花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

麻について

2009-07-14 | 麻について

presented by hanamura


七夕を過ぎて、だいぶ暑くなってきました。
湿気があるためでしょうか。
歩いていると額に汗がじんわりとでてきます。
そこで今回は、湿気の多い日本にピッタリな「麻」についてお話します。

麻は、通気性と吸水性に優れているので、
体の熱を外に発散し、汗も吸い取ってくれます。

とても丈夫なのでジャブジャブとご家庭で洗うことができ、
また、乾きも早いので夏の衣料の素材に最適ということは
皆さんもよくご存じでしょう。

麻は、たいへん古くから衣料に用いられてきました。
その発祥は紀元前5000年前にまで遡ります。
エジプトのピラミッドの壁画に、
麻の種を蒔く人や麻糸を紡ぐ人の姿が描かれているぐらいです。



日本でも、縄文時代にはすでに麻は一般的で、
15世紀末頃に木綿が日本全土に広まるまでは衣料素材の主流でした。
当時の日本において「布」といえば麻のことを指したようです。
その後も、繊維の細かい上等な麻は「上布」として幕府の献上品に、
繊維の粗いものは庶民の衣料に用いられていました。

麻の種類は20種類以上もありますが、
着物や帯の素材として用いられるものでは、
前回までにお話しした、
宮古上布などの高級な麻織物に使われる
「芋麻(ちょま)」が有名です。

昔は、「赤麻(あかそ)」や「大麻」などからも
麻織物がつくられていました。
麻の種類により、織り方には若干の違いがありますが、
茎の繊維から紡いだ糸を用いる点ではどれも同じです。



麻の種は4月ごろに蒔かれ、ぐんぐんと成長し、
7月下旬の収穫時には人の背丈を越すような長さまで育ちます。
忍者が跳躍力を養うために、成長速度の速い麻を飛び越える修練を日々行った
というエピソードは皆さんも耳にされたことがあるでしょう。

麻の茎は、根元から収穫します。
収穫したものはお湯の中で数分間煮て、
害虫を殺し繊維を丈夫にします。

その後ひなたで干し、さらにまたお湯で煮て、乾燥させます。
乾燥させた麻は、茎の表皮を剥ぎとって繊維だけを取り出し、
その繊維を陰干しします。

麻の繊維はお湯に浸して手作業で細かく裂いていきます。
そして、裂いた繊維を1本1本つなぎ、撚りをかけて糸にします。

この一連の作業は麻積み(おうみ)とよばれ、
高い技術力を必要とする繊細な作業です。

たいへんな手間をかけてできた麻の糸が
さらに手間をかけて織り上げられ、
さらさらとした麻ならではの肌ざわりが生まれるのです。

気持ち良く夏を過ごすための衣料の素材である麻織物は、
薄手でその織り目には隙間がありますが
その織り目の間には、作り手さんの根気と愛情が
たくさん詰まっているんですね。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は7月21日(火)予定です。


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