presented by hanamura
七夕を過ぎて、だいぶ暑くなってきました。
湿気があるためでしょうか。
歩いていると額に汗がじんわりとでてきます。
そこで今回は、湿気の多い日本にピッタリな「麻」についてお話します。
麻は、通気性と吸水性に優れているので、
体の熱を外に発散し、汗も吸い取ってくれます。
とても丈夫なのでジャブジャブとご家庭で洗うことができ、
また、乾きも早いので夏の衣料の素材に最適ということは
皆さんもよくご存じでしょう。
麻は、たいへん古くから衣料に用いられてきました。
その発祥は紀元前5000年前にまで遡ります。
エジプトのピラミッドの壁画に、
麻の種を蒔く人や麻糸を紡ぐ人の姿が描かれているぐらいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/4f/e17b595f30f4852edb36d4d84965f409.jpg)
日本でも、縄文時代にはすでに麻は一般的で、
15世紀末頃に木綿が日本全土に広まるまでは衣料素材の主流でした。
当時の日本において「布」といえば麻のことを指したようです。
その後も、繊維の細かい上等な麻は「上布」として幕府の献上品に、
繊維の粗いものは庶民の衣料に用いられていました。
麻の種類は20種類以上もありますが、
着物や帯の素材として用いられるものでは、
前回までにお話しした、
宮古上布などの高級な麻織物に使われる
「芋麻(ちょま)」が有名です。
昔は、「赤麻(あかそ)」や「大麻」などからも
麻織物がつくられていました。
麻の種類により、織り方には若干の違いがありますが、
茎の繊維から紡いだ糸を用いる点ではどれも同じです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/35/f9630ee24fdbbebaa9ee020365539a41.jpg)
麻の種は4月ごろに蒔かれ、ぐんぐんと成長し、
7月下旬の収穫時には人の背丈を越すような長さまで育ちます。
忍者が跳躍力を養うために、成長速度の速い麻を飛び越える修練を日々行った
というエピソードは皆さんも耳にされたことがあるでしょう。
麻の茎は、根元から収穫します。
収穫したものはお湯の中で数分間煮て、
害虫を殺し繊維を丈夫にします。
その後ひなたで干し、さらにまたお湯で煮て、乾燥させます。
乾燥させた麻は、茎の表皮を剥ぎとって繊維だけを取り出し、
その繊維を陰干しします。
麻の繊維はお湯に浸して手作業で細かく裂いていきます。
そして、裂いた繊維を1本1本つなぎ、撚りをかけて糸にします。
この一連の作業は麻積み(おうみ)とよばれ、
高い技術力を必要とする繊細な作業です。
たいへんな手間をかけてできた麻の糸が
さらに手間をかけて織り上げられ、
さらさらとした麻ならではの肌ざわりが生まれるのです。
気持ち良く夏を過ごすための衣料の素材である麻織物は、
薄手でその織り目には隙間がありますが
その織り目の間には、作り手さんの根気と愛情が
たくさん詰まっているんですね。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は7月21日(火)予定です。
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