ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

T72の失墜

2022-05-12 11:15:15 | 社会・政治・一般
時代の流れは、時としてかなり残酷だと思う。

1970年代初頭のことだ。突如出現したソ連の新型戦車は西側諸国をパニックに陥れた。低い車高、当時最強とされた125ミリ滑空砲を備えた戦車、それがT72であった。

低い車高は傾斜装甲と相まって被弾による損傷を減らす。NATOの見解では、当時の西側の戦車では命中させて撃破することは難しいとされた。105ミリライフル砲を標準装備していた西側の戦車は、大急ぎで125ミリ砲の研究を始める始末であった。

当然にワルシャワ機構軍には優先的に配備された。もちろんソ連の友好国にも大量に輸出されたことは言うまでもない。その過程で見つかったT72の弱点は、車高が低いが故に運転席が狭く、小柄な兵士でないと操縦できないことぐらいであった。

当時、プラモデル好きであった私はT72戦車の模型を好んだのも当然であった。実際、けっこう格好のよい戦車だと思う。ちなみに配備されたばかりの日本の74式戦車ではT72に対抗できないとされ自衛隊は殊更怖れた。

この恐ろしい戦車に対抗するため新たに開発されたのが、アメリカのM1エイブラムスであり、イギリスのチーフテン、フランスのルクレール、そしてイスラエルのメルカバである。

いずれも車重が60トン近い大型戦車であり、装甲は当時の最新技術である複合装甲やりアクティブ装甲が採用された。ちなみにT72の車重は41トンである。これは雪解けの泥道でも自由に動けるギリギリの重量とされていた。

はたしてT72と西側の最新鋭戦車とでは、どちらが強いのか。その結論が出たのが湾岸戦争であった。イラク軍のT72は、面白い様に撃破された。しかし、疑問符もついた。湾岸戦争はスティルス戦闘機によりイラクの防空網を突破し、通信設備を破壊されたため、大混乱に陥ったことが、イラクの敗因であった。

イラクの戦車隊は敵がどこにいるのかさえ分からず、一方的に撃破された。だからこそ、T72は敗れ去ったとされる。現代戦が電子情報戦だと云われる所以である。しかし戦車単体では、さほど欠点があるとは思われていなかった。

それゆえにT72は、旧ソ連の衛星国などで21世紀に入っても第一線の戦車として運用されていた。アメリカなどの最新鋭戦車には勝てなくとも、国内の内戦やテロ組織への攻撃には十分だと思われていたからだ。

しかしご存じのとおり、ロシアのウクライナ侵攻によりT72戦車は歩兵にも撃破される羽目に陥った。いろいろと原因はあるが、最大の弱点は戦車の上部、天井部分が脆弱なことだ。おまけに砲塔内部に砲弾を保管するだけでなく、車体の床にも砲弾を保管しているため、西側の最新の携行型対戦車ロケット砲が上空から落ちてくるかたちで命中すると、ビックリ箱のように爆発してしまう。

ロシアにとって不幸だったのは、ウクライナ軍はT72の弱点を熟知していたことだろう。1970年代に基本設計がされたT72は、第二次世界大戦の頃の最強戦車T34の延長線上の完成系であった。あまりに古すぎたとしか言いようがない。

ちなみに西側の最新鋭戦車は、トップダウン型の携行ミサイルを想定して、近接防御専用の対抗兵器を備えている。この分野ではイスラエル及びアメリカが抜きん出ていると思う。フランスやイギリスもそれに追随しているはずだ。

そして旧ソ連製の兵器を中心に据えた陸軍を保有する国々は、声には出さないが内心恐慌状態にある。特にシナや北コリアは顔面蒼白だと思う。特に北コリアにとって虎の子の主要戦車がボンクラだと分かった以上、その焦りは相当なものだと思う。

だからこそ、現在北コリアはミサイル発射実験に躍起になっている。核兵器に今まで以上に傾倒することが明白である。我が国としては、当然に対ミサイル防御に力を注ぐ努力が求められると私は思いますよ。まァ米軍との協調が第一ですけどね。
コメント (2)
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