花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「氷割れ(ひわれ)文様」について

2011-05-18 | 文様について

presented by hanamura


5月も中旬を過ぎました。
沖縄では早くも梅雨入りということで、
季節はもう夏へと向かっているようです。

ここ東京では、晴れた日の昼間には半袖で歩けるぐらいに、
暑い日が多くなってきました。

さて今日は、暑い季節の最中に
涼をもたらしてくれる文様である「氷割れ(ひわれ)文様」について
お話ししてみたいと思います。

氷割れ文様とは、大小不規則な三角形や四角形、五角形といった
幾何学的な図形が連なった文様です。
氷に亀裂ができ、一面にひびが入った様子に似ていることから
そのように名づけられたようで、
実際に氷に入ったひびを模して考案されたわけではないようです。
「氷割れ」という名前からはもちろん、
ひび以外の白地が多いことからも
涼やかさが感じられる文様です。

この「氷割れ文様」は
「氷裂(ひょうれつ)文様」ともよばれ、
中国で考案され、おもに陶器の文様として用いられていました。
中国では、南宋時代に陶器の生産が盛んになりますが、
当時宮廷御用品を受注していた郊壇官窯(こうだんかかんよう)がつくった
青磁の表面にはこうした氷裂文様が多く見られます。
こうした氷裂文様は釉薬(ゆうやく)のひびによってあらわされていました。

その後清時代になると、
「五彩」とよばれる色鮮やかな陶器が焼かれるようになります。
氷裂文様は、このときに流行しました。

日本にその氷裂文様が伝えられたのは
江戸時代のはじめごろです。

中国からもたらされた氷裂文様は、
日本でも陶磁器の意匠に用いられ、
さらには襖絵などにも使われるようになりました。

江戸時代中ごろには、着物や帯の文様としても、
多く用いられました。
ちなみに、着物や帯の意匠では、
「氷割れ文様」とよばれることが多いようです。

氷割れ文様は、着物や帯の意匠においては、
多くの場合に主役の文様を引き立てる脇役として用いられます。



上の写真の名古屋帯は、昭和初期につくられた絹布から
お仕立て替えしたものです。

船文様の背景に配された氷割れ文様は、
意匠全体に奥行きをもたらしています。
本来は割れた氷から冷気が漂うかのような氷割文様ですが、
こちらのお品では、氷のひびというよりも
波面に太陽の光が乱反射しているかのような雰囲気です。
いずれにしても水の持つ涼を誘う情感が込められた意匠は、
これからの季節にぴったりでしょう。

梅雨が明けてもう少し暑くなったら、
氷割文様が配された陶製の杯で冷酒をキュッと、
というのもいいかもしれませんね。

※写真は花邑 銀座店にてご紹介している名古屋帯です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は5月25日(水)予定です。

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