ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

それからの海舟 半藤一利

2023-03-24 11:39:34 | 
日本史上、稀に見る仲介者、それが勝海舟だと思う。

はっきり言うと、仲介者は概ね胡散臭い。要は相対する二つの陣営の仲立ちをする役割であり、どちらの陣営からも怪しく思われる損な役割である。また、誰にでも出来る役割ではない。

理想を言えば、清廉潔白で公私ともに裏表がない高潔な人物が望ましい。しかし、理想は理想に過ぎず、多くの場合、無視できぬ武力をもっているか、あるいは巨額の財をなした人物であることが多い。

いずれにせよ対立する両陣営、どちらからも役立つ存在として認識されていなければ仲介者にはなれない。

ところがおかしなことに勝海舟は旗本とはいえ、貧乏侍の家に育ち、30代になりようやく幕府に登用されたに過ぎない。剣術では免許皆伝の腕前ながら実戦の経験はなく、兵法においても軍師とは足り得ぬ。

ただ剣術の修行で培った胆力の持ち主であり、貧乏侍であったが故に市井に詳しく、商売人からやくざ者にまで広い人脈を持つ。それゆえ武士にみられる狭くて頑なな思考とは程遠く、柔軟で広い見識の持ち主であった。

勝海舟を嫌うものは多い。幕府側にありながら政権交代に手を貸した裏切り者である。幕府側にありながら薩摩、長州、土佐と維新側にも人脈を持つ疑わしき人物でもある。

海舟自身も江戸っ子気質の依怙地な性分で、大久保や福沢とは相性が悪かった。それでも江戸城を無血開城に導いた功績は否定しがたい。それが西郷隆盛との個人的友誼に基づくとしても、多くの無辜の民の命を救い、江戸の町を壊滅させなかったことは事実だ。

それが海舟の生涯における頂点だと思われているが、実はその後の半生もまた仲介者として八面六臂の奮闘ぶりであったことは、あまり知られていない。

静岡駿府に居を移した徳川公についていった譜代の武士たちの世話をし、茶畑の開墾事業にも手を貸している。また有能な武士たちを多数、新政府側へ送り込み、新体制の構築と安定に寄与させてもいる。

また維新政府の初期は政府としてまともに機能せず困り果てた大久保や木戸の相談にのり、新政府の提体を構築させることにも奮闘している。日本を諸外国から守るための海軍の創設と育成に勝海舟の経験と知恵は必要不可欠であった。

これは勝海舟に限らないが、旧幕府側の有能な官吏の努力なくして明治政府はまともに機能しえなかった。勝嫌いで知られる大久保でも、その有用さは否定できず、幾度となく勝に無理難題を押し付けている。

もっともその難題を解決するたびに、却って嫉妬と猜疑心を買ってしまったのは、勝の依怙地さによる部分も大きいと思う。なお、彼の功績の一つは、明治新政府の組織の成り立ちなどを書にして残していることが挙げられる。勝の残りの半生は、書を記すことに多大な時間を費やしている。

そのなかでも陸軍の成り立ちを記したものは印象深い。勝によれば、明治の陸軍は諸外国に対するのではなく、国内の反対勢力に対するものとして構築されてきたという。いくつか思い当たる節があるので、いずれ調べてみたいと考えている。

だが勝海舟の真価というか、彼の最後の仕事は、やはり徳川家と明治天皇との和解であった。この困難な会合を実現した後、勝はようやく長年の課題を終えて安心したようで、あっさりと死を迎えている。彼は死の直前まで仲介者であったようだ。

歴史の評価はけっこう残酷で、勝海舟も節操のない怪しいコウモリ扱いされることも多々ある。それもまた一面の事実だと思うが、勝本人は誰になんといわれようと気にせず、己の信じた役割に殉じた信念の人であったと思います。
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公共放送にあらず

2023-03-23 09:44:35 | 社会・政治・一般
いったいどこの国の公共放送なのかと疑いたくなるのが我が国のNHKである。

南コリアの大統領が久々にやってきて岸田首相と会談をしたのだが、その直後にNHKがやらかした。映像をみてもらえば分るように、相撲中継中に速報扱いである。

輸出規制解除とは、南コリアを再びホワイト国へ指定することだ。このホワイト国指定解除は安倍政権の時に行われているが、南コリアのマスコミは所謂徴用工訴訟への報復だと、見当違いの報道をしており、未だに両国間で燻る問題となっている。

