presented by hanamura
「藤布の帯と対馬麻の帯について」
ただいま「花邑」では、「手織りの帯展」を催しています。
「花邑の帯遊び」をご覧のみなさん、
もうお越しいただけたでしょうか?
手織りの布から仕立てた、味わい深い帯を揃えてお待ちしていますので、
「まだ」という方は、ぜひ足をお運びください。
今回の「花邑の帯遊び」は、その企画展で取り扱っている
「手織りの帯」の中から「藤布(ふじふ)」と「対馬麻(つしまあさ)」
についてのおはなしをします。
「藤布(ふじふ)」と「対馬麻(つしまあさ)」は、
2つとも自然の素材を用いて、手作業で織られた布です。
「藤布」の原料には、藤の蔓(つる)の繊維が用いられます。
はじめに、皮のかたい繊維の部分を木槌で叩いてから外側を剥ぎます。
それから、アラソ(外皮の白い繊維)を陰干しして乾燥させます。
そのアラソに灰をまぶし、灰炊きをして繊維を柔らかくします。
そして、撚りをかけて糸にします。
この糸を手で織ったものが「藤布」となります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/f4/09629326343431053aad3ebdc8dcc48b.jpg)
藤布は昔から日本各地の山里で織られていました。
「古事記」にも、藤布にまつわる神話が書かれているようです。
山里で生活を営む人々にとって、藤の蔓を刈ることは、
木の生育を助けるのに必要な仕事でした。
その中で、刈りとった蔓を糸にして織り、
布にするということが考えだされたのでしょう。
また、糸になるための藤の蔓は、
枝の出ていないまっすぐなものが用いられます。
しかし、現代では山里に住む人が少なくなり、山が荒れてしまいました。
そのため、糸に用いる状態のよい藤の蔓を手に入れることは、
とても困難になっているようです。
また、「藤布」をつくるには労力が必要なため、
つくる人も減ってきています。
一方の「対馬麻」は、現在ではまったくつくられていない布です。
「対馬麻」は、長崎県の対馬でつくられていたものです。
その原料には、対馬に自生した大麻の繊維が用いられていました。
大麻の繊維は、茎を精錬して(※1)採りだします。
採りだした繊維を手で紡いで撚りをかけ、糸にします。
この糸を手作業で織ったものが「対馬麻」と呼ばれる布です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/60/50df580274d6dff34ad38af63caf5dc3.jpg)
この「対馬麻」は対馬でどのように用いられていたのでしょうか?
対馬にある役所の方に問い合わせてみました。
そのおはなしでは、
古代から祭りなどの「はれ」の行事に、
この対馬麻でつくった着物を身につけ、
神聖なものとして、大切に用いたということでした。
しかし、現在では「対馬麻」はまったく作られていません。
それは、「対馬麻」の原料となっていた大麻そのものが
昭和初期に生産が禁止され、対馬でも大麻の栽培ができなくなったからです。
「対馬麻」や「藤布」のような自然素材の布は、
時代が経つごとに、手に入れるのも
むずかしいものになってしまいました。
むかしはその土地の自然の中からつくられ、
使われていた手織りの布。
その手織りの布は、自然と共存して暮らした人々のあたたかさを
伝えるとても味わい深く、貴重なものなのです。
● 写真の藤布と対馬麻の帯は「帯のアトリエ 花邑hanamura」にて取り扱っております。
(※1)水に漬けて、表皮や木片部を分解することです。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は5月6日(火)予定です。
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