花邑の帯あそび
1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…
 




presented by hanamura


夏至を迎えて、ますます暑くなってきましたね。
ここ東京ではまだまだ梅雨がつづいていますが、
沖縄では、梅雨が明けたようです。

今回は前回にひきつづき、
その沖縄県、宮古島でつくられている
「宮古上布」についてのお話です。

前回は、宮古上布の原料となる芋麻(ちょま)を育て、
糸にするまでのお話しをしました。

糸にした芋麻は、絣の文様に使用する「絣糸(かすりいと)」と、
地色として使用する「地糸(じいと)」に分けます。
このとき、地糸は湯通しと水洗いをして汚れを落とします。
また、絣糸は漂白剤で白くします。
これは、織り上がったときに柄がくっきりと見えるようにするためです。

その後、方眼用紙に描いた図案に基づいて、
絣文様の部分が染まらないように、
木綿の糸で絣糸をくくっていきます。
この緻密な作業は「絣くくり」と呼ばれ、
絣の文様により手作業で行う場合と
機を用いる場合があります。

「絣くくり」をした糸は、藍の染料が入った容器に入れ、
手で揉み込んで染めていき、
ある程度染めたら数時間干します。
この作業は数十回と繰り返されます。

このとき使用する藍の染料は、
沖縄県で採られるキツネノマゴという草を
原料とした「琉球藍」とよばれるものです。
宮古上布ならではの深い藍の色は、
この琉球藍を使い、
繰り返し染めることで出てくるのです。



ここまでの作業を終えて、
ようやく製織の作業になります。
製織とは、糸を経糸(たていと)と緯糸(よこいと)に分けて
機に取り付け、織っていくことです。

宮古上布の場合では、
地糸はもちろん、絣糸も経糸と緯糸に分け、
経と緯の絣柄を合わせながら織っていきます。
そして、織っていくときに絣柄がずれたときには、
経糸を1本ずつ針で調節します。
この作業は「絣合わせ」と呼ばれ、
熟練した織り手でも1日に30センチぐらいしか織ることができない、
たいへん緻密な作業です。

布地が織り上がったら、
お湯で汚れを洗い落とし、陰干しします。
そして陰干しした布の表面にサツマイモの澱粉糊を均等に付け、
木槌で布面を打っていきます。

この仕上げの作業を「砧打ち」とよびます。
砧打ちでは布を傷つけないように細心な注意を払わなくてはいけません。
この砧打ちによって宮古上布ならではのツヤが生まれます。

砧打ちの作業が終わると、
やっと完成です。
宮古上布は、ほんとうにたいへんな手間をかけて、
丹念につくられていますよね。

この宮古上布の発祥については、
沖縄らしい心温かなエピソードがあります。

1583年、琉球の進貢船が台風に遭ったそうです。
このとき、難破した船を宮古島に住む真栄という男性が救い、
その功績が琉球王朝から讃えられました。
そして、それを喜んだ妻の稲石は、
琉球の王に自身で心を込めて織った「綾錆布(あやさびふ)」とよばれる布を献上しました。
この「綾錆布」が宮古上布の原型ということです。

稲石は夫の真栄と並んで宮古島に祠として祭られるようになり、
現在でも11月30日の「稲石祭」には、
宮古上布の作り手さんたちが多く集うようです。

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次回の更新は7月7日(火)予定です。


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天気予報に傘マークがつく日がつづいていますね。
しかし、夏至も過ぎて季節は確実に夏を迎えようとしています。
そろそろ、夏休みに海や山へ行くための
計画を立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
海と言えばやはり国内では沖縄への旅行者が多いようですね。
本州ではみることができないような、
青く透き通った海と白い砂浜、南国の草花が旅行者を迎えてくれます。