何度も書いているが、再び書く。ホワイト国指定解除は徴用工訴訟とは無関係です。南コリアに輸出されたはずの高純度フッ化水素を入れる特殊容器がイランで見つかったことが契機である。

高純度フッ化水素は核兵器製造に使われる戦略物資であり、国連がイランや北コリアへの禁輸措置をしている。高純度フッ化水素は劇薬であり、それを容れる容器も数か国しか作れない。もちろん南コリアには作れない。

そしてイランで発見された特殊容器は、日本製であり本来、南コリアに輸出したものだ。日本政府は当然に南コリアに問い合わせたが、当時のムン政権は無視した。致し方なく日本政府は南コリアをホワイト国待遇から外した。繰り返すが、徴用工訴訟とは全く関係がない。

未だに南コリアはイランで発見された特殊容器の件には無回答である以上、ホワイト国に戻す訳にはいかない。おそらくだが、この問題の背景にあるのは、南コリアのイラン原油の輸入代金の未払い問題である。

アメリカ主導によりイランとの経済取引は封鎖された。もちろん日本も未払の原油輸入代金はあるが、日本はアメリカの銀行に預金した証書をイランに提示しており、経済封鎖が解ければいつでも払える。

しかし、どうも南コリアは、もう払う必要はないと勝手に考えて使ってしまったらしい。この不誠実な態度に激怒したイランは、ホムルズ海峡を通過する南コリアの船舶を拿捕する強硬手段に及んだ。

結局、船は返還されたがどうもその頃からウランの高濃縮に使用する高純度フッ化水素を日本から輸入して、それをイランに横流ししていたらしいのだ。実際、ホワイト国指定を外されて、高純度フッ化水素の納入先、納入量などを報告しなければならなくなると、再びイランは南コリアに圧力をかけている。

現状、どこまでイランとの未払代金があるのか正確には不明だが、推定で7千億円だと云われている。ただでさえ経済的に危機的な南コリアに単独で解決する力はない。考えられるのは、日本の輸出制限を解除してもらうか、通貨スワップを締結してもらいドルを調達できる環境をつくるしかない。

いずれにせよ、イランの核兵器開発が絡む問題であり、大統領と首相が会談したところで解決する訳もない。

で、なんでNHKはウソの速報を流したのだ。

南コリアではウソの情報をマスコミが流して既成事実化を狙うことは良くある。NHKがその片棒担ぐとは、どいうゆうことなのだ。以前から反日自虐的な報道をすることが散見するNHKではあるが、これはヒドイ。

外交音痴で知られる岸田内閣も、さすがに拙いと思ったのかすぐに誤報だと訂正している。いや、正確には今後も話し合いを続けると言っているだけだ。つまり、今後も検討し続けますってことだな。

いい加減、はっきりと断るべきであり、マスコミは南コリアに媚びずに事実を伝えるべきだと思いますね。
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今こそ復讐の時

2023-03-21 16:19:26 | 社会・政治・一般
以前にも書いたが、亡くなった安倍・元首相の官僚不信は相当なものであった。

だからこそ首相官邸機能を強化して、各省庁から集めたやる気のある若手官僚と自民党若手議員たちを使って、霞が関主導ではない政策を推し進めていった。菅・元首相は当時、官房長官として安倍氏を補佐していたので、この二人が政治の中心に居た時は、霞が関は押し黙っていた。

しかし岸田首相になると、これまで我慢を重ねてきた霞が関の官僚たちの復讐が始まった。既に安倍氏は故人なので、安倍氏の配下で辣腕を奮っていた国会議員たちをターゲットにしたようだ。

ただ霞が関のエリート官僚は絶大な権限を持ちながら、権限を行使しての結果責任を問われるのを異常なくらい厭う。だから安倍氏の下で活躍してきた国会議員どもを攻撃するにしても、決して矢面には立たない。

幸いお調子者は野党に数多いる。役所の責任をあやふやにした行政文章を利用して、野党議員を利用して自民党の政治家を攻撃させた。それが現在、国会を騒がせている高市と小西の言い争いだと思う。

