presented by hanamura
「花邑日記」
日の光に木の葉が照らされる暖かな日が続いています。
この日、そよ風に草花が揺れる庭には、美しい紫色の野牡丹が咲いていました。
その野牡丹は「紫紺牡丹」という名前で、
もともとは南国で咲く花だそうです。
そのため、寒さに弱く本来ならば時期が過ぎた花なんです。
それがこの季節にこんなにも生き生きと咲いているのは、
この気候のせいでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/f8/cae3f38bbfad88502a28089c5a137e42.jpg)
さて、せっかくのおだやかな天気なので、
仕入れたばかりの「和更紗」(※1)を洗うことにしました。
仕入れた和更紗のほとんどは、
江戸時代後期から大正時代につくられたものです。
歳月を経て多少色が褪せていますが、
それがかえって和更紗を味わい深くしています。
しかし、埃や汚れはどうしても付いてしまっています。
こういった和更紗などの古い布は、
水に浸けて洗うことで埃や汚れが落ち、
布の繊維も整い、布そのものが蘇ったように「シャキッ」とします。
そのため、花邑では仕入れた和更紗の多くを洗ってから、帯に仕立てています。
しかし、全く水に通されたことがなく、
色が褪せていない和更紗は、
水に通すと色が落ちてしまうことがあります。
こういった和更紗は保存状態も良いので、
洗わずにアイロンでしわを伸ばすだけにしています。
また、たくさんの色が用いられている和更紗は
色移りが心配なので
プロの洗い張り屋さんに頼んでいます。
しかし何回か水に通され、ある程度まで色が褪せた和更紗は、
水を通してもほとんど色落ちの心配がないので
そのまま水で手洗いしています。
洗面所に水を溜め、弱酸性の洗剤をすこし入れ、
手で丁寧に押し洗いをします。
洗った和更紗は軽く脱水をかけて庭に干します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/2f/2fcce95ce69e08e9333b4751ea929c97.jpg)
物干し竿に干された和更紗が、
庭の草花と融け合って風に揺れています。
和更紗の文様が庭を彩ります。
その美しい光景に思わず見とれてしまいました。
しかし、見とれてばかりではいられません。
この日のようによく晴れた日は、布の乾きがとても早いのです。
色が落ちるのは、水に浸けたときよりも布が乾くときなのだそうです。
そのため完全に乾かすのではなく、
生乾きでアイロンをかけて色落ちを防がなければいけません。
また、生乾きの状態ならば、布の目を整えてアイロンがけができます。
布の織り方によって乾く速度も変わってくるので、注意が必要です。
そのため、乾きすぎることのないように気を配りながら
手で布をさわり乾き具合をみます。
暖かな風に揺られた和更紗の布が
帯へと生まれかわり、着物を彩ります。
(※1)「和更紗について」をご覧ください。
花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は11月4日(火)予定です。
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