映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

ミケランジェロ・プロジェクト

2015-11-27 | 映画 ま行
2年ほど前、ミュンヘンに住む脱税容疑者のアパートを捜索したところ1500点に及ぶ絵画が発見され、
元々はナチス・ドイツが国内の美術館や個人収集家から略奪した可能性があるものだというニュースに
驚かされました。
本作を見て、このニュースを思い出しググってみると・・・!
ピカソやマチス、シャガールの作品等、1330億円相当の価値がある絵画が、がらくたと一緒に半世紀
以上放置され、脱税容疑者の男は生活費を稼ぐため、定期的に作品を売却していたというのです。
この男の父親は宣伝相ゲッペルス(本作にも登場します)に認められ、ヒトラーの美術館のディーラー
として働き、戦後ドレスデン爆撃で焼失したと話していたとか。
まさに、この映画で描かれている戦争に翻弄された美術品の一部で、モニュメント・メンに発見され
なかった作品群ということになりますわね。
1500点を隠しておけるアパートにも驚きますが、一体全体どれだけの美術品がドイツへ運ばれたのやら?
画家として挫折したヒトラーのコンプレックスのなせる業?
権力の象徴として手に入れたかったのか?
はたまた金銭的価値のため?

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        ミ ケ ラ ン ジ ェ ロ ・ プ ロ ジ ェ ク ト 
             THE MONUMENTS MEN  

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 < ストーリー >
ヒトラーの命を受け、ドイツ軍は侵攻した欧州各国の美術品を略奪。それに強い危機感を抱く
ハーバード大学付属美術館の館長ストークスはルーズベルト大統領を説得し、美術品や
歴史的建造物を保護し、持ち主に返却する部隊モニュメンツ・メンを結成する。美術専門家、建築家、
彫刻家、美術商、歴史家ら米・英・仏のメンバー7名は、ナチスが持ち去った美術品を求め
ヨーロッパ各地を奔走するが・・・。

  
            
日本語タイトルは「ミケランジェロ・プロジェクト」。原題は「モニュメンツ・メン」。
モニュメンツ・メンとは、第二次世界大戦中の1943年から戦後の1951年までにわたり活動した、
連合軍の「記念建造物(モニュメンツ)・美術品(ファイン・アーツ)・公文書(アーカイヴズ)」部隊
所属の兵士たちを指すそうです。
まぁ、「モニュメンツ・メン」じゃ何の事だかわからないし、最後までこだわって探し出すのが
ミケランジェロの聖母子像だからこういう題名になったんでしょうね。
他にも馴染みのある美術品がいろいろ登場します。
  
  真ん中:英国から参加したドナルド。演じるのは「ダウントン・アビー」の伯爵様 ヒュー・ボネヴィル。
  ミケランジェロの聖母子像に特別の思いを抱いているが…。 

作品中、思わず「あっ」っと息をのんだ場面がありました。
レスキューされた作品の中にルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」の絵があったのです。
母の趣味だかなんだか、子供のころ我が家にこの絵のポスターが飾ってあったのです。
モニュメント・メンの活躍がなければ、行方不明か、場合によっては焼却されていたかも。
そうだったなら、うちの家に飾られることもなかったのかな?っと思った次第です。
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映画の展開は、戦争ものではありますが深刻すぎず、彼ら7人の友情や美術品に対する深い思いが
ユーモアも交えつつ描かれ、史実をもとにしたとはいえ楽しめるよう脚色された作品に仕上がっています。

洋の東西を問わず、宗教にもこだわらず、古代の遺跡や中世の街を訪れるのが好きです。
静寂の中、かつての繁栄や人びととの暮らしに思いを馳せしばし佇む。
先日、ISの手によってシリアのパルミュラ遺跡が爆破映像を見て、少なからずショックを受けました。
2011年3月にシリア・ヨルダン旅行に申し込み荷作りをしていたのに…チュニジアに始まった
民主化運動「アラブの春」が徐々に東へ進み、2月末旅行は中止となり行くことはできませんでした。
東日本大震災の直前で、どのみち旅行どころではなくなりましたが、いつか…と思っていたのに。
数千年守り続けられていた遺跡が一瞬で崩れ落ちる映像に、なんてことを…と言葉を失いました。

「戦争の最中、多くの若者が命がけで戦っている時に、絵画の心配か?」や「仲間の命を失っても
価値のある行いだったのか?」というトルーマンの問いかけに「Yes」と答えるストークス。
『絵画や彫刻、建築物には数十年、数百年、数千年前の人びとの歴史が詰まってる。
文化や芸術を守ることは命を紡ぐことなんだ。戦いの最中、文化や芸術を慮ることは理解されないかも
しれないが、いずれ分かる時が来る。失われてしまってからでは遅いのだ。』
っというメッセージは重く深い。
* 映画の中で、ドイツ人は美術品を略奪し平気で焼却すたように描かれていますが、ヒトラーの命令を
  無視し、保護した方たちもいたそうです。

本作はあまり評価されていないようですが、美術品を守るために命を懸けた人たちがいたことを
知れてよかったです。私はこの映画、好きです。

ケイト・ブランシェット演じるフランス人キュレーターとデイモン演じるグレンジャーとのエピソードも
よかったです。
      

戦後何年か経ってミケランジェロの聖母子像を見にくる年老いたストークスを演じているのは
ジョージ・クルーニーの実の父親だとか。あまり似ていないような?
息子のほうが随分と濃いですわ。

そういえば、近々公開のヘレン・ミレン主演「黄金のアデーレ 名画の帰還」もナチスに奪われた
クリムトの絵画返還を求め国を訴えた女性のストーリーだとか。
是非見たいと思っています。



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