映画の話でコーヒーブレイク

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ちいさな哲学者たち

2011-09-30 | ドキュメンタリー
東京で公開していた本作、やっと横浜で公開です。
フランスの公立幼稚園で3歳から5歳の園児を対象に2年に亘って行われた「哲学」授業の
取り組みを見つめたドキュメンタリーです。

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           ち い さ な 哲 学 者 た ち

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ちっちゃな子供たちが「フィロソフィー」って言うのが可愛らしくって可愛らしくって
私たちがイメージする難解な「哲学」ではなく、身近で普遍的な問い「愛ってなに?」
「友だちとは?」「自由とはどういうこと?」「命とは?」「死ぬとは?」「豊かさとは?」
「肌の色が違うのは?」「大人と子供はどうちがうの?」など、
易しいことから、大人でも答えにくいテーマまで、平易な言葉で「議論」します。

でもそこはそれ、やっぱりおフラ~ンス。
子供たちはなかなかのおマセさん。
「誰と誰が付き合っている」だの、「もう付き合ってないから」だのの園内恋愛話や、
「好き同士だからチューする」とか「お母さんとのチューとは違うよ」な~んて
照れながら、大真面目で言っちゃいます。


冒頭「子守するだけの保母に、なんで大学院の修士号が必要なんだ?」という会話が聞こえる。
この映画を最後まで見れば、ちいさな無垢な子供と接する幼稚園の保母さんこそ、
多岐に渡る専門的な知識豊富な方になってもらいたいという思いを深くしました。


哲学のアトリエで園児たちを導くのはパスカリーヌ先生。
教室に集まった子供たちは車座に座り、
ロウソクに灯を点けて、さぁ「フィロソフィ」の始まり始まり~。

まず、「頭の中で何をするの?」の質問に「考える」という答え。
「考えたら次はどうする?」の質問に、口から出す仕草。
「そう、言葉をだして、話すんだよね」と先生が促がす。
急かさず、時間をかけて、子供たちの口から言葉が出てくるように声をかけるのって難しい。

当初は初めての試みに戸惑い無反応だった園児たち。
卒園の頃になると、「小学校でもフィロソフィしたいな~」という言葉が口々に。

園児たちを見ていると、フランスの社会事情が垣間見れます。
子供たちの人種は様々。白人、アフリカ系やアジア系。
アルジェリアの親戚やセネガルの別荘の話。
「フランスでは無理だけれど、セネガルに行ったら一人で外出しても大丈夫」なんて話や、
知り合いのおじさんが警察に捕まってアフリカに送還される話。
「パパとママは結婚していないから・・・」というのは「ユニオン・リーブル」というヨーロッパ
で社会的に認められた非婚カップルの形態が多いことを反映しているのでしょう。

多くの問題を抱え、荒れた中学の国語(つまりフランス語)クラスをドキュメンタリータッチで
描いた映画「パリ20区、僕たちのクラス」と多民族の生徒が集まるというクラス構成は
よく似ています。
この幼稚園がどういう地域にあるのかよくわからないので安易に比較することはできませんが
「三つ子の魂百まで」、自分で考え自分の意見を伝えるという訓練をこの時期に身につけた子供たちの
10年後、20年後は楽しみです。

意見の対立で手を出した男の子に、
「人と意見が違う時は叩いていいの?まず話して気持ちを伝えよう」という先生の言葉に頷く子供。
自分で考え言葉にして伝え、他の人の異なる意見に耳を傾け、また考える。
先生も子供たちも試行錯誤しながら、親をも巻き込み家庭でも話し合う。

心豊かな子供を育てるにはこういう教育が必要なんだろうなぁ。


翻って、
何でも早く、簡単に、便利にと効率ばかりを追求し、キレやすくなった現代社会の状況を思うと、
「答えのない問題」に時間をかけ、考え、話し合い、意見が違っても「それはそれ」と仲良くできる
という心の余裕が、ちっちゃい子どもたちのみならず、大人にも必要なんじゃあないかなぁ
と感じた次第でございます。




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