花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

藤布、対馬麻について

2008-04-29 | 藤布、対馬麻

presented by hanamura


「藤布の帯と対馬麻の帯について」

ただいま「花邑」では、「手織りの帯展」を催しています。

「花邑の帯遊び」をご覧のみなさん、
もうお越しいただけたでしょうか?
手織りの布から仕立てた、味わい深い帯を揃えてお待ちしていますので、
「まだ」という方は、ぜひ足をお運びください。

今回の「花邑の帯遊び」は、その企画展で取り扱っている
「手織りの帯」の中から「藤布(ふじふ)」と「対馬麻(つしまあさ)」
についてのおはなしをします。

「藤布(ふじふ)」と「対馬麻(つしまあさ)」は、
2つとも自然の素材を用いて、手作業で織られた布です。

「藤布」の原料には、藤の蔓(つる)の繊維が用いられます。
はじめに、皮のかたい繊維の部分を木槌で叩いてから外側を剥ぎます。 
それから、アラソ(外皮の白い繊維)を陰干しして乾燥させます。
そのアラソに灰をまぶし、灰炊きをして繊維を柔らかくします。
そして、撚りをかけて糸にします。
この糸を手で織ったものが「藤布」となります。



藤布は昔から日本各地の山里で織られていました。
「古事記」にも、藤布にまつわる神話が書かれているようです。

山里で生活を営む人々にとって、藤の蔓を刈ることは、
木の生育を助けるのに必要な仕事でした。
その中で、刈りとった蔓を糸にして織り、
布にするということが考えだされたのでしょう。
また、糸になるための藤の蔓は、
枝の出ていないまっすぐなものが用いられます。

しかし、現代では山里に住む人が少なくなり、山が荒れてしまいました。
そのため、糸に用いる状態のよい藤の蔓を手に入れることは、
とても困難になっているようです。
また、「藤布」をつくるには労力が必要なため、
つくる人も減ってきています。

一方の「対馬麻」は、現在ではまったくつくられていない布です。

「対馬麻」は、長崎県の対馬でつくられていたものです。
その原料には、対馬に自生した大麻の繊維が用いられていました。
大麻の繊維は、茎を精錬して(※1)採りだします。
採りだした繊維を手で紡いで撚りをかけ、糸にします。
この糸を手作業で織ったものが「対馬麻」と呼ばれる布です。



この「対馬麻」は対馬でどのように用いられていたのでしょうか?
対馬にある役所の方に問い合わせてみました。
そのおはなしでは、
古代から祭りなどの「はれ」の行事に、
この対馬麻でつくった着物を身につけ、
神聖なものとして、大切に用いたということでした。

しかし、現在では「対馬麻」はまったく作られていません。
それは、「対馬麻」の原料となっていた大麻そのものが
昭和初期に生産が禁止され、対馬でも大麻の栽培ができなくなったからです。

「対馬麻」や「藤布」のような自然素材の布は、
時代が経つごとに、手に入れるのも
むずかしいものになってしまいました。

むかしはその土地の自然の中からつくられ、
使われていた手織りの布。
その手織りの布は、自然と共存して暮らした人々のあたたかさを
伝えるとても味わい深く、貴重なものなのです。

● 写真の藤布と対馬麻の帯は「帯のアトリエ 花邑hanamura」にて取り扱っております。

(※1)水に漬けて、表皮や木片部を分解することです。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は5月6日(火)予定です。


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