ご存じのとおり日本のマスコミは、反自民こそ正義の報道だと信じ込んでいる。霞が関のエリート官僚の手の平で踊る野党議員こそ正義で、自民党は早く下野しろと勇ましい。

自民党を批判するのは大好きだが、霞が関の官僚たちの主導してきた政策を批判する脳みそがないのが日本のマスコミの最大の欠陥だ。安倍・元首相の官邸主導型政治に憤懣やるかたなかった霞が関の復讐に乗せられているだけのアホな野党とマスコミ。

まるで森友加計問題と同じ構図である。そうそう、日本のマスコミが一番苦手なのは、自らの愚行を反省することでした。私も忘れっぽいね。

追記 明日は一日出張なのでお休みします。
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再びPK負け

2023-03-20 10:07:36 | スポーツ
現在、ワールドベースボールクラシックが開催されている。

大谷やダルビッシュが活躍する我らが日本代表チームの活躍に、日本中が湧きたつことは嬉しい限りである。それはともかく実は現在、サッカーの若き日本代表(アンダー20)のチームがウズベキスタン開催のアジアカップ(U20対象)で戦っていた。

結果は残念ながら準決勝で敗退であるが、実はPK負け。ドーハの悲劇で日本をワールドカップ初出場の夢を打ち砕いてくれたイラクに負けている。先に失点し、追いつき延長戦でも失点、しかし追いついての引き分けという熱戦であった。

A代表と共にPK負けというのも、なんとも因縁を感じる。ちなみにベスト4の段階でアンダー20対象の世界大会の出場権は得ているので、最低限のノルマはこなしていることは評価したい。

実のところ私はこの世代を高く評価していない。国際大会での過去の実績が芳しくないばかりでなく、全体的に小粒な選手が多く将来の伸びしろを感じさせな選手が多いからだ。有望な選手は十代後半でだいたいわかるのが通例。

それでもJリーグが出来て以降、育成システムが向上し20前後で伸びてくる選手も出てきているので、一応期待はしていた。そして今回の目玉は松木玖生選手である。180㎝台の大柄なMFでありテクニックもある。高校選手権でも活躍した期待の若手である。

事実上、このチームのエースでもある。ただし一人で局面を打開できるほどの逸材ではない。あくまでチームプレイの中で活きる選手だと思っている。それでも歴代の代表選手たちと比べると、いささか心もとない。

それだけにU20対象の国際大会でどれだけやれるのか、私は興味深く思っていた。3試合しか視てないが、そう悪くはなかった。全体的に小柄な選手が多く、大柄な中東の選手に身体負けはするが、テクニックと俊敏さで対抗していた。

準々決勝の相手は、あのイランを破ってきたイラクである。ドーハの悲劇の原因となった国であり、そのサッカーの実力は侮れない。実際二回も先制を許している。よくぞ追いついたものだと思う。

ただ走り負けすることが多々あったので、おそらく連戦で疲労が蓄積していたのだと思う。ベストメンバーではないだけでなく、全体的にスピードがなかった。ただ巧いというか、要所要所で加速して勝機を作るなどクレバーさを感じさせたのは嬉しい。

それだけにPK負けは惜しい。かつて日本はPK戦に強かった時期がある。特にアジア杯においては、川口能活が鬼神の如くゴールマウスを守り、チームの危機を守り抜いたことは、今も記憶に新しい。

また蹴る方でも遠藤康保や阿部勇樹といったPK名人が居た。コロコロPKの遠藤も凄いが、公式戦でPKを外したことがない阿部も凄い。またフリーキックにも世界的にも通用した中村俊輔がいて、ここぞという時に得点をする救世主であった。

それに比べると今の日本代表には、絶対的な得点源が居ない。弱くなった訳ではない、むしろ平均的なプレーの質は上がっていると思う。ただ個性的な武器がない。退屈だなんて言わないけれど、個人で強い技を持つ選手がいない。それがPK負けが続く大きな原因だと思う。

