ヌマンタの書斎

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改めて戦車

2023-03-17 10:26:55 | 社会・政治・一般
ロシアのウクライナ侵攻で改めて分かったことがある。

戦車の敵は戦車ではなく、歩兵であることだ。マスコミの報道だけ見ていると、ドローンによる戦車破壊の映像が盛んに報じられているが、実際の破壊数では携行型対戦車兵器を使った歩兵による攻撃が主力となっている。

ちなみに話題のトルコ製ドローンであるバイラクタル2は、報道されているほどには戦果をあげていない。これは主としてウクライナ側がこの無人攻撃機の運用に習熟していないことが原因だとされている。しかし上空からの攻撃は戦車の弱点であることに変りはない。

一方、ウクライナ兵はTOWやスティンガーといった携行型対戦車ロケット兵器の扱いには馴れており、これが抜群の戦績を残している。もちろんロシア側の戦車だって対応策は設けている。しかし、山林に隠れ潜む歩兵からの攻撃を完全に防ぐのは難しく、ロシア軍は投入した戦車の6割近くを喪失していると推測されている。

そこで改めて日本の防衛について考えてみたい。まずは根幹的な疑問、すなわち日本の国土防衛に戦車って必要か?

冷戦の最盛期に於いて日本は戦車部隊の多くを北海道に駐屯させていた。もちろんソ連の侵攻に対応するためである。その演習を見学に来たイスラエルの軍幹部に「ソ連の戦車が北海道に上陸した段階では、既に手遅れであるのだから、海上で艦船と航空機によりソ連の侵攻を防ぐのが最も有効。日本の戦車部隊は本当に必要なのか?」と問われたことがある。

対応した防衛庁幹部はまともに反論できなかったという。実際のところ、細くて長い日本列島の防衛には戦車は不向きだ。急峻な河川と山岳地帯が多い地形も、戦車を活用するのには不向きである。

まして渡海しての侵攻作戦には、守る側(日本)の10倍以上の戦力が必要だとされる。WW2のノルマンディ上陸作戦において連合国は、ドイツの12倍の兵力を投入したが、それでもギリギリであったと軍事専門家は語るほどだ。

現在、日本に対してそれだけの軍事力を有する国は、アメリカ軍くらいなもので、しかもアメリカ軍は上陸済みで独自の基地まで備えている。巨大な戦力を持っていた旧ソ連でさえ、日本上陸に足り得る兵力は持っていなかった。それは今も変りはない。

唯一、日本への侵攻可能な兵力を持つ可能性があるのはシナだが、上陸用艦艇の数が足りず、制空権を握るための空軍も数ばかりで質が足りないのが実情だ。仮に上陸されても歩兵中心であり、制圧に必要な戦車などを輸送する能力に欠ける。

つまるところ、日本列島の防衛に必要なのは戦車ではない。もし戦車に利用価値があるとしたら、都市部で暴れるテロリスト型の遊撃隊制圧のためであろう。重すぎて移動が遅い重戦車(90式戦車)では不向きであり、10式戦車でも大き過ぎる。

防衛省もそれに気が付いており、装輪型戦闘車両を用意するなどして対応しているが、都市部では使い辛いキャタピラ仕様の戦車も保持したがっている。ただでさえ購入価額が高い戦車は、率直に言って日本の防衛のお荷物ではないかと思う。

国産戦車に拘る姿勢にも一定の価値はあるが、高額すぎるが故に他の防衛装備に悪影響を与えているのも事実だ。おそらく防衛省でも内々に論議があると思われる。これまで執拗に国産に拘っていた歩兵戦車を装輪車に変更したり、フィンランド製の装甲輸送車を次期歩兵戦車に決めたりと今までにない姿勢をみせている。

輸出を禁じている国産兵器はどうしても高額になりがちだ。日本の防衛環境を考えれば、主力戦車は必ずしも必須の兵器ではないのだから、これは輸入でいいと思う。

本気で日本の国土を守りたいのならば、無人兵器の開発や、個人携行可能な軽量な対戦車兵器、対空兵器こそ国産で作るべきだと思います。

逮捕されるのが怖くて帰国できないどこぞのバカ議員なんぞに時間を浪費せず、真面目に国防予算にかかる内容を議論して欲しいものである。
コメント (2)
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