しかし、沖縄は戦争の悲しい歴史をもつ場所でもあります。
今日6月23日は沖縄慰霊の日。
沖縄戦終了から64年が経ったようです。

今日は、その沖縄県でつくられている
「宮古上布」についてお話ししましょう。

宮古上布は、夏の高級着物として、
よく知られていますね。
沖縄県・宮古島でつくられている麻織物です。
1978年に国指定重要無形文化財にも指定されました。

宮古上布の滑らかな肌触りや、
伝統文様を織りだした絣柄は、
とても繊細で上品です。
宮古上布の「上布」とは、
庶民が着ることのできた「下布」に対して
上等な麻布のことを指したようです。



しかし、宮古上布も例にもれず、
それを織り上げる作業は、
たいへんな労苦と
長い時間をともないます。

原料となるのは、宮古島で栽培されている
芋麻(ちょま)とよばれる麻です。
芋麻は、沖縄の方言では「ブ-」とよばれていますが、
なにかユーモラスな響きのある名前ですね。
この芋麻は繊維が細くて長く、
引っ張っても切れることがない強いものです。

芋麻の発育は、織リ上がったときの仕上がりにも影響するので、
一時も目が離せません。
そのため、植える場所や肥料などに気を配りながら育てていきます。
やがて、茎の高さが1.5メートル以上になった芋麻は、
茎だけを刈り取ります。
そして、表側を剥いで繊維以外をそぎ落とします。
余分なものが剥ぎ落とされた繊維は
水洗いしたうえで陰干しにします。

次に、糸積みの作業です。
まず、芋麻の繊維を髪の毛ほどに細かく裂きます。
そして裂いた繊維同士を
結ばずに撚り合わせながら繋いで1本の糸にします。
その際に、麻が乾燥してしまうと
撚り合わせられなくなってしまうので、
糸積みをする人は、
自らの唾で繊維に水分を与えていきます。

これは、たいへん根気のいる作業です。
着物1反分の糸を作るには、およそ3ケ月以上かかるそうです。
もちろん高い技術がなくてはならないので
高齢者の経験に裏打ちされた技術が必要とされます。

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次回の更新は6月30日(火)予定です。


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ここ東京でもとうとう梅雨入り宣言が出され、
傘が手放せない季節がやってきました。

そこで今回は、この雨の季節から、
冬にかけて織り上げられる
「科布」についてお話ししましょう。

「科布」は、東北地方でつくられている織布です。
その原料には、東北地方の山間に自生する
しなの木の繊維が使用されています。
風合いがざっくりとしていて、
とても丈夫なこともあり、
むかしは野良着や穀物を入れる袋などの
素材としても用いられていました。

「しな」という言葉は、
アイヌ語で「結ぶ」「縛る」を意味しています。
アイヌの民族衣装である「アッシシ(アツシ)」にも似ていることから、
北方系の民族から東北地方に伝えられたものといわれています。



「科布」を織るための作業は、
6月中旬から7月にかけて
しなの木を伐採することからはじまります。

伐採したしなの木の外皮と中皮を剥ぎとり乾燥させ、
水に浸して2~3日間煮て、樹脂を取り除き柔らかくします。
これを川の水に晒して汚れを落としながら
竹棒、石などで皮をしごき、
さらに1~2日間糖漬けにして、
秋になるまで軒先に吊るします。

秋になったら、吊るしていた皮を細かく裂いて、糸状にします。
そして、雪が降り農作業ができない冬の時期に
何か月もかけて丹念に織っていくのです。

まさに東北の厳しい風土に根ざしているんですね。
そしてたいへんな手間がかかるのです。
このため現在では、作り手も少なくなり、
東北地方でも一部の集落でしか生産されなくなってしまいました。
それでも「科布」は、現在も当時と変わらない工程を経て、
つくられ続けています。

「科布」が持っている自然のままの素朴な色合いや風合いには
深い味わいがあり、そのため愛好されている方も
かなり多くいらっしゃいます。
夏用の帯の素材としても
とても人気がありますね。

花邑でも科布の帯を紹介していますので、
ぜひご覧になってみてください。

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次回の更新は6月23日(火)予定です。


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ここ東京でもいよいよ梅雨入り間近となりました。
紫陽花が所々で咲きはじめ、
この季節のモノトーン気味の景色に
彩りを添えています。