試合に負けたのならば監督の采配ミス、でもPK負けは個人のミス。何故だかマスコミはこのあたりに甘い。適切な非難と反省なくして向上はあり得ないと思います。

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改めて戦車

2023-03-17 10:26:55 | 社会・政治・一般
ロシアのウクライナ侵攻で改めて分かったことがある。

戦車の敵は戦車ではなく、歩兵であることだ。マスコミの報道だけ見ていると、ドローンによる戦車破壊の映像が盛んに報じられているが、実際の破壊数では携行型対戦車兵器を使った歩兵による攻撃が主力となっている。

ちなみに話題のトルコ製ドローンであるバイラクタル2は、報道されているほどには戦果をあげていない。これは主としてウクライナ側がこの無人攻撃機の運用に習熟していないことが原因だとされている。しかし上空からの攻撃は戦車の弱点であることに変りはない。

一方、ウクライナ兵はTOWやスティンガーといった携行型対戦車ロケット兵器の扱いには馴れており、これが抜群の戦績を残している。もちろんロシア側の戦車だって対応策は設けている。しかし、山林に隠れ潜む歩兵からの攻撃を完全に防ぐのは難しく、ロシア軍は投入した戦車の6割近くを喪失していると推測されている。

そこで改めて日本の防衛について考えてみたい。まずは根幹的な疑問、すなわち日本の国土防衛に戦車って必要か?

冷戦の最盛期に於いて日本は戦車部隊の多くを北海道に駐屯させていた。もちろんソ連の侵攻に対応するためである。その演習を見学に来たイスラエルの軍幹部に「ソ連の戦車が北海道に上陸した段階では、既に手遅れであるのだから、海上で艦船と航空機によりソ連の侵攻を防ぐのが最も有効。日本の戦車部隊は本当に必要なのか?」と問われたことがある。

対応した防衛庁幹部はまともに反論できなかったという。実際のところ、細くて長い日本列島の防衛には戦車は不向きだ。急峻な河川と山岳地帯が多い地形も、戦車を活用するのには不向きである。

まして渡海しての侵攻作戦には、守る側(日本)の10倍以上の戦力が必要だとされる。WW2のノルマンディ上陸作戦において連合国は、ドイツの12倍の兵力を投入したが、それでもギリギリであったと軍事専門家は語るほどだ。

現在、日本に対してそれだけの軍事力を有する国は、アメリカ軍くらいなもので、しかもアメリカ軍は上陸済みで独自の基地まで備えている。巨大な戦力を持っていた旧ソ連でさえ、日本上陸に足り得る兵力は持っていなかった。それは今も変りはない。

唯一、日本への侵攻可能な兵力を持つ可能性があるのはシナだが、上陸用艦艇の数が足りず、制空権を握るための空軍も数ばかりで質が足りないのが実情だ。仮に上陸されても歩兵中心であり、制圧に必要な戦車などを輸送する能力に欠ける。

つまるところ、日本列島の防衛に必要なのは戦車ではない。もし戦車に利用価値があるとしたら、都市部で暴れるテロリスト型の遊撃隊制圧のためであろう。重すぎて移動が遅い重戦車(90式戦車)では不向きであり、10式戦車でも大き過ぎる。

防衛省もそれに気が付いており、装輪型戦闘車両を用意するなどして対応しているが、都市部では使い辛いキャタピラ仕様の戦車も保持したがっている。ただでさえ購入価額が高い戦車は、率直に言って日本の防衛のお荷物ではないかと思う。

国産戦車に拘る姿勢にも一定の価値はあるが、高額すぎるが故に他の防衛装備に悪影響を与えているのも事実だ。おそらく防衛省でも内々に論議があると思われる。これまで執拗に国産に拘っていた歩兵戦車を装輪車に変更したり、フィンランド製の装甲輸送車を次期歩兵戦車に決めたりと今までにない姿勢をみせている。

輸出を禁じている国産兵器はどうしても高額になりがちだ。日本の防衛環境を考えれば、主力戦車は必ずしも必須の兵器ではないのだから、これは輸入でいいと思う。

本気で日本の国土を守りたいのならば、無人兵器の開発や、個人携行可能な軽量な対戦車兵器、対空兵器こそ国産で作るべきだと思います。

逮捕されるのが怖くて帰国できないどこぞのバカ議員なんぞに時間を浪費せず、真面目に国防予算にかかる内容を議論して欲しいものである。
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