花邑の帯あそび
1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…
 




presented by hanamura ginza


まもなく 5 月。
風に揺れてすいすいと泳ぐ鯉のぼりが
新緑の合い間に見え隠れしています。
初夏の陽射しに照らされた若葉が目に眩しいですね。
すっかり葉桜となった桜をみると、
少し前までは、満開だった桜景色がうそのように感じられます。
また、道端で鮮やかな黄色い花を咲かせていたタンポポも、
白い綿毛へと姿を変えています。

春から初夏にかけたこの季節は、
桜やタンポポ、藤や百合、杜若や紫陽花などの花々が
バトンを渡すように順に咲いていきます。
それらの花々を眺めていると、
一層季節の移ろいが感じられるものです。

花は、遠い昔から季節感をあらわすものとして、
和歌や俳句などに多く登場しますが、
これからの季節といえば、杜若ですね。

杜若を題材にした作品といえば、
「伊勢物語」の八つ橋の場面で詠まれた
「唐衣着つつなれにし妻しあれば
はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」
(着馴れた唐衣のように添い馴れた妻が都にいるからこそ、
はるばるきた旅路に思いを馳せる。)
が有名です。

この和歌は、
か  唐衣
き  着つつなれにし
つ  妻しあれば
ば  はるばる来ぬる
た  旅をしぞ思ふ

というように、「折句(おりく)」という言葉遊びにもなっています。

古代の人々は、杜若と聞くと
「伊勢物語」の八つ橋の場面を連想したといわれるほど、
有名な和歌です。

「伊勢物語」は、平安時代初期に書かかれた歌物語で、
「昔男」とよばれる主人公の生涯を中心に
物語が構成されています。

着物の意匠をはじめ、
調度品や絵巻物などには
伊勢物語の一場面や、
和歌を題材にしたものが多く見られ、
古くから日本文化のなかで
人気のあったことがうかがえます。

主人公の「昔男」のモデルについては
正確には分からないようですが、
古くから「在原業平(ありはらのなりひら)」ではないか
と言われてきました。

在原業平は平安時代初期の貴族で、
平城天皇(へいぜいてんのう)の孫にあたります。
和歌に親しみ、和歌の名人を選んだ「六歌仙」や「三十六歌仙」に
その名前を見ることができます。

百人一首の中にも、
「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは 」
という和歌が選ばれているので、
在原業平を知らなくても、
この和歌を聞いたことがある方は多いでしょう。

「伊勢物語」の主人公と目されるのは、
在原業平が和歌を得意としていたことはもちろん、
色男として有名だったこともあります。
昔の人々は、在原業平を色男の代名詞としても用いていたようです。

さて、この在原業平の名前がついた
「業平菱(なりひらびし)」という菱文様があります。
業平菱は、三重襷(みえだすき)という菱文様のなかに
四つ菱を入れたもので、有職文様※のひとつです。
この菱文様を在原業平が好んで用いたことから付けられた名前のようですが、
「業平」という名前がつくだけでも、雅な印象がします。



上の写真は、大正~昭和初期ごろにつくられた丸帯からお仕立て替えした名古屋帯です。
檜扇と御所車、笛などの平安時代を象徴する器物に四季の草花が配され、
その草花の背景に業平菱文様があらわされています。
このように業平菱は、
平安時代の煌びやかな文化をあらわすもののひとつとして
描かれることが多いようです。


上の写真の「扇に御所車と草花文様 染めに手刺繍 名古屋帯」は花邑 銀座店でご紹介中の商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 5 月 8 日(木)予定です。
帯のアトリエ 花邑-hanamura- 銀座店ホームページへ
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お彼岸が過ぎ、気がつけば桜が満開となりました。

あっという間に散ってしまう桜は、
その儚さも魅力のひとつですが、
もうしばらく楽しみたいという気持ちもあり、
今日の雨で散ってしまわないようにと、願ってしまいます。


桜は日本原産のものも多く、
古代には花といえば桜のことを指していたほど、
古くから愛でられてきました。
桜を見ると心がそわそわしてしまうのは、
先祖から受け継がれてきた遺伝もあるのでしょう。

さて、今日お話しする藤の花も桜と同じように日本原産の植物で、
古来より親しまれ、日本文化とも関わりの深い花のひとつです。

藤は、マメ科に属する植物で、
日本全国に自生しています。
桜が散った後の 4 月中旬ぐらいから咲きはじめ、
淡い紫色の小さな花が房状になり咲く藤の姿からは、
艶やかで、繊細な美しさが感じられます。

とくに、藤の蔓でつくられた藤棚の下で
連なるように咲いた藤の姿は幻想的な美しさがあり、
藤棚が植えられた公園などには、
毎年多くの人々が訪れます。


この藤棚の下で整列して咲く藤のイメージの方が強いのですが、
山野で咲く自然の藤はとても野生的です。
とくに、他の樹木に巻きつきながらぐんぐんと成長する蔓からは、
力強い生命力も感じられます。

藤の蔓はとても頑丈で、
現代でも籠の材料などにも用いられていますが、
古墳時代には、巨大な石棺をそりに載せて、
藤の蔓で編んだ縄で運んだようです。

また、藤の蔓を繊維状にして布が織られ、
奈良時代に編纂された「万葉集」の中では
その布のことを「藤衣(ふじごろも)」とよんでいました。

ちなみに、その藤衣は現代では「藤布(ふじふ)」とよばれ、
貴重な原始布として、着物や帯の素材にも用いられています。

藤は万葉集をはじめ、
古来より和歌や俳句の題材として人気があり、
藤を詠んだ名作も残されています。

また、和の伝統色では淡い紫色の藤の花が由来となった
「藤色」や、
「藤鼠(ふじねず)」や
「紅藤(べにふじ)」、
「藤紫(ふじむらさき)」というように、
「藤」のつく色名が多くあります。

藤は文様としての歴史も古く、
生命力が強いことから縁起が良い文様とされてきました。
垂れ下がった藤の花を円状にあらわした「下がり藤」、
藤の花を上にして円状にあらわした「上がり藤」、
巴の形にあらわされた「藤巴」など、
多くの藤文様が考案され、
江戸時代には 100 種類以上の藤の家紋が考案され、
用いられていたようです。

江戸時代のころには、
当時人気のあった「大津絵」に、
藤の花の精をあらわしたとされる
華やかで艶のある娘の絵図が描かれました。

笠を被り、藤があらわされた衣装を身にまとい、
藤の花を手に持った娘の絵は「藤娘」とよばれて、
のちに歌舞伎や日本舞踊の演目のひとつとなりました。



上の写真は、大正~昭和初期につくられた絹縮緬からお仕立て替えした名古屋帯です。
藤は、艶やかな雰囲気で情感たっぷりに
あらわされることが多いのですが、
こちらの意匠からは、
雫のように連なった花のかたちの面白さが感じられ、
かわいらしくモダンな雰囲気が漂います。

桜が散れば、藤の花。
花の下で宴が楽しめる季節になりました。

「しはらくは 花の上なる 月夜哉(かな)」 松尾芭蕉

上の写真の「藤尽くし文様 型染め 名古屋帯 」は花邑 銀座店でご紹介中の商品です。

●花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 4 月 24 日(木)予定です。
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