。
(※1)2008年6月3日更新のブログ「角帯について」を参照してください。
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