ヌマンタの書斎

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驚きの英国史 コリン・ジョイス

2022-05-19 13:41:07 | 
似てないけど、似ている点があることが否定できない。それが私にとってのイギリスである。

ユーラシア大陸を挟んで極東の日本と極西のイギリス。どちらも辺境の地であり、大陸とは海峡を挟んでいるが故に独立の地位を保ちやすい。同時に大陸との関係が重要であり、決して孤立は出来ない位置でもある。

ただ少数の異民族はいたものの、ほぼ同化に成功した日本と、異民族との連合国家としての性格が強いイギリスの違いはある。特にブリテン島は支配者が幾度か変わっているため、民族としての一体感には欠ける。

実際、日本民族はあってもイギリス民族という概念は存在しない。ただしイギリス人という概念は存在するから厄介だ。イギリスにはウェールズ、スコットランド、アイルランドといった近いが異なる民族があるため、日本よりも面倒だ。

ちなみにイギリスとはイングランドのポルトガル語読みだ。日本人にとっては馴染み深いのイギリスだが、この国の歴史は非常に煩雑だ。もともとはケルト人の棲息地であったと思うが、ゲール人、デーン人など先史(記録がない)時代には、いくつもの支配者が交替しており、あげくにはローマもあり、フランス系のノルマン人の支配もあった。

おかげでイングランド王家ではフランス語が話され、市井の庶民は中世英語を使うといったねじれた時代もある始末。はっきり言って、英語が分かりにく主要な原因は、ブリテン島における言語が複数の外国語が混在したせいでもある。ちなみにアメリカ英語は、それを簡易化させた一方、黒人やラテン系の移民の影響も受けており、文法が複雑怪奇というか、論理的整合性に欠如している。

しかし、その一方で19世紀以降、世界を支配したイギリスだけに理屈に合おうが合うまいが関係なく無視できない存在でもある。

日本にとって、イギリスの在り方は参考になると私は考えている。現在の覇権国であるアメリカは、元を糺せばイギリスの植民地である。かつての支配者であるイギリスから独立しただけでなく、基軸通貨の地位や軍事同盟などの主導権を奪ったりと、かなりひどいことをしている。

アメリカからすれば、かつての意地悪な支配者への意趣返しなのかもしれないが、驚くべきことにイギリスは叛旗を翻すことなく従っている。実際元の宗主国であるアメリカに対するイギリス人の心持は複雑だと想像している。

85年のプラザ合意により経済的主権を奪われ、グローバリズムの名のもとにロンドンの国際金融都市としての価値も大きく減じる羽目に陥っている。そんなイギリスの歴史を通史としてではなく、印象的なものだけを取り上げたのが表題の書だ。

日本暮らしも経験している著者が外国人、とりわけ日本人が遭遇するであろうイギリスの特異な点をピックアップして取り上げている。通史のイギリス史を読むよりも、よほど英国への理解が進むと思う。

時間潰しで買った本でしたが、十分楽しい作品でした。ただ、今後、日本が後追いするであろう姿がイギリスかと思うと、いささか忸怩たる思いがあります。覇権国アメリカの横暴に如何に耐えるか。日英ともに覚悟すべき課題だと考えています。
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