presented by hanamura
もう新年まであとわずかになりました。
数日前まで、クリスマスのイルミネーションで彩られていた街は、
門松やしめ縄などが飾られ、
お正月を迎える準備で活気づいています。
さて、今回はお正月などのハレの日にふさわしい
華やかな孔雀の文様についてお話ししましょう。
孔雀と聞くと、鮮やかで長い尾羽を
扇状に大きく広げている姿を想像しますね。
これは、雄が雌に求愛するときの姿ということは
ご存じの方も多いのではないでしょうか。
孔雀の雄は、尾羽の綺麗さを示すことで、
自身が健康で強い遺伝子の持ち主ということを
雌にアピールしているようです。
そのため、雌の孔雀は強い子孫を残すために、
真剣に尾羽を広げた雄の姿を観察し、相手を決めます。
孔雀にとっては、まさに子孫繁栄に関わることですが、
華麗で迫力のあるその姿は、古来より人々を魅了してきました。
孔雀は、中国から東南アジア、南アジア、アフリカなどの
熱帯雨林に多く棲息しています。
美しい姿が人々を魅了してきたのはもちろんですが、
サソリや毒蛇などの害虫を好んで補食することから、
益鳥としても尊ばれてきました。
そうしたことから、仏教では邪気を払う象徴として神格化され、
「孔雀明王(くじゃくみょうおう)」という
孔雀の神様が誕生しました。
また、古代の中国では、
九徳(※)を生まれながらにして備えた瑞鳥として崇められ、
百花の王とされた牡丹とともに
広く工芸品などに意匠化されました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/99/06bc9e0bc6bacd11375250d9cf5104d8.jpg)
上の写真の名古屋帯は、大正から昭和初期につくられた
丸帯からお仕立て替えしたものです。
華やかなでオリエンタルな孔雀の姿が、
美しい色彩で織りあらわされています。
一緒に意匠化された花は抽象的ですが、
やはり牡丹の花と思われます。
日本に中国から孔雀が伝えられたのは
奈良時代の頃です。
正倉院に残されている工芸品には、
孔雀をモチーフとしたものが多く残されています。
また、奈良時代に建設された西大寺(さいだいじ)には、
「孔雀明王(くじゃくみょうおう)」の彫像が
置かれていたようです。
孔雀の文様は、日本でも吉祥の文様として、
工芸品のモチーフとなり、
江戸時代の頃に着物や帯の意匠として
多く用いられるようになりました。
孔雀文様には、尾羽を広げて求愛する
雄の姿を意匠化したものが多いのですが、
中には孔雀の羽だけが散らされたものも見られます。
華麗な孔雀の文様は、
婚礼衣装など、お祝いごとの席にまとう着物や帯のほかにも、
舞台衣装のモチーフなどに用いられることも多いので、
年末年始のテレビなどで「孔雀」の姿を
見かける機会もあるでしょう。
さて、今年の「花邑の帯あそび」は、今日で最後になりました。
今年も一年、拙い文章にお付き合いただき、
ありがとうございました。
心より厚く御礼申し上げます。
来年も「帯のアトリエ 花邑 」ともども
どうぞよろしくお願い申し上げます。
良いお年をお迎えくださいませ。
※九徳とは、仏陀が備えた九つの徳とされ、以下の9つがあります。
1. 阿羅漢(あらかん)~一切の煩悩を滅し、神々、人間の尊敬、供養を受けるに値する者
2. 正自覚者(せいじかくじゃ)~完全な悟りを最初に開いて、その悟りへの道を他者に教えられる者
3. 明行具足者(みょうぎょうぐそくしゃ)~8種の智恵と15種の行「性格に関する徳」を備えた者
4. 善逝(ぜんせい)~正しく涅槃に到達し、善く修行を完成し、正しく善い言葉を語る者
5. 世間解(せけんげ)~宇宙、衆生、諸行という3つの世界を知りつくした者
6. 無上の調御丈夫(むじょうのじょうごじょうぶ)~人々を指導するにあたっては無上の能力を持つ者
7. 天人師(てんにんし)~人間および神々などの一切衆生の唯一の師
8. 覚者(かくじゃ)~真理に目覚めた者
9. 世尊(せそん)~すべての福徳を備えた者
※上の写真は花邑 銀座店にてご紹介している名古屋帯の文様です。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2011年1月11日(火)予定です。
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