花邑の帯あそび
1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…
 




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「藤布の帯と対馬麻の帯について」

ただいま「花邑」では、「手織りの帯展」を催しています。

「花邑の帯遊び」をご覧のみなさん、
もうお越しいただけたでしょうか?
手織りの布から仕立てた、味わい深い帯を揃えてお待ちしていますので、
「まだ」という方は、ぜひ足をお運びください。

今回の「花邑の帯遊び」は、その企画展で取り扱っている
「手織りの帯」の中から「藤布(ふじふ)」と「対馬麻(つしまあさ)」
についてのおはなしをします。

「藤布(ふじふ)」と「対馬麻(つしまあさ)」は、
2つとも自然の素材を用いて、手作業で織られた布です。

「藤布」の原料には、藤の蔓(つる)の繊維が用いられます。
はじめに、皮のかたい繊維の部分を木槌で叩いてから外側を剥ぎます。 
それから、アラソ(外皮の白い繊維)を陰干しして乾燥させます。
そのアラソに灰をまぶし、灰炊きをして繊維を柔らかくします。
そして、撚りをかけて糸にします。
この糸を手で織ったものが「藤布」となります。



藤布は昔から日本各地の山里で織られていました。
「古事記」にも、藤布にまつわる神話が書かれているようです。

山里で生活を営む人々にとって、藤の蔓を刈ることは、
木の生育を助けるのに必要な仕事でした。
その中で、刈りとった蔓を糸にして織り、
布にするということが考えだされたのでしょう。
また、糸になるための藤の蔓は、
枝の出ていないまっすぐなものが用いられます。

しかし、現代では山里に住む人が少なくなり、山が荒れてしまいました。
そのため、糸に用いる状態のよい藤の蔓を手に入れることは、
とても困難になっているようです。
また、「藤布」をつくるには労力が必要なため、
つくる人も減ってきています。

一方の「対馬麻」は、現在ではまったくつくられていない布です。

「対馬麻」は、長崎県の対馬でつくられていたものです。
その原料には、対馬に自生した大麻の繊維が用いられていました。
大麻の繊維は、茎を精錬して(※1)採りだします。
採りだした繊維を手で紡いで撚りをかけ、糸にします。
この糸を手作業で織ったものが「対馬麻」と呼ばれる布です。



この「対馬麻」は対馬でどのように用いられていたのでしょうか?
対馬にある役所の方に問い合わせてみました。
そのおはなしでは、
古代から祭りなどの「はれ」の行事に、
この対馬麻でつくった着物を身につけ、
神聖なものとして、大切に用いたということでした。

しかし、現在では「対馬麻」はまったく作られていません。
それは、「対馬麻」の原料となっていた大麻そのものが
昭和初期に生産が禁止され、対馬でも大麻の栽培ができなくなったからです。

「対馬麻」や「藤布」のような自然素材の布は、
時代が経つごとに、手に入れるのも
むずかしいものになってしまいました。

むかしはその土地の自然の中からつくられ、
使われていた手織りの布。
その手織りの布は、自然と共存して暮らした人々のあたたかさを
伝えるとても味わい深く、貴重なものなのです。

● 写真の藤布と対馬麻の帯は「帯のアトリエ 花邑hanamura」にて取り扱っております。

(※1)水に漬けて、表皮や木片部を分解することです。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は5月6日(火)予定です。


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「お染名古屋帯」「お染帯」「松葉帯」について

おなじみの名古屋帯にも種類があるのを皆さんご存知ですか。
一般的な名古屋帯に対して「お染名古屋帯」という帯があります。
「お染名古屋帯」とは別に「お染帯」という帯もあるのですが、
「お染(そめ)」とは、なんだか愛嬌があって、
可愛らしい呼び名ですよね。

「お染」とは、歌舞伎や浄瑠璃で登場する娘役の名前です。
この「お染」が着用していた「帯」のことを
「お染帯」と呼びます。

「お染帯」は、舞台の上で目立つように考案されたものでした。
黒繻子(くろしゅす)をだいたんに表地の両端に配置し、
その中間には、鮮やかな色で鹿の子絞りが施されています。
裏地にも表地と同じ黒繻子が用いられます。