梅雨の時期は湿気があって、
暑くなくても汗が出てしまいますね。
こうした湿気のある季節に、
皆さんは何をお召しになっていらっしゃいますか?
「着物はこの時期暑いから」と
和装を敬遠される方も多くいらっしゃいますね。

そこで今回のお話しは「縮み」についてです。
「縮み」の素材となるのは、絹や麻、木綿などさまざまです。
「縮み」はどの素材であっても表面に凹凸(シボ)が施され、
シャリっとしていているために涼やかな肌触りになります。
また吸収性が良く、速乾性にも優れています。



「縮み」は、ほとんど撚りをかけない経糸(たていと)と、
強い撚りをかけた緯糸(よこいと)を使って織ります。

織りの際には、
緯糸が縮むのを防ぐために、
緯糸に糊をつけ、強く引っ張りながら、
まっすぐになるように固めます。
そのため、織り上がった直後の表面には
シボがみられません。

表面のシボは、
織り上げた生地を水とお湯にくぐらせ、
浸すことによって生まれます。
水とお湯に浸すことにより、
付着した糊がとれて緯糸が縮みます。
また長い時間浸すことで、
生地はさらに大きく縮んで糸の密度が高くなり、
細かなシボができるのです。
こうして「縮み」が完成します。

この「縮み」の技術は絹織物として中国で生まれ、
日本には桃山時代になって伝えらました。
江戸時代になると、絹以外にも麻、木綿を素材とした
「縮み」が日本各地で競ってつくられるようになりました。

湿気の多い日本の気候に、
「縮み」はたいへん適しているのでしょう。
まだお召しになられたことがない方はぜひ一度
お召しになってみてください。
帯のアトリエ花邑では、
現在「縮み」を素材とした名古屋帯をご紹介しています。
ぜひご覧ください。

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次回の更新は6月16日(火)予定です。


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長く降った雨で、草木がよりうっそうと繁ってきました。
先日、明け方近くに窓から外をみると、
霧が薄くかかっていて、見慣れた景色も幻想的に感じられました。
この季節は霧の発生が多く、ここ東京でも朝方には時々みられます。

ところで、霧がかかったような、ぼんやりとした様子のことを
「紗がかかったような」と表現しますよね。
みなさんもご存じのように、
この「紗」は、夏の帯や着物に用いる生地のことを指します。
そこで、今回はこの「紗」についてのお話しをします。

「紗」は、前回の「花邑の帯あそび」でお話しした「」のように、
薄く透き通る生地が特徴的な絹織物です。

「紗」も「絽」と同じく、
捩り織り(もじりおり)」という技法により
織り上げられます。
捩り織りは隣合った経糸(たていと)を鎖のように交互に絡ませて、
その間に緯糸(よこいと)を通していきます。



「絽」の場合は、この捩り織りと平織りとを
交互に組み合わせて織っていきますが、
「紗」では、捩り織りのみで織り上げます。
そのため「紗」は「絽」以上に隙間があり、
そこから白い襦袢や白い帯芯が透けてみえます。
このいわゆる「透け感」ともいわれる
透けている様がとても涼しげなんですね。

また「紗」の糸には強い撚りがかかった「駒糸」を使うので、
生地に張りがあり、シャリ感が生まれます。

「紗」の歴史はとても古く、
漢の時代(紀元前)に中国で誕生し、
唐の時代から宋の時代(平安時代から鎌倉時代)に大流行しました。
その流行が日本にも伝わり、
貴族用の夏衣装や雅楽の装束として用いられたようです。

その涼やかな「紗」の生地は、
現代においても夏の着物や帯に用いられていますが、
その中でも「下地が透ける」という生地の効果が断然あるのは、
「紗袷(しゃあわせ)」でしょう。

この「紗袷」とは、模様の入った軽めの紗を二枚重ねにして、
単衣に仕立てたものです。
2枚の模様は、重なったときにつながりのある柄行きになっていて、
その意匠はとても風流なものです。

「紗」は「透ける」ことこそを楽しむ着物といえるでしょう。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は6月9日(火)予定です。


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