presented by hanamura ginza
まもなく4月ですね。
公園では春休みを迎えた子供たちが、
蕾のつきはじめた桜の木の下で、
元気に走り回っています。
九州では、桜が開花したようですが、
東京ではやっと梅の花が満開となったところも多いようで、
今年は梅と桜が同時に咲く姿を
見ることができるかもしれませんね。
花が咲き誇るこれからの季節には、
外でただ花を眺めるだけではなく、
家のなかにも、花を飾りたくなるものです。
室内に花を飾れば、
普段の生活も潤いを帯びて
家のなかにも春がやってきたように
豊かな心持ちになれますね。
花を飾るときに用いられる花瓶は、
本来、花が枯れないように水を入れる容器ですが、
花をより美しく引き立たせるための効果もあります。
花瓶のなかには、それ自体でも芸術性の高いものが多くあり、
花瓶そのものが愛でられることもあります。
花の文様があらわされる着物の意匠にも
花と縁の深い花瓶の文様が多く取り上げられます。
今日は、その花瓶の文様についてお話ししましょう。
家の中にも花を飾ることが、
いつごろからはじめられたのかという点については
定かではありませんが、
紀元前 3000 年にはじまったエジプト文明のころには、
唐草文様などの彫刻が施された花瓶に花を飾ることが
すでにおこなわれていたようです。
また、金でつくられた黄金の花瓶も残っています。
一方、遺跡から10万点もの陶器が発掘されている、
紀元前 2500 年前の古代ギリシャでも、
こうした花瓶は多くつくられていたようです。
古代ギリシャでは、花瓶に日常の風景や事象など、
当時の文化が描かれた花瓶も多くあります。
身近で用いていた器物だからこそ、
当時の文化がよくあらわされているといえるでしょう。
紀元前 550 年~紀元前 330 年ごろのペルシャでは、
有名なペルシャ絨毯の意匠にこの花瓶の文様が
多くあらわされました。
ちなみにペルシャ語で花瓶は「ゴルダニ」とよびます。
このゴルダニが配される代表的な意匠は、
「メヘラブ・ゴルダニ」とよばれます。
上部に「メヘラブ」とよばれる木や花、鳥の文様があらわされ、
中心部にゴルダニが配されます。
水の入ったゴルダニが中心となって
百花繚乱のオアシスがあらわされた文様です。
乾燥地帯のペルシャならではの意匠といえますね。
イタリアのルネッサンスをはじめ、
西洋の絵画でも花瓶をモチーフとしたものは
とても多く見られます。
ルノワールやモネの「花瓶の花」などは有名ですね。
日本で花瓶が用いられはじめたのは、
仏教が伝えられた飛鳥時代のころのようです。
仏教の儀式において
花瓶は香炉や燭台とともに「三具足」を構成し、
欠かせない仏具となっていました。
室町時代には茶道が広まり、
茶室には、「花入(はないれ)」とよばれる花瓶に
季節の花が飾られるようになりました。
竹の筒や素焼きのものが多く、
豪奢な意匠の西洋の花瓶にくらべ、
素朴で質素な日本の花瓶の意匠からは
わびさびの風情が見て取れます。
花瓶が着物の文様として
取り入れられるようになったのは大正時代です。
アールヌーボーの流行にともない、
薔薇やチューリップなどの花が
人気を博すようになると、
そうした洋花と一緒に花瓶もあらわされるようになりました。
上の写真の和更紗は、
昭和初期頃につくられたものですが、
アールヌーボー調の意匠で、
花瓶と薔薇が配されています。
下の写真は、昭和初期~中期につくられた絹布から
お仕立て替えした名古屋帯です。
梅や竹などの文様が
抽象的でポップにアレンジされている点に
おもしろみがありますね。
こちらにも花瓶の文様が配されています。
上の写真のように、
花が生けられていない花瓶自体が
モチーフとなることもありますが、
花瓶は澄んだ水をたたえて花の命を長く保ち、
その美しさを愛でるための道具であり、
やはり最初にお話したように、
花を美しく引き立たせるためのものです。
いま花邑銀座店では「花の帯展」を開催しています。
彩り豊かな花がモチーフとなった帯を取り揃えて
ご紹介しています。
花の帯、またその帯をお召しになられる方が
花瓶に生けられた花そのものとなるように、
花邑銀座店は、そのお役に立てる、
黒子のような花入れでありたいと思っています。
※上の写真の「薔薇に花瓶文 和更紗 名古屋帯」と「草花に花瓶文様 型染め 名古屋帯」は花邑銀座店でご紹介している商品です。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は4月5日(木)予定です。
帯のアトリエ 花邑-hanamura- 銀座店ホームページへ
↓