「八百屋お七」(※1)の物語で「お七」も同じ形の帯を着用していたこ
とから、「お七帯」と呼ばれることもあります。

しかし、「お染名古屋帯」は、
「お染帯」、「お七帯」のような
だいたんな柄行きの帯ではありません。
そのつくりもだいぶ違うものです。

まず、表地には帯反のみが用いられ、
「お染帯」のように両端に黒繻子を配置することはありません。
裏側の仕立て方にも違いがあります。
「お染名古屋帯」のお太鼓からたれの部分には、
表地の帯反が折り返されています。



前から手先部分の裏地には別布を使いますが、
その素材は「お染帯」のような黒繻子ではなく、
シンモス(※2)や羽二重(※3)を用います。
表地を2分ほど返して仕立てます。
つまり、折り返された表地が額縁のようになっています。
これは、帯を結んだときに裏地の素材がみえないようにするためです。
「お染名古屋帯」は、この裏側のつくりから
「額縁仕立て」とも呼ばれます。

この「額縁仕立て」の帯には、「松葉帯」と呼ばれる帯もあります。
仕立て方は「お染名古屋帯」と同じですが、
手先部分のみを2つ折りにして縫い合わせます。
この帯を上から見ると、まるで松葉のようにみえます。
このすがたから「松葉帯」という名前がついたようです。
ちなみに、この2つ折りの長さによって
松葉(2尺5寸)と大松葉(1尺)に分けられます。



「お染名古屋帯」「松葉帯」の仕立て上がりの寸法は、
巾8寸~8寸2分(31cm)、長さ9尺5寸(360cm)。
名古屋帯や腹合わせ帯と同じ寸法です。

しかし、この2つの帯は額縁仕立てなので、
帯の裏地には芯モスや羽二重を使うため、
用いる帯地が少なくてすみます。
また、前を折り合わせたときに
帯反を合わせたときよりも軽くなるのです。

つまり、どちらもお手ごろな値段で
気軽に身につけられる帯なのですが、
名古屋帯や腹合わせの普及、
また仕立てが特殊なためにたいへん手間がかかることもあって、
今では希少になってきています。

(※1)天和二年の江戸大火事の折に、身をよせた寺の小姓に恋心を抱い
たお七は、もう一度火災になればまた会えると自らの手で放火をしてしまい、つい
には火刑となってしまう悲恋の物語です。

(※2)薄地の平織綿布です。

(※3)和服の裏地として使われる平織の絹織物です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は4月29日(火)予定です。


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「腹合わせ帯」について

「花邑の帯遊び」の第1回目で
「名古屋帯」について※お話ししましたが、
帯には、名古屋帯のほかに10種ほどの
仕立て方やつくりが異なるものがあります。
これからは、その帯の種類についてお話ししていきましょう。
今回お話しする帯は、まず「腹合わせ帯」です。



「腹合わせ帯」とは、同じ寸法の布地2枚を合わせて
仕立てた帯のことです。
「腹合わせ帯」の寸法は、長さ9尺5寸、巾8寸~8寸2分。
この寸法は「名古屋帯」と同じです。
そして「名古屋帯」のように、
おもにふだん使いの着物に用いられます。

しかし、かたちは「名古屋帯」とは若干異なります。
「名古屋帯」は前巾を、お太鼓巾の半分で仕立てた帯です。
一方「腹合わせ帯」は、お太鼓のたれから手先までを
まったく同じ巾に仕立てた帯のことを指します。

そのため、帯を結ぶときには、
お腹の部分にあたる前巾の部分を折り合わせなくてはいけません。
このことから「腹合わせ帯」という呼び名がついたようです。

はじめから前巾が折り合わされて、
仕立てがされている「名古屋帯」の便利さに慣れてしまった現代では、
帯を結ぶときに手間がかかると感じる人もいるでしょう。

しかし「腹合わせ帯」は、大正時代までは
もっとも着用されていた帯だったのです。

「腹合わせ帯」は元禄時代(1688年~1703年)につくられたのが
はじまりだといわれています。
現在のものとはかたちがすこし違っていました。

当時の寸法は、長さ1丈5寸8分、巾8寸。
巾は、現在とあまり変わりませんが、
長さは、1尺(3.8cm)ほど長く仕立てられています。
これは、帯の結び方が現在とは違うためです。

