花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「柳文様について」

2010-07-27 | 文様について

presented by hanamura


毎日猛暑続きで、いよいよ夏本番ですね。
ここ東京では、セミが木の上で大合唱をしています。

花火大会や盆踊り大会などが
各地で催されているようで、
街では浴衣を着た人たちを
多くみかけるようになりました。

さて、夏の風物詩といえば、
花火や盆踊りのほかに、
「怪談話」がありますよね。

背筋が凍るような怖い怪談話には、
一瞬とはいえ夏の暑さを忘れてしまいます。

怪談話というと、「幽霊」、
幽霊といえば、つきものなのが「柳」

しなだれた柳の姿と、
幽霊の恨めしさとが重なってみえる情景は、
とても恐怖感を誘います。

柳は、古くから日本に自生する樹木です。
現代でも、川岸や街路樹など、
いたるところに植えられているので、
目にする機会も多いですね。

今日は、その柳の文様について
お話ししましょう。

柳の種類は約350種もあるようですが、
日本では柳というと、
一般的に、枝が垂れ下がった
「枝垂柳(しだれやなぎ)」を指します。

柳は、春になるとほかの植物に先駆けて
ぐんぐん枝を伸ばす生命力が強い樹木です。
その根は頑丈で、柳を植えると地盤が強くなるため、
川岸などでは地盤が崩れるのを防ぐためにも植えられるのです。

また、枝葉はサリチル酸という
解熱鎮痛効果のある養分も含まれています。

そのため、柳文様は災いから身を守る
吉祥文様とされ、
古くは平安時代の頃より
着物や調度品などの意匠に
多く用いられてきました。

柳の文様は
単一であらわされることもありますが、
多くは、ほかの動植物などと組み合わされて文様化されます。

その中でも、
柳と燕の組み合わせは、
花札のモチーフとしても有名でしょう。
戦後には、銀座の春に芽吹いた街路樹の柳と燕を題材に
歌謡曲もつくられてヒットしました。



流水などとの組み合わせでは
水辺の涼やかさがあらわされ、
夏もののの着物などにあらわされます。

雪持ち柳文様とよばれる
柳の葉に雪が積もった文様もあります。

しなやかに揺れるさまがあらわされる柳文様は、
一見単純に見えながらも、
風の動きや空気の流れを感じさせることで
全体の意匠に空間性をもたらしているのです。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は8月3日(火)予定です。


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「秋草文様」について

2010-07-20 | 文様について

presented by hanamura


梅雨が明けて、ぐんと暑くなってきましたね。
空にはもくもくとした入道雲が
どーんと居座っています。

先日、道を歩いていると
どこからか風鈴の「リンリーン」という
涼やかな音色が聞こえてきました。
暑い季節の風鈴の音は、一服の清涼剤ですね。

これからの季節には、
風鈴のように涼を演出する
心配りが随所に見られます。

もちろん、夏用の着物や帯の意匠にも、
目に涼しいものがたくさんあります。
今日は、その中のひとつである
「秋草文様」についてお話ししましょう。

「秋草文様」とは、
秋の野山などに咲く草花をモチーフにした文様です。

秋に咲く草花は多くありますが、
秋草文様にあらわされるものは、
「萩(はぎ)」「薄(すすき)」「葛(くず)」「撫子(なでしこ)」
「女郎花(おみなえし)」「藤袴(ふじはかま)」「桔梗(ききょう)」
といった秋の七草が中心となり、
ときには、菊や竜胆(りんどう)なども加えられます。

