presented by hanamura ginza
はやいもので、今年も残すところわずかとなりました。
少し前までは、クリスマスムード一色だった街では、
門松やしめ縄などが飾られ、
すっかりお正月の雰囲気へと様変わりしています。
さて、年の瀬といえば大掃除ですね。
大掃除は、もともと 12 月 13 日の「事始めの日」に行われていた
「煤払い(すすはらい)」という年中行事が起源になっています。
「煤払い」では、神棚や仏壇などを掃除してから家中の埃を掃き清めたそうで、
その掃除に用いた箒も神聖なものとして、
丁寧に扱われました。
日本では古来より「穢れ」を嫌ってきましたが、
大掃除にもそういった日本の文化が反映されているのでしょう。
いずれにしても、 溜った埃を落とし、
身も心も清浄にして、
新しい年を迎えるのは気持ちの良いことですね。
普段は目をつぶって掃除をしなかったこまかなところも掃除をして、
鏡餅や門松などのお正月飾りを置くと、
普段見慣れているはずの住処も新鮮に思え、
新しい年を迎える心構えができてきます。
また、そういった大掃除を通じて、
自分の住んでいる「すみか」を見直す気持ちにもなりますね。
お正月は、ゴールデンウィークなどの長期休暇よりも、
家でゆっくりと過ごす方が多く、「家」と付き合う時間も多くなります。
さて、この「家」は古くから文様化され、
調度品などにもあらわされ、着物や帯の意匠にも多く登場します。
そこで、今日はこの家屋文様についてお話ししましょう。
生活の拠点となる「家」は、
その土地の風土や文化を反映するものです。
日本では、家を建てて住みはじめたのは、
縄文時代とされています。
この時代になると、土器や弓矢の技術が進歩し、
食糧の確保が安定し、移動をする必要がなくなったためといわれています。
この時代には、地面を掘り柱を建てて草などでまわりをおおう
「たて穴式住居」が主流でした。
やがて、弥生時代になると、
穀物の貯蔵などのために
地面からかなり高いところに床を張る「高床式住居」が
つくられるようになりました。
また、家屋の形式も増え、
奈良県で古墳時代の地層から発掘された大きな鏡の背面には、
当時建てられていた種類の異なる家屋が文様化され、あらわされています。
この鏡は「家屋文鏡(かおくもんきょう)」と呼ばれ、
竪穴(たてあな)住居、低床住居、高床住居、倉庫とみられる4種類の
建物が交互にあらわされています。
それぞれの建物はその用途により使い分けられていたようで、
当時の生活を知る上でも大切な資料とされています。
また、伊勢神宮に伝わる「神宮裂(じんぐうぎれ)」のなかには、
家屋が連続的に織りあらわされた
「屋形文錦(やがたもんにしき)」ととばれる
錦織の織布が伝えられています。
伊勢神宮には、日本の皇室の祖先神である天照大神が祀られ、
その神秘性が今日まで守られてきたのですが、
「屋形文錦」は、他で使用できず複製も許されない秘文とされてきました。
平安時代になると、貴族たちは寝殿造りという邸宅を構えるようになりました。
この寝殿造りは源氏物語絵巻などにもあらわされ、
現代でもその様子を知ることができます。
やがて武士が権力を握るようになると、
贅を尽くした寝殿造りは簡素な書院造りへと変化し、
そのなかで、現在の客間にも見られる床(とこ)飾りが
つくられるようになりました。
また、庶民の住居もその地域の風土に合わせたものが
つくられるようになりました。
世界遺産に指定された白川郷の合掌(がっしょう)造りもこうした民家の一つで、
江戸時代の浮世絵には、里山の風景の中に民家をあらわしたものが多くみられます。
また、着物や帯の文様としても家屋の文様はたびたび登場するようになり、
当時人気を博した「茶屋辻文様」では
素朴な茅葺の民家が好んであらわされました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/34/f30cf646262794507bbbef4d90a9a5e7.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/23/e4f5e33ee28ada09e051993c57c45b0c.jpg)
上の写真2枚は昭和初期~中期頃につくられた絹布からお仕立て替えした名古屋帯です。
こうした里山の風景をあらわした意匠は、
昭和に入ってから多くみられるようなりました。
近代化がが進むにつれ、
故郷から離れて都会に移り住むようになった人々にとって、
こうした里山の風景は、懐かしくあたたかなものだったのでしょう。
また、里山の景色とともに、家々が連なる様子は、
そこに人物が描かれていなくても、温もりが感じられます。
※上の写真の「里山文 型染め 名古屋帯 」と上の写真の「楼閣山水文様の型染め名古屋帯 」は花邑 銀座店でご紹介している商品です。
●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 1 月 15 日(火)予定です。
帯のアトリエ 花邑-hanamura- 銀座店ホームページへ
↓
![](http://hanamura.wj.shopserve.jp/pic-labo/rogo2.jpg)