また、当時の「腹合わせ帯」は、
黒天鵞絨(くろビロード)と白繻子(しろしゅす)を合わせたものでした。
表地と裏地を反対の色で仕立てたことから、
「昼夜帯」または「鯨帯」とも呼ばれていたようです。

「腹合わせ帯」は、江戸から明治にかけて庶民たちに愛用されました。
しかし、大正時代に「名古屋帯」が考案され、
戦争などで布が不足になったこともあり、
「腹合わせ帯」を結ぶ人は、しだいに減っていきました。

しかし、現在でも「腹合わせ帯」がなくなることはありません。
それは、「名古屋帯」とは違った特長があるからです。

「腹合わせ帯」は、前巾にあたる部分が折られていないので、
体形に合わせて前巾を調節することができるのです。
前巾が調節できれば、
身長に合わせてバランスよく着物を着こなせます。



また、むかしとは違って、
表地と裏地の色柄をさまざまに合わせることもできます。
いわばリバーシブルの帯なのです。
一般的に「腹合わせ帯」は、
「名古屋帯」よりも高価なものですが、
1本で2度楽しめるので“お得な”帯ともいえますね。

「名古屋帯」とは一味ちがった「腹合わせ帯」を
ときには楽しんでみるのもいかがでしょうか。

※2007年12月07日更新のブログ「名古屋帯について」を参照してください。

● 写真の腹合わせ帯は、帯のアトリエ「花邑hanamura」にて販売しています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は4月22日(火)予定です。


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「押し板」について

帯仕立ての道具についてのお話は、
今回をもって最後となります。
そして、今回のお話に登場する道具も、
帯の仕立ての最後に用いられるものです。

それでは、その帯の仕立てのおわりに使われる道具、
「押し板」についてお話ししていきましょう。



帯の仕立てでは、帯のかたちがひととおり完成したあとで
「仕上げ」の作業をしていきます。
「仕上げ」とは、帯にアイロンをかける作業のことです。
帯の上にあて布を敷いてから、霧吹きをかけます。
そして、帯の表側と裏側を丹念にアイロンがけしていきます。

また、この「仕上げ」では、アイロンがけと同時に
帯の「角」や「はし」が歪んでいないかといった
最終チェックもします。

「仕上げ」作業を終えたあとは、帯をたたみます。
この「帯をたたむ」ということは
とても簡単な作業のように思えますよね。
しかし、このときにたたみ方がおかしいと
せっかく仕立てた帯にしわができてしまいます。
さらには、帯を結んだときにみえる部分に
折り線がついてしまうこともあるのです。

そのため、帯をまっすぐにして
しわができないように気を配りながら、
ていねいにたたんでいかなくてはなりません。

帯をたたみ終えると、
いよいよ「総仕上げ」になります。

このとき、「押し板」でたたんだ帯をはさみます。
そして「押し板」の上に重石を均等に乗せ、そのまま数時間おきます。



「押し板」で挟み、重石で圧力を加えることで
余分な空気を抜いて、帯に生じた「浮き」をとります。

帯は仕立てると、その作業の過程で余分な空気が入ってしまうため、
布と布との間に「浮き」が生じます。
この「浮き」は「仕上げ」のアイロンがけにより、
ある程度は抑えられますが、完全に抑えることはむずかしいものです。

そのため圧力を加えて「浮き」をとることで、
帯の表面がより平滑になり、張りも生まれてくるのです。
また、「仕上げ」のアイロンではとれなかった
細かいしわもこのときに伸ばすことができます。

「押し板」を使った「総仕上げ」が終われば、
帯の仕立ては終了です。

この「押し板」は通気性のよい薄い木材からできています。
その寸法は長さ1尺4寸9分(56.5cm)、巾1尺2分(38.5cm)。
一方、たたまれた帯の寸法は、
長さ1尺2寸4分(47cm)、巾8寸2分(31cm)になります。
「押し板」は、たたんだ帯をはさむのに丁度よいつくりになっているのです。

