映画の話でコーヒーブレイク

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映画ビッグ・アイズと、本「良心をもたない人たち」

2015-01-29 | 映画 は行
実話に基づくティム・バートン監督の作品です。
「ビッグ・アイズ」と呼ばれた大きな目と悲しげな表情の少女の絵。
1960年代この絵を巡ってアメリカでこんな事件が起こったことを知らなかったし、
昨年から映画館に貼られたポスターから本作がこんなストーリーだったは想いもよりませんでした。


世間を騒がせた実在のキーン夫妻の間に起こったゴーストペインター事件を描いたドラマです。 
                       

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                 ビ ッ グ ・ ア イ ズ

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 < ストーリー >
子連れのマーガレットは家を飛び出しサンフランシスコへ。街で似顔絵を描き、大きな目の子どもの絵を
売って暮らしを立てていた。ある日ウォルター・キーンという風景画家と出会い、再婚する。
たまたま売れたマーガレットの絵を、自分が描いた紹介したウォルター。「ビッグ・アイズ」シリーズを
有名人に売り込み、瞬く間に人気を博しウォルターも美術界の寵児として脚光を浴びる事になる。
不信感を抱きながらもウォルターに言いくるめられゴーストとして描き続けるマーガレット。
尊大で傲慢なウォルターの態度はエスカレートし、娘と自分を守るため、マーガレットは真実を公表するが…。

    
マーガレットを巧みに繰り、口先三寸で世間を欺き時に攻撃的になるウォルターの態度が、
最近読み終わったばかりのマーサ・スタウト著「良心をもたない人たち」という本に書かれている人たちに
酷似していることに驚きました。
マーサ・スタウト氏は臨床心理学者で、長年の臨床経験から「良心をもたない人たち」から被害を被る人たちのセラピーを行ってきた方です。
本の原題は「The sociopath next door the ruthless versus the rest of us」。
「隣に住む社会病質者 良心のない人と闘うには」といった意味です。
背表紙の解説に、
  平然と嘘をつき、涙で同情を誘い、都合が悪くなると逆ギレをするー本来人間に備わるはずの
  良心をもたないがゆえに、他者への思いやりが絶対的に欠落し、手段を選ばずに自分の欲望を
  満たそうとする人たちがいる。

これって…ウォルターそのものじゃぁないですか!?
こういう人たちは相手に自分が悪いのではないか?思いやりがないのでは?と思わせるのに巧みなのです。
     
       マーガレットを巧みに操り、声をあげさせないウォルター。

昨年、日本を騒がせたS氏や大泣き会見のN氏など、世の中にはどうしてこんな嘘をつくのか?
騙しおおせると思っているのか?と不思議に思われるような行動をするする人、虚言癖のある人、
他人を傷つけ平然としている人などに出くわすことがあります。
この本ではそういった人たちを『良心をもたない人たち』とよんでいます。
そして「アメリカ人の25人に一人、4%とされる『良心をもたない』人たちの実態を明かし、
そういった人たちの被害者にならないための見分け方と対処法を教える」という内容でした。
本では「サイコパス」と訳されていますが、特異な猟奇的な犯罪を犯す人たちを指しているのではなく、
ごく普通に私たちの側にいて、多くの人がそれと知らず迷惑を被っているのだというのです。
ウォルターは犯罪者として逮捕されることもなく終生自分が描いたと主張していたようです。
本によると、幸いにもアジアの国々、特に日本と中国ではこういう人の割合は非常に低く、
台湾の調査では0.03~0.14%。西洋社会の平均4%と比べ極めて低いそうです。
個人主義の西洋に対し、元々そういう素養があったとしても社会の中に他者に対する義務を個人に
認識させる機能(絆のようなもの)が働いているから押さえられるのではないかと推察しています。
いくつかの症例を示し「良心をもたない人たち」を分析し、人間を考察する非常に興味深い本でした。
こういう人に出くわしたら、速やかに離れるのが最善の方法だという事でした。
この本の中に、症例としてウォルター・キーンを入れて欲しかったなぁ。

バートン監督はどうしてこの映画を作ったのか?
監督自身がマーガレットの描く「ビッグ・アイズ」のファンだったこと、一連の事件によってこの絵の評価が
低いことから、世間にことの真相を明らかにしたかったということのようです。

詐欺師ウォルターに翻弄されたポップアート界ではありましたが、ポスターやカードにして廉価に販売
するという彼のアートビジネスが斬新で、今では広く行われているという点だけは評価できるといえるでしょうね。

主演のふたり、特にウォルターを演じたクリストフ・ウォルツは「良心をもたない人」そのもので
アカデミー助演男優賞2度受賞の実力は流石です
マーガレットを演じたエイミー・アダムスは本作でゴールデングローブ最優秀主演女優賞獲得です。

 
        
マーサ・スタウト著「良心をもたない人たち」   現在のマーガレット・キーンさん87歳
                                  お元気そうでよかったです。

                                   

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 ***** 見た 映画 *****

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 1月26日 「おじいちゃんの里帰り」DVD ドイツ・トルコ映画

 1月28日 「ジャッジ 裁かれる判事」@横浜ブルク13

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