花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

針供養について

2010-02-09 | 針供養について

presented by hanamura


昨日の2月8日、浅草の浅草寺にある淡島堂まで、
「針供養」に行ってきました。



昔から、私たち人間は細くて小さな「針」1本で
布地を繋ぎ合せ、さまざまな「かたち」を作ってきました。
考えるとすごいことですよね。
私も帯仕立てのときにはたいへんお世話になっています。

しかし、細くて小さな針は、
使用しているうちに曲がってしまったり、
ポキッと折れてしまうことも多いのです。

こういった針は、
残念ながら縫い針として
用いることができず、
お役御免となってしまいます。

針供養は、こういった現役を引退した針を供養するための行事です。
また、現在活用している現役の針を休ませる為に、
針仕事は一切しない日でもあります。

針供養の成り立ちは、奈良時代まで遡ります。
女帝だった元明天皇が、
裁縫の上達を祈願したことからはじめられました。
そして、平安時代には清和天皇が針を納めるお堂も建てました。
その後、針供養は毎年12月8日と、2月8日に行われる淡島神社の年中行事にもなりました。



針供養が行われる淡島神社には、
日本古来の神様である
淡島神(あわしまのかみ)と
少彦名命(すくなひこなのみこと)が祀られています。

この淡島神は、女性の神様で女性の守護神とされています。
一方、少彦名命は日本にはじめて農耕や医療、
裁縫の技術を伝えたとされています。
どちらも針と縁が深い神様なんです。

昔は、針供養が行われる12月8日と2月8日は、
「事八日(ことようか)」と呼ばれていました。
12月8日は農耕作業が終わる「事納めの日」、
2月8日は農耕作業をはじめる「事始め」の日だったのです。

昔は農耕によって生活の糧を得ていたので、
「事八日」は、とても大切な日でした。
この大切な日に針供養が行われてきたということだけでも、
針という道具が昔からいかに活用され、
人々の生活を支えてきたかということがわかりますね。

日にちについては、
12月8日と2月8日の両日とも行う所もあれば、
どちらか1日のみの所もあります。
関西では12月、関東では2月に行うところが多いようです。

さて、私が行った淡島堂では、
堂内に入ると、神棚の前にとても大きな
お豆腐が2丁どーんと置かれていました。



針供養のときには、このお豆腐に用をなさなくなった針を刺します。
お豆腐以外に蒟蒻を用いる所もありますが、
いずれも酷使してきた針を
柔らかなものに刺し、
今までの仕事をねぎらうという意味合いがあるのです。

さっそく大きなお豆腐に針を刺し、
手を合わせ、感謝を告げました。
針供養は、「すべてのものに神が宿る」とする
日本ならではの美しい風習として
いつまでも残っていってほしいと深く感じました。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2月16日(火)予定です。


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