「押し板」のつくりは、とてもシンプルなものです。
しかしシンプルな道具は、「押し板」だけではありせん。
帯の仕立てで使う道具すべてに、よけいな装飾はないのです。
目的となる作業、そして使いやすさだけを考えぬいた末に
つくりだされたものばかりです。

この道具の“かたち”は、昔から今日へと
永く変わることなく受け継がれてきています。
そして、“かたち”の変わらない「道具」を使うことによって、
帯のつくり手として忘れてはならない、
大切な“こころ”も受け継がれていく気がするのです。

15回にわたってお届けしてきました「帯仕立ての道具」のお話。
いかがでしたでしょうか?
少しでも興味を持ってお読みいただけていたら幸いです。

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「目打ち」について

「目打ち(めうち)」とは、下の写真のように
先が鋭く尖った細い金属の棒に、木製の柄がついた道具です。



この「目打ち」とかたちのよく似た道具に
「目打ち釘」や「千枚通し」と呼ばれるものがあります。
その長さや太さは違いますが、「目打ち」と同じように
むかしからいろいろな仕事に用いられてきました。

「目打ち釘」はうなぎをさばくときに用いられる道具です。
鋭く尖った先をうなぎの目に打ち込んで、
うなぎを抑える役目があります。

「千枚通し」は製本のときに用いられます。
重なった紙にさして、本を綴じるための穴をあけるために用いられます。
「千枚通し」という呼び名のように、
重なった千枚の紙を通すことができるぐらい先が長いものです。

帯の仕立てに用いる「目打ち」は、
この「千枚通し」という名で呼ばれることもあります。
しかし、実際に帯の仕立てに用いるものは、長さ15cmほどで、
製本のときに用いる「千枚通し」より短いものです。

「目打ち」は、帯の仕立てにおいて
さまざまな作業に用いられています。

帯芯の巾を帯包丁で裁つ作業※1では、
6つ折りにして厚くなった帯芯の角に
「目打ち」の先を刺して印をつけます。

「帯のはしをつくる」※2ときにも「目打ち」を用います。
この作業では、同時に帯の「角」となる部分もつくられます。
そして、このときには「目打ち」の先ではなく、
細い金属の棒状の部分を活用します。

はじめに、帯反のはしの線と1枚目の帯芯のはしを合わせ、
帯反を内側に折って「糊」で仮止めをします。
そのあとに帯反の底辺の出来上がり線と帯芯の底辺を合わせ、
さらに帯反を内側に折ります。
この2つの過程を経て帯の「角」となる部分がつくられます。



しかし、底辺を合わせて折るときに「角」がもたつきやすいため、
きれいに折ることはむずかしくなってしまいます。
そのため、帯芯の底辺のはしの線に「目打ち」を合わせて置き、
「目打ち」の棒に沿わせて帯反を内側に折り込みます。
こうすることで「目打ち」の棒が「角」のもたつきを抑えて、
帯反の底辺をきれいな直線に折ることができるのです。
このとき「目打ち」の棒は、
帯反を帯芯の底辺のはしの線より折り込むことがないように
ストッパーのような役割もします。

また、帯反と帯芯を綴じて表側にひっくり返したあとは、
返された帯のはしや角が中に入り込んでいます。
そのため、「目打ち」の先で中に入り込んだ角を引っ張りだしてから
帯のはしを整えます。
そのときに角が浮いてしまう場合には、
「目打ち」を逆さまに持ち、柄の面の部分で角を叩いて角を落ちつかせます。

また、仕付け糸などを外すときにも「目打ち」は用いられます。
「目打ち」は「目」を「打つ」と書かれるため、痛々しい印象のする名前ですよね。
でも、「目打ち」はほんとうに便利な道具なのです。

※1.1月15日更新のブログ「帯包丁について(その2)」を参照してください。

※2.2月26日更新のブログ「ヤマト糊について」を参照してください。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は4月8日(火)予定です。


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