ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

その犬の歩むところ ボストン・テラン

2023-03-10 10:23:58 | 
私には唯一、どうしようもない悔恨がある。

それは子供の頃に飼っていた犬のルルを最後まで看取れなかったことだ。両親の離婚が背景にあり、子供の力ではどうしようない事ではあった。また母もルルを気遣い、近所の大工さんの家にルルを譲っていた。

近所だからすぐに遊びにいけたが、祖父母の家に同居することになり、その町を離れてしまった。その後も何度か遊びにいったが、ルルはそのたびに飛び跳ねて喜んでいた。帰るのが辛くて、ルルを抱きしめて「また来るからね」と囁くのが精一杯だった。

その後、私は荒れた子供になり問題児と化した。家の中ではおとなしい子供であったが、学校では喧嘩の絶えない子であった。遂には引っ越さざるを得なくなり、ルルがいる町とは今まで以上に離れることになった。

気が付いたら、ルルのことを忘れている自分がいた。あれほど自分が情けなく、惨めで、みっともないと自覚したことはない。再び犬を飼いたい気持ちに嘘はないが、ルルを思い出すと自信がなくなる。

犬の黒いつぶらな瞳で見つめられると、彼らが無償の信頼を寄せてくれるのが分る。だからこそ、その信頼に応えられなかった自分のみっともなさが悔恨として心に深く刻まれている。

そのせいか犬を飼いたいと切望していながら今日まで果たせずにいる。果たして自分に犬を飼う資格があるのかと悩んでしまうからだ。その心配は幾度かの緊急入院で、ほぼ確信に近くなっている。一人暮らしでは責任をもって犬を飼うことは難しい。

分かっているが、やはり犬が傍らにいる幸せと安心感には憧れざるを得ない。とりわけ表題の書のような本を読んでしまうと、ルルと駆け回った幼き日々を思い出してしまい、ますます想いが募ってしまう。

そのくらい、この本は犬好きのハートを射抜きます。犬好きなら是非とも読んで欲しい逸品ですよ。
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