秋草文様には、
秋の七草が全部あらわされているもののほかにも
萩や薄のみといったものなどがあり、
その時々で草花の組み合わせは変わります。



もともと秋の七草とは、
奈良時代の歌人、山上憶良(やまのうえ の おくら)が
秋に愛でる草花を選び、
詩にして詠んだのがはじまりです。

奈良時代~平安時代に編纂された
「万葉集」には山上憶良を中心に
秋草を詠んだ詩が多くみられます。

「万葉集」以降、
秋草文様は四季を代表する草花文様の中でも
もっとも人気のある文様のひとつとして
工芸品や日本画などの題材にも多く用いられました。

着物や帯の意匠は、
季節を先取りしたものが多いのですが、
夏のお召しものにあらわされる秋草文様は
とくに人気があります。

とはいえ、秋草文様は、決して華やかではありません。
どちらかといえば、秋の野山にひっそりと自生する草花たちです。

生命力がみなぎる夏が瞬く間に終わり、
涼やかな風が吹き通る秋に咲く草花からは、
「季節のうつろい」というものが
嘆息とともに連想されます。
そんなはかなさや侘びしさといった
和の風情を強く感じさせてくれる秋草文様は、
日本人の情緒にぴったりくる文様なのでしょう。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

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次回の更新は7月27日(火)予定です。


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「千鳥文様」について

2010-07-13 | 文様について

presented by hanamura


7月も半ばになりました。
本州では、まもなく梅雨明けのようです。
梅雨明け近くなると、
大雨が降りやすいらしく、
各地で豪雨の日が続いています。

やはりこうした湿気が多い日は
商品にとって大敵です。
はやくカラっとした真夏らしい天候になってくれるのを
心待ちにするばかりです。

さて、真夏らしいものといえば、
皆さまは何を想像されますか?
「向日葵(ひまわり)」「西瓜(すいか)」「花火」でしょうか?
「かき氷」というのも真夏の風物詩でしょう。

この季節になると、あちらこちらで
かき氷の旗をみかけます。
じりじりとした夏の陽射しの中を歩いているときに、
白地に青い波が描かれ、
赤い字で「氷」と大きく書かれた旗を見つけると、
思わず足がそちらに向かってしまいますね。

「氷」という字だけでも涼やかですが、
このかき氷の旗をよく見ると
鳥の絵が配されているものが多いことをご存じですか?
下の写真をご覧ください。



波に戯れるように、かわいらしい鳥がいますよね?
「千鳥」という鳥文様です。

今回は、その千鳥(ちどり)文様について
お話ししましょう。

「千鳥」と聞くと、まず思い浮かぶのは
「千鳥格子(ちどりごうし)の文様でしょう。
千鳥の文様が格子のように連ねられた文様なので
「千鳥格子」とよばれるのは皆さんもご存じでしょう。
洋装の世界では「ハウンド・トゥース・チェック」ともよばれますね。

千鳥の文様には氷の旗の千鳥のような
デフォルメされたふっくらとしたものや
千鳥格子のような抽象的なものだけではなく、
写実的なものも多くあります。

もともと、千鳥文様のモデルになったのは
海岸や川、野山などで群れをなして飛ぶ、
頭の丸々とした小鳥です。
「チチチチチ」と鳴く鳥であることから、
「チドリ」という名前が付けられたといわれています。

可愛らしい千鳥は、
古くから人々に愛され、
万葉集にも千鳥を詠んだ詩が多くみられます。

その千鳥が文様のモチーフになったのは、
平安時代のころです。
当時つくられた蒔絵や染織品の意匠に
数多く用いられています。

桃山時代や、江戸時代につくられた小袖には
優雅な茶屋辻や水辺などの風景にあらわされ、
意匠に動きを加えています。
「氷」マークでおなじみの
ふっくらとした千鳥文様も
江戸時代に登場しました。



千鳥文様は、伝統文様として、
その可愛さから現代でも最も人気のあるの文様のひとつです。

真夏はビールがいちばんおいしくなる季節です。
思わず飲み過ぎた帰り道には、
気がつくと「千鳥足」ということも増えそうですね。

※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は7月20日(火)予定です。


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お休みのお知らせ

2010-07-05 | 花邑日記

presented by hanamura


いつも「花邑の帯あそび」にお立寄りいただき、
誠にありがとうございます。
7月6日(火)更新予定の「花邑の帯あそび」は、
お楽しみにお待ちいただいていた方には、
申し訳ございませんが、
急きょ遠方に仕入れに行くことになり、次週6月13日(火)になります。

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次回の更新は6月13日(火)予定です。