のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

ジーザスさんの誕生日

2010-12-25 | 
思いがけずクリスマスカードをいただきました。
何の甲斐性もないのろごときに、勿体ないことでございます。

2000年も前に生まれた人の誕生日を今もって、しかも世界中でお祝いするのは、生まれたその人が偉かったからなのか、それともプロモーターたちが優秀だったからなのか、どうも今となっては判然といたしませんが、多分その両方なのでございましょう。

さて昨日、近くの図書館でちくま哲学の森シリーズの『悪の哲学』をぱらぱら読んでおりましたら、たまたまその中の一編『ベルガモの黒死病』にイエッさんについて書かれた一文がございました。
黒死病に襲われて風紀の乱れた街に巡礼者の一団がやって来て、街の人々に向かって曰く、
「お前さんたちはイエスが人類の罪をあがなって死んでくれたと思っとるんだろうが、実際はそうじゃなかったのさ!人々のひどい態度に憤慨したイエスは「お前が神の子なら、そこから降りてみな」と言われた時に、本当に十字架から降りてどこかへ行っちゃったのさ!だから人間はみーんな罪深いままで、誰も罪の肩代わりなんかしてくれないのさ!ははん!」

さてもクリスマス・イヴに読むには結構な内容だなあ、のろよ。
贖罪や復活といったことを信じておいでのかたは大いに眉をひそめられる所ではございましょうが、ワタクシはこっちのお話の方が好きですよ。だってイエッさんは随分いい人だったみたいじゃございませんか。それがはりつけにされて、槍で突かれて、「わが神、わが神、どうしてお見捨てになったのですか」なんて言い残して苦しみながら死んでいったなんて、あまりにもやるせないじゃございませんか。それより、あんまり酷い目に遭わされた神の子は「あ~、やめたやめた。こんなのもうやってらんねー」とか何とか言いながらサッサと十字架を降りて、ぽかんとしてる人々を尻目にどこかへ行っちゃいました、って話の方が痛快でよろしい。リチャード・バックの小説『イリュージョン---退屈している救世主の冒険』の救世主ドンみたいにね。

ええと、私は自分が好まない道は歩くまいと思うのですよ。私が学んだのはまさにこのことなのです。だから、君たちも、人に頼ったりしないで自分の好きなように生きなさい、そのためにも、私はどこかへ行ってしまおうと決めたんです。
『イリュージョン』1981 集英社文庫 p.21

まあそんなわけで
皆様メリークリスマスなわけでございますよ。

佐野 元春/Christmas Time In Blue



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