花邑の帯あそび
1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…
 




presented by hanamura ginza


9月もはやいもので半ばを過ぎ、
まもなく秋分の日を迎えます。

今年は、記録的な残暑ということで、
東北地方でも気温が 30 度を超える「夏日」がつづいています。
それでも、北海道などでは紅葉がはじまった地域もあるようなので、
「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざのように、
もう少しで残暑が過ぎることを祈るばかりです。

残暑は続いていても、
気持ちはすっかり秋に向かっています。
お着物を選ぶときにも、
涼やかな色目から、落ち着いた色目のものに、
自然と目が行くようになりました。

日本人は、色によって季節感をあらわすことを、
古来よりごく当たり前のように行なってきました。
季節の移り変わりに敏感ということは、
豊かな四季を持ち、長く農耕生活を営んできた
日本ならではの感覚なのかもしれません。

こういった色彩感覚は、
世界中でも定評があるようで、
和の伝統色にも、実に多くの種類があります。

今日は、その和の伝統色の中から、
「紫根(しこん)色」についてお話ししましょう。

紫根色は、その名前のように、
紫草(ムラサキソウ)の根を染料にしてあらわされる
深く濃い紫色を指します。

紫草は、ムラサキ科に属する多年草で、
初夏から夏にかけ、小さくて可憐な白い花を咲かせます。
紫根の染料となる根は、その花が咲き終わり、
葉が枯れる10月~11月になると採取されます。

採取した根を熱湯に浸した後、
石臼で細かく砕き、麻袋に入れて、
湯に浸しながら揉みだしをします。
この揉みだしのときに、
麻袋からでる紫色の滴が染料液となります。

染料液に浸して紫色に染めた布は水洗いして、
椿の灰を入れた熱湯に浸します。
椿の灰は、紫根染めの媒染(ばいせん)として古来より用いられてきたもので、
発色を良くする効果があるのです。

この作業を数日にわたり繰り返し繰り返しつづけることで、
はじめて深みのある紫根色を染めあげることができるのです。



紫草の根を用いて染められた紫の色は、
古来より高貴な色として、珍重されてきました。

飛鳥時代に、聖徳太子が制定した冠位十二階の制の中では、
紫色がもっとも高い位の色と定められていました。
何度も何度も染められあらわされた濃い紫色は、
「深紫(こきむらさき)」や「黒紫(ふかきむらさき)」と呼ばれ、
天皇が身にまとう装束にはこの色が用いられました。

平安時代になってからも、紫色は尊ばれ、
清少納言は「枕草子」の中で、
「すべて、なにもなにも、紫なるものは、めでたくこそあれ。花も、糸も、紙も」
と記しています。

こうした価値観は、武士が力をもちはじめた鎌倉時代にも続き、
将軍などの身分が高い武士は、
紫色の縅(おどし)がついた甲冑を身にまとい、戦に向かいました。

江戸時代には、
南部藩(岩手県)でつくられる紫根染めが評判となり、
南部藩の紫根染めは、幕府への献上品とされました。

その一方、八代将軍の徳川吉宗が武蔵野で紫草を栽培させ、
紫根染めは広く知れわたるようになりましたが、
当時、紫根染めは染め賃が高く、
庶民では着ることができないものでした。

明治時代になり、海外から化学染料が輸入されるようになると、
草木染めは廃れていき、紫根染めの技法も忘れられていきました。

しかし大正時代になると、
紫根染めの技術を復活させようという人々が岩手県にあらわれ、
そうした人々の努力で、紫根染めがまた染められるようになりました。
当時、岩手県に住んでいた作家の宮沢賢治は、
『紫紺染について』という論文を書いていて、
その中でも紫根染めの復興に対する思いが語られています。

現在でも紫根染めの多くが岩手県でつくられています。
昔からの技術を受け継いできた紫根染めは
深みのある色合いで意匠の美しさを引き立てます。



上の写真は絹紬(白山紬)を用いた紫根染めのお着物です。
鹿の子絞りにより、縦縞文様があらわされています。
シンプルだからこそ、ごまかしのきかない絞り染めの意匠と相まって、
紫根という色の高貴な艶が煌めくように感じられます。

紫色は、平安時代に用いられた襲の色目の中でも、
組み合わせを変えることで、四季を通じて用いられている色です。
合わせる帯や小物によって、年中ご着用いただける色合いなので、
秋冬にはもちろん、季節の変わり目の時期にも、重宝いただけそうですね。

※上の写真の南部紫根染め 絞り染め 縞文様 白山紬 袷は花邑銀座店でご紹介している商品です。

花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 9 月 28 日(木)予定です。

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コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
紫根染め (関根)
2012-09-23 10:00:13
先日はお昼休み中のところ申し訳ありませんでした。

先週、仕事兼ねて盛岡に行ってきました。以前より本場で紫根染めを見てみたいと思い、草紫堂さんへ行ってきたばかりでした。そこで見せてもらった数多くの絞り模様の中で、シンプルだけど今まで見たことの無い絞り模様に惹かれたのが、この縞の鹿の子絞り模様でした。実際見せて頂いたのは、茜染めのもので染め具合によって色合いが違ってくるのも趣があって、気持ちが高ぶっりっぱなしでした。
帰ってきて、このブログを拝見し、紫根染めの縞鹿の子絞りの着物を見てまたまたビックリです。草紫堂さんで見れなかったのが見れちゃったのですから・・。

伝統を守り続ける方々の気持ちのこもった作品に感動してしまいます。だから惹きつけられるのでしょうね。花邑さんの作品も布を大事にした気持ちが込められていて魅了されっぱなしです。
これからもステキな作品楽しみにしています。
 
 
 
コメントありがとうございます。 (杉江)
2012-09-26 18:16:02
いつも花邑をご愛顧いただき、
誠にありがとうございます。
このたびも、心あたたまるコメントをくださり、
重ねて御礼申し上げます。とても励みになります。
盛岡にて、草紫堂さんに行かれたとは、
不思議なご縁を感じますね。

縞の鹿の子絞りは、シンプルな意匠だからこそ、
草木染めならではの深い色合いと、手絞りによるあじわいがぐっとにじみでて、美しいですね。
関根さんがご指摘されてように、
伝統を守り、真摯に取り組んでいらっしゃるからこそごまかしのきかないこういった作品がつくれるのでしょう。
お時間ありましたら、ぜひお店のほうにお立ち寄りいただき、実物をご覧いただけたら幸いです。
ありがとうございました。
 
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